表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/24

第十話 数字


「世界はね。なんでも文字に置き換えることができるんだよ!」

「どうしたの、急に」


 場所はいつもの中庭に花壇の横にあるベンチ。

 梃徒と桿那は最近そこで朝食を食べる機会が増えていた。

 最初は梃徒も、これに対しては抵抗の意思を示した。

 流石に友達を裏切ってまで、女子と食事をしようとは思わない。

 それに相手が相手だ。

 また何を言われるか、わかったものじゃなかった。

 しかし、彼の友達は彼を送り出した。

 なんでも、梃徒が冴えない男の星らしい。


「お前何言ってんだよ! 友達と女どっちを取るかっていったら、女に決まってんだろ! 俺たちみたいな冴えない男どもはな! 数少ないチャンスを物にしないといけないんだよ! 不釣合いだと何いわれても気にすんなよ! そんなもん他人が決めることじゃねえんだ! 大切なのは心なんだよ!」


 と熱く語られてしまい。

 もしも桿那からの誘いを断ったら、絶好だと言われてしまったので、仕方なく彼女の誘いを受けることにした。


「数字が世界なのよ!」

「それは極論すぎない?」

「今はね。でも将来的に必ずそうなるよ。人だって、もう番号が割り振られているわけだしね。住所だってすべてを番号で表そうとすればできるし、結局は電波だって数字の羅列だしね」


 桿那は感情がまるでないかのようにそれを話した。

 たまに彼女は、心がどこかに言ってしまったような話し方をする。


「難しい話だね」

「こういう話は嫌い?」

「うーん。嫌いではないけど、得意でもないかな」

「うふふ、私も」


 桿那がにっこりと頬む。

 感情が戻ったみたいだ。


「梃徒君はさ、何か得意なことってあるの?」

「それはまるで、僕にそんなものないんじゃないか、みたいな言い方だね」

「そんなんじゃないよお! 私、梃徒君のことならなんでも知りたいの!」

「君は何が得意なの?」

「計算かな!」

「足し算とか?」

「うん!」

(お、おう……)


 まさかの同意に梃徒はひるむ。


「で、梃徒君は?」


 桿那の顔がぐいっと近寄ってきた。


「そ、そうだな。あれかな。空気と一体になることかな」

「…………」


 乾いた風が、二人をすり抜けた。


「ぶふっ! ふふふはははははははははははははーーーー」


 しばらくして桿那が噴き出し、大声で笑い出した。


「ははははは、何それ! 最高!!」

「はは、それはよかったよ……」

「あーあ、お腹痛い。ははは」


 確かにボケたつもりはあった。

 だが、そこまで大うけされると、心持ちとしては複雑だ。

 それから桿那は梃徒を見てそれを思い出しては「空気と一体…」とつぶやいて笑うという一日だった。


(そんなにおもしろいのか?)


お読みいただきありがとうございます!

他の作品もぜひご一読ください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ