表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/37

9、不動灯の女子校無双(物理)




 どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして。


「おうおうおうおう、不動じゃねぇの」

「お? 柏木さんに告白したって馬鹿か。まだ柏木さんのまわりウロチョロしてるらしいなぁ」

「身の程知らずにも程があるぜぇ」


 泥水啜って、すべてを投げうって、悪魔と契約して手に入れた最終兵器は、俺の手の中でクシャクシャに潰れている。


「見ろよ、こいつ泣いてやがる」

「柏木さんに振られたのがよほどショックだったんだろうなぁ」

「お? こいつなんか持ってんぞ。なんだその箱――」


 うるさいな、誰だ叫んでるのは。耳が痛くなる。

 こいつか? いや……白目向いて倒れてる。

 じゃあ……あいつか?


「ひゃあああぁぁぁ……ご、ごめんなさいごめんなさい助けてくださいごめんなさい」


 蚊の鳴くような声を上げながら額を地面に擦り付けてる。鬱陶しいには鬱陶しいがうるさくはない。

 じゃあ、あい……あれ、三人いたはずなのに一人いなくなってやがるな。


 おいおい、じゃあ誰だよ。


 ――あ、俺か。


「ごめんなさ、ご、ごめんなさいごめんなさい……あああッ!?」


 あああ鬱陶しい鬱陶しい。

 っていうかお前なんでこんな服着てるんだよ、男だろ。


「た、たすけ……ひいい」


 襟をつかみ、ぶん投げてやる。宙を舞うセーラー服の男。

 長い髪が風に靡き、男の顔を隠す。


 あっ……こうやって見ると柏木沙羅に似てる……かも……


 だが地面にたたきつけられたその生徒の顔は、紛れもなく男のそれであった。


「紛らわしい格好するなあああぁぁぁぁぁッ!」

「ひいいいッ、なんだよ一体!? なんなんだよぉ!?」


 喚くそいつに飛び乗り、俺は拳を握りしめる。掌の中の箱がますます小さく潰れる。

 だがその拳を振り下ろすことはかなわなかった。

 細く長い指が、俺の手首を掴んだからだ。


「その辺にしなさい。この学校を殺人現場にする気なの?」

「あ、ああ……かい、ちょう……」


 その顔を見るなり、全身の力が抜けていくのを感じる。

 人形のような顔をした、生気の感じられない女。

 彼女は俺の拳をゆっくりと開かせ、クシャクシャになった青い箱だったものを見るなり目を細める。


「ふうん、ブランドアクセサリーも受け取らなかったのね。あの子の好きそうなデザインを選んだつもりだったのだけど……ふふ、興味深いわ。それにしても――」


 彼女は地面に這いつくばる俺を見下ろし、口元を歪めた。


「生徒会があれだけバックアップしてあげたのに、また振られちゃったのね?」

「う、ううう……」

「さ、バックアップの対価を払ってもらうわよ。うふふ、ごめんなさいね。成功したか否かは関係ないの」


 ああ、始まる。始まるんだ。

 悪魔の取り立てが。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ