第十六話 漏洩
「梃徒、お前彼女できたか?」
「だからそんなのできないって」
「なんだよお前、高校に入ってから浮いたうわさの一つや二つないのか?」
「皆無だね」
「才華は何もしらないのか?」
「梃徒のことだから、きっと就職してから見合い結婚でしょうね」
「見合いかあ、それもそれでありだけどな」
じめじめとした6月が終わり、梅雨ももうすぐ終わるという頃になった七月、梃徒も期末試験が山場を迎え始めていて、それが終われば、後は優雅な夏休みが待っている。
「梃徒、お前テストはどうだ?」
「いつも通りだよ」
「そういえば、中間テストは、いつもよりよかったそうじゃないか! すごいぞ!」
梃汰が梃徒の頭を撫でてきた。
梃徒は顔を引きつらせて、それを受け入れる。
ここで変に拒否の意思を示すと、すぐに梃汰は意気消沈してしまう。そうなればもっと面倒なことになるので、いつもこういうときは受け入れていた。
「あれは、たまたまだよ」
「梃徒なら平均点のプラス15点は確実よ」
「偉いぞ!」
梃汰の撫でがまた始まる。
それは梃徒が食べ終わるまで続いた。
夕食を終えた梃徒は翌日のテスト勉強をするために自分の部屋に入った。
その前に梃徒は才華から封筒を貰った。
それは、6月に届いてから毎週のように送られてくる謎の暗号文だ。
梃徒は部屋に入ってから、その封筒を開けて中を取り出して、確認した。
いつもの通りその文章は一目みても理解できないものであり、内容はすべて同じ。封筒には例のごとく、宛名以外には書かれていなかった。
梃徒はそれを引き出しに入れてから、勉強を開始する。
二時間後、梃徒は休憩をしようと思い、リビングへと向かった。
「こりゃひどいな」
「そうね」
梃徒がリビングに入ると、梃汰と才華がテレビを見て真剣な表情をしていた。
「どうかしたの?」
梃徒は冷蔵庫からお茶を出しながら聞く。
「ある大企業から情報漏えいがあってな。その内容から、その会社が出している製品の性能がごまかされいてたことが、わかったんだよ」
「へえ、それはまた大変だね」
「その他にも顧客情報なんかも漏洩したらしい」
梃徒はテレビに視線を向けた。
そこでは、大きなモニターに、今回漏洩したであろうデータなどが出されており、それについて数人のコメンテーターとアナウンサーが意見を言っている。
梃徒はそれについて無関心であるわけではないが、今直近での優先順位から、特にそれ以上は見ないで部屋へと戻った。
「よし、やるか!」
梃徒は気合を入れて、机へと向かう。
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