第二話 -2-
熊は楽器を持ったままの俺達に飛びかかって来る。鈍そうに見えて意外と速いそいつは、ステージの前で見えない壁に張り付く用にして静止していた。
「全くマナーが悪い客だ…!」
珠璃が歯噛みしつつ呟く。珠璃が空間に壁をつくったらしい。相変わらずのチート能力。
「封印しようか、永遠に」
達彦が座ったままバスドラを三度叩く。熊が床に膝をつき、床が悲鳴をあげる。質量増加。相手の質量を増やすだけ。単純かつ地味だが、かなり強い。
「グガアアアア!!」
熊が雄叫びをあげて、立ち上がる。
「んなっ...!生物が保持できる限界質量超えてるはず!?なんで生きてる!?」
達彦が戦き叫ぶ。
あいつ...まさか...!
「どいて!私がやる!...音...壊!」
蒼空が熊に対して攻撃を仕掛ける。音壊。誤字ではない。文字通り、『音』が『壊』す。異常な振動数を持った音で、すべてを自壊させる技。蒼空には指向性を持たせる事ができるので、熊だけを的確に攻撃、熊を形作る物質をすべてを壊す。しかし。
「っ...効かないっ!?」
くまには傷一つなく。いつの間にか珠璃の空間結界も突破し。
「私がっ!氷夢炎現っ!!!
それは舞が出せる現時点で最強の攻撃。
「グゥアオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
流石に効いた。熊の体表を氷が覆い、体の中では炎が渦巻く。
「だめ!またくるよ!」
叫んだのは過時。状況を読む能力を持つ彼女の発言は重く、心にのしかかった。
まだなのか。これまでも幾度となくこういった戦闘はしてきた。1人でも、数人でも動物も能力を持っている。自衛は基本中の基本なのだ。
すべてにおいてここまで苦戦はしなかった。
各自の持つ能力を全力でぶつける。
空間を、質量を、音を、熱を、光を、あらん限りの能力の暴力。
しかし、すべて決定打とはならなかった。
むしろ、全くと言っていいほど効いていない。
この熊、能力は未だはっきりしない。
「まずいな...!皆!気をつけろ!こいつ...なにかする気だ!」
珠璃が叫ぶ。が。同時に。
熊の全身が輝き。
一つの光に収束し。
熊が蒼空を見据え。
俺はとっさに飛び出す。
蒼空を突き飛ばし、振り返って見たのは、全ての色をした。光だった。
そして俺の意識は途切れた。
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