第二話 -3-
私、零火舞は、それを見ていることしか出来なかった。
律が蒼空を突き飛ばす。
その刹那、彼の体は炎に焼かれ、全身を氷に貫かれる。
周囲の空間が断裂し、何倍にもなった自重によって体がくしゃりと潰れる。
周囲の床は抜け落ち、一際大きな光に呑み込まれた。
恐らく、熊の能力は吸収、又はそれに準じた何か。
状況に置いていかれてやけに冷静な思考が、熊の能力は吸収と放出である、という結論に至る。
「っいけない!!!死んじゃうっ!」
叫んだのは桜井。
「やるしか...っでもっ...ええいっ!言ってる場合か!」
桜井が叫び、言う。
「『禁忌』全転現象!!!!!!」
『禁忌』そう口にした。
力が逆転する。律に向いていた力が一転、熊へと向かう。
熊はすべての力を受けて蒸発した。驚くほど呆気なかった。
「そうだっ...!律さんっ!」
そこにあるのは横たわった律。それを確認して間も無く、意識を手放した。
私は走り縋る。床に倒れ伏した兄に向かって。
「兄さんっ!!!兄さんっ!!!起きてっ...起きてよ!!お願いだからっ!!!」
私はペタリと座り込んでしまう。そのまま、弱々しく兄を揺する。
兄には傷一つとして見られない。それなのに、起きる気配はない。
息をしていない。
お願い、起きてと繰り返す私に、足音が近づいてくる。
「蒼空ちゃん。ごめん...。遅かった...。もう少し早く気づいてれば...」
振り向くとそこに立っていたのは慧ちゃんだった。
「律が...男のままで居られたのに」
「え...?」
何を言って居るんだろう。
「まって、どういうこと?」
「過時もボクも、間に合わなかった...」
頭が追いつかない。
男のままで居られた??
「死んでないの!?」
「うん、ギリギリだったけどね」
「じゃあなんで息してないの...!?」
「今は待機状態...というか仕上げ待ちというか」
「どうやったら生き返るの!?」
「蒼空ちゃん。キミの力を使うんだ」
「私の...力?」
「『血を混ぜる』能力。それで律と血液を共有して」
急に言われても頭がついて行かない。が、即座に行動に移す。
私は兄の首筋にかみつき、血液を交換する。
兄の体に変化が現れる。高かった身長がどんどん縮んでいき、筋肉質だった身体も柔らかな少女のものへと変わっていく。
「んっ...!」
血の交換をやめ、気を抜いた瞬間どっと疲れが襲ってきて、私は意識を手放した。最後に感じたのは、どくん、どくんと力強く脈打つ兄の鼓動だった。
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