6 グループ勉強
「百合!木佐ともっとちゃんとした方がいいよ!!」
どうしてこうなった?!
木佐西都について6
次の日のホームルーム前の時間。
まだ、絵梨の目ははれぼったい感じだった。
「絵梨だいじょうぶ?」
皆が絵梨に寄る中、わたしは木佐をいまかいまかと待ち受けていた。
来た!
教室に笑顔で入って来る木佐。
木佐ぁ! 謝れ!!
念を送る。
木佐はこっちを見て、苦そうな顔をしたあと、
「絵梨ちゃん、目大丈夫?」
いつものチャラい感じで絵梨の机の前へ。
「お腹の虫はきっともう怒ってないよ♥ きっともう痛くならないから大丈夫」
絵梨は少し顔を赤らめて、
「うんありがと、木佐」
と言った。
どういう意味じゃ?謝ってんのか!?
昼休み。研究棟の裏に絵梨に連れ出された。
「ねえ、聴きたいんだけど」
きたああ!
「木佐とはどこまで行ってんの?」
やっぱり・・・
「いや、別に何も・・・」
「何も!?」
「え〜デートらしきものを先週したぐらいで」
絵梨は信じられないと叫んだ
「木佐、人気高いんだよ!!」
「ええ? 3枚目なのに」
おもろいことしか言ってない奴だよ!?
「3枚じゃない。2.5!」
「ええ? 2.5って?」
「面白くって顔が良い!!」
「でもかわいい系だし、わりと恥的なことも、ずっこけたりとか」
「そう! すごいよね!!」
はい?
「クラスの雰囲気よくないときとか、わざとだよ。わざと! そういうことして、笑わせてくれたりほっとさせてくれたりしてくれるんだよ。かっこいいじゃん!!」
ええ?
「そういう気遣いっていうのは頭良くないと出来ないしね!」
「でも、もっと顔良いのとか意外といるしさ〜」
嶸山の方が顔良いと思うし・・・
「わかってないなあ。百合は!」
Why?
「そういう子は表で人気高いし、話しかけたりもハードル高いの! 木佐みたいなのはフリーっぽくって、敷居高くないし、狙い目なんだよ〜」
「狙い目って・・・」
「だから牽制すごくって。油断してたら百合がかっさらうから」
「そ、そんなつもりは・・・」
「いつから、木佐良いって思ってたの??」
目がきらきらしてる〜。
「いつからって」
「いいって思ってなきゃつきあわないでしょ。ねね。誰にも言わないからさあ〜」
「ええ? いや、木佐のこと別に」
「は!?」
次は鬼の顔に・・・
「はあああ? 百合ぃ!!」
「でも木佐が・・・」
先々週。
あの日の昼休み。飲み物買おうと思って、購買に行く途中
下駄箱前で待ち伏せされて・・・
「百合ちゃん。返事は??」
「木佐? 返事って?」
「だーかーら」
前にまわりこんで、わたしの顔を正面から見据える。
「告白の返事♥」
「え、あれは?」
「僕の気持ちに応えてくれるの? くれないの?」
「でも、木佐はさあ。その」
冗談でしょ? いくらわたしでも木佐がいいって周囲から言われているのは知ってるし。他のかわいい子もいるんだから。
「わたしとか無いかなあというか。あんまり詳しくないし」
違うでしょ?
「僕だって百合ちゃんこと、知らないよ?」
「でも、直ぐ別れちゃったりとかしたら木佐にも迷惑だし、恥ずかしいし」
「じゃあ、お試しでいいんじゃない? 付き合うってもともとお試しってことだよ?」
「校内でいちゃつくとかマジはずいし」
「分かった。校内無しね」
「・・・」
「どっちも互いのこと知らない初心者なんだからよろしくね」
・・・と握手を無理矢理交され
「今に至るというか・・・その・・・絵梨?」
絵梨は肩を怒らせ、俯き・・・握られた拳が震えていた。
やば
カッ!!
「ああ、ごめん絵梨!!」
思わず、顔を背けた私の手を、絵梨は掴むと
ぎゅっ!
「百合! 木佐ともっとちゃんとした方がいいよ!」
へ?
「全然つきあってないじゃん!!」
付き合えてないの? わたし
「早くはっきりしないと。いろいろ失礼だよ!!」
・・・
「さっそく、こんど中間だし、一緒に試験勉強でもしなよ! 木佐、数学とか勉強とくいでしょ?」
「えええ!? どこで?」
「どっちかの家」
「無理無理無理!!」
「なんで?」
「ばれちゃうばれちゃう!」
「はあ!?」
それはそれ、これはこれ!!
「じゃあ、図書館は?」
「皆来るよ〜」
「じゃあ、どうしたら、二人っきりに・・・」
考え込む絵梨。
「ちょっと待ってよ、絵梨、勉強だったら。いろいろ得意教科持ってる人と一著にやった方が良くない?」
うんうん、勉強するなら〜♪
「ほら、木佐は数学や物理得意だし、わたしは世界史好きだし、絵梨は国語や英語いけるし、里緒菜や夏樹は地理得意じゃん」
「ああ、そっかって、それじゃ百合のためになんないじゃん!?」
「別に分かりあうっていっても2人の時と大勢だとまた違う面がでてくるわけでしょ?他の子とどう接しているかってのもさ。クラスの大人数とはまた違うだろうし。いろいろな木佐を知りたいんだよね? どうかな絵梨?」
「たしかに。そうかも」
あ、まずった。
「ごめん、絵梨」
「え?」
「木佐のこと気まずいよね。なんか、あいつさあ」
「いいの! 木佐、朝、気にするなって言ってくれたし」
「え?」
「ほんと木佐良い奴だよね!」
?
「じゃあ、私、里緒菜たちに試験のグループ勉強のこと話すから、百合は木佐にお願いね。グループだから、木佐にもあと3人お願いした方がいいのかなあ?」
「あの、絵梨、今のどういう?」
「つまり、木佐はかっこいいの! アンダスタン?」
「ええ?」
「放課後楽しみ〜〜」
え? いきなり放課後ですか!?
図書館。
「勿論知っているけど、改めて紹介するね。立川、矢橋、余戸谷で僕、木佐。得意教科は英語、古語、化学、で数学と物理でーす」
つんつん、絵梨に突つかれる
「えっと、スポーツ女子チームはですね。絵梨、夏樹、里緒菜でわたし百合で」
んん、下の名前で紹介って意味あるのかな〜? なんかはずい。
(自分のこと、野辺山とか言っちゃダメ。可愛くない!)
絵梨先生、なんかはずいです!!
「教科は絵梨が英語と国語、夏樹と里緒菜が地理とか社会が得意で、私は世界史です」
ここで絵梨先生にバトンタッチ。
「みんな、教えあった方が効率良いと思うので集まってもらいました。グループはじめてだけど、よろしくね〜」
う〜ん、わからん
「どこで、ひっかかってるの? 野辺山さん」
「えと、ここ」
「公式使ってるね。あ、ここの繰り上がり変だよ」
「むちゃむちゃ初歩でごめんなさい」
「ん、そんなもんだよ」
やさしいなあ。顔良いと余裕がでてくるんかな?
さすが、木佐の友達は違うなあ。
「でも、まさか野辺山さん達と勉強することになるとは思ってなかったなあ」
「余戸谷くんは、なんてきいてたの?」
「木佐がね。罰ゲームしようって言い出して」
罰ゲーム?
「勉強会って言われて、はは、残ってみたら、」
照れくさそうに笑う。
「そしたら、野辺山さん達だった」
ははは
「本当にすみません」頭下げる。木佐。なんで言わないの?
「いや良いんだ。木佐のおかげで新鮮な体験ができているわけだし。ほら!」
指差した方向を見る。ん? 余戸谷くんの後ろ?
ああ、そうか!
里緒菜と立川がなんとなくいい雰囲気。
「まあ、他のヒトはどうだか分からないけど、迷惑だったら言ってね」
「いえいえ、助かります」
あ、絵梨は・・・・
「木佐、すっごく分かり易い!教えるの上手いね」
「そんなことないよ〜」
木佐?・・・絵梨、笑えるんだ。
本当に大丈夫なんだ。はは。よかった。
「野辺山さん?」
「はい!!」
「この公式はね・・・」
キーンコーーーン
「あ、塾いかないと」
「じゃあ、この辺でお開きにしますか?」
「おつかれ〜〜」
「また、一緒に勉強しよう」
「はかどった。ありがとう」
・・・・
「百合ちゃん!」
・・・・
「百合ちゃん?」
・・・・
「何怒ってるの? ちゃんと謝ったよ?」
「それよ。それ」
ずっと考えてたけど分かんない。
「あれ、どういう意味?」
「・・・ああ、あれは・・・」
「絵梨は納得してたけど、私全然わかんなくって、今日ずっとひっかっててさあ。ん。何?」
「教えない」
「はああ?」
「百合ちゃんの鈍感」
「教えないと一緒に帰らないよ!」
「鈍感と一緒に帰りたくないからいいよ」
「ちょっと。教えてよ。きさああ!!」
もう、なんなのよおおおお