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きささいと について  作者: 佐沢会
4/38

3 電車で遠出

「あの、俺のなんで、返してもらえます?」

お、俺? 今、木佐が俺って言った?

なんか、いつもと違うぞ。

「百合、行こう」

しかも、よびすて。


何か新鮮かも。


木佐西都について3


要は、知っている人に会わなきゃいいんでしょ?

先日の帰り道でのこと。

木佐が用意したチケット2枚。

絶対皆が行かないであろう、クラシックコンサート。

・・・

何故、私の趣味を知っている。


木佐は学校の鞄についているキーホルダーを黙って指差した。

「その人、クラシックの指揮者だよね」

うむむ


次の週。

私は木佐と鈍行に乗っていた。

うれしい!

S席チケットを手に、つい口元がほころんでしまう。

いかんいかん。

横目で木佐を見る。

まっすぐ向かいの窓を見ている。

何考えてんだろ?

チケットに視線を戻す

ふふふ


隣の市の市民会館。

「見えた!」

受付に向かって駆け出す。

「席はもう決まってるよ!」

後ろの木佐は置いとく。

「グッズ! 先にグッズ見るの!!」


「うわっ、グラビア!?」

木佐があきれたような声でつぶやく。

「公佳さま、涼介さま。あ、限定総譜、買う!」

「弾くの?」

「もう弾けない」

もうピアノは弾いてない。

後ろで溜め息。

「席確認してくる」

「うん^^」

足音が増えて来た人混みに薄れて行く。

「あ」

ちょっと放置し過ぎたかな?

でもこんな機会そうそうないし・・・

ごめん! 木佐!!


えっと、このくらいでいいかな?買うグッズ。

バサ

「ああ!?」限定総譜があ!

「へえ、総譜買うの? はい」

お兄さんが拾ってくれた。

「弾くの? すごいね」

「いえ、今は弾いてなくて。こういうの見ながら聴くのがすきっていうか・・・」

「面白いね」

わたしてくれた人、首にアザがある。

「バイオリンですか?」

「どうしてわかったの?」

「いえ、首にアザがあったので。江口涼介の特集で見たことあって」

「クラシックバンド組んでるんだ。良かったら今度おいでよ」

「ほんとですか!?」

おおおお! まじほんものほんもの!!

「場所教えるからさ。混んでいるから始まるまで向こうのテラス席で話そうよ」

「あ、は・・・」

「あの、俺のなんで、返してもらえます? そろそろ」

真後ろに木佐。

お、俺?

「席確認したし。全部買うなら、レジ混んでたから時間足りないよ」

「うん」

木佐、いつもと違う。

「じゃあ」名刺がすっと手の中に入れられた。「またね」

さっさとお兄さんは消えてしまった。

「百合、行こう」

えっと、お礼いってなかった。それに、

「百合って?」

「早く!!」

手首摑まれてレジへ。

確かに混んでいて、かなりぎりぎりになってしまった。

商品を入れた袋を木佐がさっと持ってしまい、返してよ!と差し出したわたしの左手を木佐が右手で握って早足で歩き出す。

ぐいぐい引っ張られる。痛くはないけど外れない感じ。


コンサート中、ずっと握手。

総譜が捲れないので文句いったら、

「言って、捲るから」

ということで総譜を2人で見ながらコンサートを聴いた。


「あの、なんか、恥ずかしいんですけど」

コンサート会場から15分くらいの喫茶店。

「別に普通でしょ?」

向かいあって握手したまま。

利き手じゃない手で器用にジュースを飲む木佐。

「デートらしくていいんじゃない」

でも手をつなぎっ放しって・・・

「知り合いいないよ」

まあそうだけど。


「流石にもう終了!!」

電車の中はなし!

「チケット代」

んん!?

「高かったよ」

「喫茶代は払ったじゃん」

まあ・・・確かにS席(めちゃ高い)だった・・・

「分かったわよ」

コートを脱いでわたしと木佐の膝に掛ける。

膝に掛けたコートの下で手をつなぐ。

「これでいいでしょ」

まっすぐ、向かいの窓を見たまま、

「うん」

まったく何考えてるんだか。

ふと前を、木佐が見ている窓の向こうの景色をみた。

電車の窓には、並んで座るわたしたちが映っていた。


「恥ずかしいんですけど」

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