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MEGA LEGEND  作者: 伊建天
1、運命の始動
2/18

1-2

今回は説明会です。

後書きに簡易版の説明を乗っけるので、本文読むのがメンドウ!って方は読み飛ばしてそちらを参照してください。

ただし、あくまで簡易版なので細かい部分は本文を読まないとわからなくなる部分が出てくると思いますので、ご了承ください。

 新月学園は日本で計10か所ある、人間と妖怪の間で起こる犯罪を取り締まる者たち、『気魄師(ソーラー)』を育成する「気魄師(ソーラー)養成学校」の1つだ。


 妖怪という存在の発見により急激に発達した分野、「オカルト」。

 人間の好奇心というのは尽きないもので、新たに発見された妖怪に対してもその矛先は向けられた。

 もっとも、意思疎通のできる者たちなので非人道的な実験は憚られたが。

 その結果、妖怪という存在の発生には、人間の持つ「(たましい)」が深く関わっているらしいということが分かった(「らしい」というのは、世界中の名だたる学者たちが研究しているにもかかわらず、いまだ「(たましい)」というものを観測することができておらず、仮説の域を出ていないからである)。


 人は生活するうえで何かしら“物”を扱う。そうやって何かに触れると魂の残りカスがその“物”に付着する。人1人が1回で物を使用する際に付着する魂の残りカスの量はごく微小なものだが、それが長い年月をかけて様々な人間の手に触れられることで溜まっていった魂の残りカスはやがてその“物”に意思を与える。

 いや、何も“物”に限った話ではない。「言霊(ことだま)」という言葉があるが、これは人間の発した言葉に魂の残りカスが付着したものだ。

 こうして、人間の魂の残りカスが長い年月をかけて何かしらの「核」を中心に蓄積し、やがて意思及び実体を持つようになったのが“妖怪”である。

 長い年月を過ごした妖怪は莫大な量の魂を保有しており、古来の伝承に伝わるような人知を超えた強大な力を扱うことができる。

 このことから、「(たましい)」というのはある種のエネルギー生成機関なのではないか、と考えられるようになった。マンガなどでよく、体力が底をついた主人公が強い感情によって限界を突破する、という場面がある。このように強い感情がトリガーとなって「魂」がエネルギーを生み出すのだ。

 “魂”という物をいまだ視認できていない以上、この考え方は確定とは言えないが、それでもほぼ確実だと信じられている。

 というのも、妖怪の出現の少し後、オカルト分野の研究がある程度進んだ最中、“魂”分野における実験で被験者の中で魔法あるいは超能力としか考えられないような力を扱う者たちが現れたのだ。

 体から火を起こす者、水の形を自在に操る者……、彼ら全員に共通することは、みな全員が自身の精神状態によって能力の程度が左右されるという点だった。

 すなわち、過去に魔法などと思われた物は、実際は“魂”の生み出すエネルギーを源としている現象なのではないか、そう考えられるようになったのである。


 そして妖怪の存在が確定してからはや数年後、オカルト分野研究にて転換期を迎える。

 ある1人の若手学者が驚愕の説を発表したのだ。


「人間1人が持つ魂は1つではない。人間は基本的に魂を2つ所有している」


 発表当初、その発表者がまだ若手で特に実績もなく名の知られていない人物だったため見向きもされなかったその説だが、今では妖怪が発見されてから謎とされてきた様々な事象を矛盾なく説明できることから絶大な支持を集めるようになっている。

 それに伴い、現在では前時代的なイメージを持った(たましい)を「コン」、そして新たに定められた第二の魂を「ハク」と呼ぶようになっている。


 そしてこの新たな(たましい)とされる「ハク」、肉体に影響を与える性質があるらしく、うまく扱うことで身体能力が飛躍的に向上し、さらに陰陽の“陰”の性質を持つため同種の力を扱う妖怪に対しても強い影響力があることが分かった。


 しかしこの「ハク」、“扱う”という点でかなりの曲者であった。「ハク」そのものは誰もが持っているのだが、何故か使いこなすことのできる人間が限られているのだ。

 どうも「ハク」は1段階上の“何か”に昇華させないと十分に力を発揮できないらしい。「ハク」の1段階上の“何か”、それはヒト以外の何かしらの動物の型を取るようになる。

 人々はこれを「気魄(きはく)」と名付けた。

 そしてこの「気魄」こそが先ほどの魔法のような現象を起こす源なのだ。そしてその「気魄」を扱う者たちを「気魄師(きはくし)」、もしくは「ソーラー(souler)」と呼ぶのだ(“souler”は魂(soul)を操る者(+er)を意味する造語。また、発音上同音の太陽光(solar)ともかけており、「暗闇から辺りを明るく照らす者」という意味も含まれている)。


 気魄には先ほど述べた型を含め、3つの要素から成り立っている。それが『型』『属性』『召喚形態』だ。


 『型』は先ほど述べた通り、ヒト以外のどの動物の姿をとるかを示す。型の中でも動物の種類によって分別がなされ、現在、『通常種』『絶滅種』『聖獣種』『神獣種』の4つの区分がある。

 『通常種』は現存する、“妖怪ではない”動物を指す(そもそも気魄の型は妖怪の姿をとらない)。イヌやネコといった身近な動物からライオンやゾウなどの、およそ動物と言って想像がつく種はここに分類される。気魄師の中でも最も数が多い。

 『絶滅種』は文字通りすでに絶滅した種のこと。二ホンオオカミといったものから恐竜などまで含まれる。“今は存在していないが、かつて実在していた動物”という認識で大丈夫だ。すでに絶滅してしまった種のためか、これを型に持つ気魄師は『通常種』に比べ、ぐっと少なくなる。

 『聖獣種』は少し分類が難しい。一言で表すと「実在しない動物を型としている」ということだ。代表例はペガサス、ユニコーンなどだ。この種は()()()()()()()()()()()種を型にとっており、妖怪と何が違うかを熱心に議論されている。妖怪とは全くの別種であるという説が今のところ有力だが、まだ発見されていない種の妖怪だという意見も根強く唱えられている。(少なくとも今のところは)現存していない種のため、絶滅種よりもさらに輪をかけてこの型を持つ気魄師は少ない。

 『神獣種』は『聖獣種』よりもさらに希少な型で、何と同じ時代に1人しかいないとされている。聖獣の中でも神と呼ばれるまでに至り、神格を得た個体だけが成れると言われる神獣、それを型として持つ気魄師はその神獣から選ばれたと言われる。実際神獣というのも実存していない種族なので、これらはすべて憶測にすぎない。しかしそれらに信憑性を感じてしまうほど、『神獣種』は希少なのだ。例としては鳳凰、麒麟などがある。

 そしてこれらは、希少性と強さに相関があると言われている。


 『属性』は、その気魄から放たれる技がどの系統に分類されるかを表している。

 例えば、火属性なら火を、水属性なら水を扱う技を使用できる、といった具合だ。

 その数はあまりに多く、現状ではすべてを把握しきれていないので、ここでは例として最初に発見された8つの属性、通称「元祖八大属性」を例に挙げる。

「元祖八大属性」に属する属性は、火・水・木・金・土・風・雷・氷の8つ。最初はこれらを「基本属性」と呼び、それ以外の属性を「特殊属性」と呼んでいたが、時が進み「特殊属性」持ちの数が増え、「特殊属性」が特殊ではなくなっていったため名称を変更した経緯がある。

 また、複数の属性を所有する気魄師もおり、その場合、複数の属性を組み合わせることでさらに強力な技を使えたりもする。


 『召喚形態』はどのような形で気魄を使用するかを示すもので『召喚一体型』『完全召喚型』『武装召喚型』の3つに分かれている。

 『召喚一体型』は最も数の多い形態で、なおかつ最も謎の深い形態だ。この形態を簡単に言い表すと「目覚めさせた気魄を自身と一体化させる」というもの。気魄の使用時に、せいぜいオーラのようなモヤに包まれるくらいしか外見上に大きな変化がなく、一見すると地味なものである。が、自身の肉体と気魄が一体化しているので変化の乏しい外見とは裏腹に身体能力が著しく向上する。また、気魄の一部を実体のある武器として完全に召喚する者もいる。さらにこの形態から別の形態に変化する者もおり、ある意味最も謎や可能性を秘めた形態と言われている。

 『完全召喚型』は一転、自身と気魄を完全に分離させ、気魄を一体の獣として完全に召喚するものである。召喚された気魄は実際の獣と同等の大きさとなり、使用者と気魄、二体による実質一人二役の動きができるようになる。一体化こそしていないものの気魄は発動しされているため肉体の強化はされており、技の使用も当然可能。的を一つに絞らせない動きをデフォルトでできるため戦略面では非常に面白い存在となる。しかし肉体面での強化は3つの属性の中では最も低く、あくまで攪乱を交えることで真価を発揮するタイプと言える。

 『武装召喚型』は気魄を全身に武装して召喚する形態。気魄を武具として完全に実体化させ全身にまとうタイプで、気魄との一体感や気魄の実体化の練度がもっとも高く、真っ向勝負では3つの召喚形態では最も強いと言われている。


 これらの気魄の扱い方は大抵、幼少の頃に誰から教えられるまでもなく自然と習得する。自身の気魄の型、属性、召喚形態の3つの要素すべてを独力で発揮することで、気魄師としての才を認められるのだ。

 そしてその気魄を扱う才を見せたものは気魄師養成学校に通うことが定められている。


 気魄師の主な活動は人間と妖怪、双方が絡んだ場合における治安維持である(人間だけの場合は従来通り警察が、妖怪だけの問題の場合は妖怪世界内で解決してもらっている。その方が双方での衝突が少ないのだ)。

 よって人間よりも強い力を持つ妖怪を人間が対処する場合、気魄師が担当する。気魄はそれだけ強力な威力を有しているのだ。その気魄の正しい使い方や気魄師としての心構え及び精神面の教育、そして気魄を用いた戦闘の訓練、これらを行うのが気魄師養成学校なのである。


 その特殊な教育方法ゆえ、気魄師養成学校の数はあまり多くなく、前述のとおり全国に10校しかない。その分小・中・高(場所によっては幼稚園から大学まで)が一貫になっており1学校における全校生徒の数は通常の学校に比べはるかに多く、遠くから来た生徒を受け入れるために寮も完備されている。

 その中でも「新月学園」は全寮制を採用しており、生徒の自立性を促すという目的のため高等部に上がれば学校側から支給されたお金で自身の生活をやりくりしなければならない。

 そして学友と寮で共同生活するため「新月学園」では生徒同士の一緒に過ごす時間が長く、生徒間の結びつきが他の気魄師養成学校と比べ非常に強く、固い絆で結ばれている。

 とは言え、その結びつきが時に悪い方向へ向くときもある。例えばそこに“落ちこぼれ”がいた場合、それを攻める結束は非常に強固なものになってしまうのだ――。



「さすが瀬東だぜ。1秒と持たなかったな」


 先ほどの模擬戦の実習の後、侮蔑のこもったセリフがある男子生徒の集団の中から発せられる。その目線の先には、先ほど床に伏した瀬東龍登が歩いていた。


「まったくだね。だいたい気魄の型すら定まってないんだよね? 才能ないんじゃないの?」

「とっとと学校辞めればいいのにな、あの最弱。ギャハハ!」


 友人の発言に他の男子生徒たちも騒ぎ出す。


 どこの世界においても自分より実力の劣るものを貶したくなるような人間はいるもので、それは治安維持を主として活動する気魄師、その卵である本来なら正義感の強いはずの子供たちが集まるこの気魄師養成学校でも例外ではなかった。

 気魄師を育成する学校であるため、ここでは気魄による強さがその者の立場に直結する。気魄の力が弱いと肩身の狭い思いをするのだ。

 そして彼らの述べた通り、瀬東龍登という少年はこの学園における最底辺者というのも事実である。

 通常、学園の生徒として在籍している時点で生徒たちは自身の気魄がどういった動物の型を取るのかを分かっている。

 しかしこの龍登という少年は気魄を扱っていることは間違いないのだが、それがまるで動物の姿をとっていない―すなわち、型をとっていないのだ。

 気魄が型を取っていない、それはつまりそれだけ気魄の練度が低い。それがこの学園の生徒の、彼に対する評価である。

 気魄師としての能力の高さが生徒内での評価になりやすいこの学園において、これは致命的であった。


 しかし直前に述べた通りこの学園は子供たちの正義の心を育成する教育機関。人を馬鹿にする人間がいれば、当然それを窘める人もいるわけで――、


「コラそこ、何くだらないこと言ってるの」

「げ! 美桜(みさくら)会長……」


 この場合、彼女――美桜姫花(みさくらひめか)がその立場に当たる。

 新月学園高等部の生徒会長を務める彼女はその役職もあって、学園内で知らぬ者はいない。

 腰まで届くほど伸ばした長い黒髪、美しく整った顔立ち、年不相応に発達した胸などその姿は学園内の男子生徒を魅了してやまない。

 さらに学年でもほぼトップ5内に入るほどの優秀な成績、与えられた義務をしっかりとこなす責任感の強さ、そして何より希少な型、聖獣種“ペガサス”を持つ気魄師としての優秀さ、これらの要因により彼女は男子のみならず女子生徒からも高い支持を得ている。

 そんな彼女だが、立場はもちろんのこと元より持つ正義感から、このような陰口をたたく場面に遭遇すれば、当然注意に回る。


「人のことバカにする暇があるんだったらその分自分を高める努力をしたらどう? そういうことを言う人っていうのは恥ずかしい人間よ」

「「「はぁ~い、すいませ~~ん」」」


 件の男子生徒たちも絶大な人気を誇る―ついでに言うと、自分たちも憧れている―美人生徒会長に小言を貰ってしまっては引き下がるしかない。

 彼らが素直に引いたことに満足した姫花は、そのまま龍登に声をかけに行く。


「お疲れさま。この後お昼休みだからいつもの場所で一緒にお弁当食べよ」

「あぁ、いつも悪いな」


 いつものように龍登を昼食に誘う姫花。

 その様子を先ほどの男子生徒たちが、先ほどとは違うどす黒い嫉妬の視線で見つめていた。


「んだよ瀬東のヤツ。いつもいつも美桜に良くしてもらいやがって」

「お前なんか美桜さんを視界に入れることすら大罪なんだよ」


 実は龍登が他生徒から嫌われる理由がここにもある。

 高等部きっての美少女である美桜姫花会長だが何故か最底辺能力者の龍登をやたら気にかけるのだ。当然多くの男子生徒は―いや、女子生徒ですらこう思う。「何であんな奴なんかが美桜さんと」。

 とは言え、実は龍登は気魄師としての実習を除けば一般的な成績はさすがに姫花にこそ劣るものの、十分すぎるほどに上位。苦手としている気魄の実習授業だって真面目にこなしており、生徒会長という立場もある彼女からしてみれば先ほどの男子たちと比べればどちらに優しく接するかは明らかなのだが。

 まあそうは言っても頭では理解しようとも心が理解することを拒む、ということがあるのもまた事実。気魄の扱いという点を除けば優等生で、教師からの評判のいい龍登は、その点から退学を免れているのだと、他の生徒たちから推理されており、それが龍登本人の意思に関係なく「気魄師の才能がないくせに学業面で学園に媚び売って居座りやがって」と煽ってしまう結果になってしまっているのである。



  *  *  *



「ふーん、そうかい。やはり()()()のことはほとんどの学生が良く思っていない、と」

「はい。学園長、やはりあの指示は問題がありませんか? 今の状態を放っておくのはこちらの立場的にも正直どうかと思います」

「そう言ってくれないでおくれ。これはアイツの身を守るための措置でもあるんだ。そのことはあんたも承知だろ? アイツ本人からの了承も得ている」

「えぇ、それは承知しております。ですが……」

「かかか、やっぱり愛する男が悪く言われるのは不服かい。アンタ個人の感情を持ち込まれるのは困るねぇ」

「学園長! もう、からかわないでください。顔がニヤけているの、全然隠せてないですよ」

「かかか、これも年かねぇ」

「……まぁ、否定はしませんが」

「ん? 何か言ったかい?」

「いえ! なんでも!!」

「ん、そうかい。……しかし否定しないんだねぇ(ニヤニヤ)」

「~~~!!! しっかり聞こえてるじゃないですかっ!」

簡易説明です


(たましい):エネルギーを生み出す機関。『(コン)』『(ハク)』の2つがある


(ハク)』→(パワーアップ!)→『気魄(きはく)


気魄の三要素:『型』『属性』『召喚形態』


型:『通常種』『絶滅種』『聖獣種』『神獣種』の4つがある

  通>絶>聖>神の順で多く、数が少ない型ほど強力


属性:その気魄がどういう系統の技を扱えるかを示すもの。いろいろある


召喚形態:『召喚一体型』『完全召喚型』『武装召喚型』の3つがある

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