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世界の終わりのお話

作者: 愚者

世界が終わる。

どこまでも晴れ渡る空は、スカイブルー一色に染め上げられ、神聖さを表すかのように美しく広がっている。そこに点在する無数の岩。空に不規則に並び、真っ赤に染まったそれらが僅かに青く光る残滓を散らすように映るその姿は一見場違いかと思われたが、そのコントラストが空の蒼さを、そして神聖さを際立たせている。

人々は、今まさに降り注ごうとしている隕石の山のことなど忘れ、唯々呆けたように空を見上げていた。


世界の終わり。それは一見残酷な結末に思えるが実際のところはそうでもないのかもしれない。もはや救済ですらある。

近年、石油を始めとした燃料が底をつき始めた。天然ガスやメタンハイドレート、石炭など幾つもの代わりの燃料が使われるようになったが、石油との利便性の差は圧倒的であり、石油製品から野菜まで多岐に渡る製品が値上げを余儀なくされた。にも拘らず、一般市民の給与は上がることなく世界的な大不況に陥っていた。

以前は地球温暖化を少しでも遅らせるためにと控えられていた無茶な資源採掘が行われていることからも状況の悪さが窺える。

そんな中訪れた世界の終わり。今まで類を見ないほどの数の鳥たちが集まり空を埋め尽くした。犬がひたすら吠え、猫はひとしきり騒いだ後死んだように丸まった。動物園は常に動物たちの鳴き声で埋め尽くされた。そんな光景は人々に実感を与えるには十分だった。人は嘆き、叫び、祈り、泣いた。

これは神の糾弾か。はたまた救済か。


空が闇に包まれた。陸は光に包まれた。


闇の中で甚大な存在感を持つそれらは深緋の炎を纏い、闇を照らし出す。それらは正に闇から訪れた終焉そのものだった。昼には空に美しく映えたそれらもこれだけ近づけば恐ろしく見える。地に届くまでそれほど時間はかからないだろう。刻一刻と世界の終焉は近づいていた。


光に包まれた世界。普段はついていない通りまでも光に包まれている光景は、まるでどこまでも広がる闇に対抗するかのようだった。普段は人がごった返す通りもビルも明かりだけを残して静寂に包まれている。それに対し居酒屋などの飲食店は普段と異なり喧騒に包まれていた。ビール片手に頬を朱に染めて楽しそうに、それでいてどこか寂しそうに思い出話に花を咲かせる。それを横目に次々とビールを配る店主も目尻に涙を溜めて、それでいて楽しそうに笑っている。

それらから離れた住宅街でも殆どの家に明かりが灯っている。いつもは聞こえるテレビの音は鳴りを潜め、暖かい静寂が世界を包む。そこには悲劇に嘆く姿はなく、机に並んだ普段とは違う豪勢なお酒やジュース、お菓子を片手に饒舌に語る姿があった。時折涙を流し思い出に浸る姿は哀愁に満ちていて、それでいて美しかった。


そんな光の世界に闇に輝く赤い光がぶつかった。


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