2 居残りデート?
校内はやだって言ってんのに。なんで?
木佐西都について2
「野辺山、よろしく!!」
このプリントの山、どうにかして欲しい。
「これ一人で、ですか?」
「嶸山は欠席だしな」
他のクラス委員は休み。
「失礼しまーす」
「あら、木佐くん」
「みや先生。これで」「はい。課題、相変わらず早いわね」
「先生が美人なんで」
「なんにも出ないわよ」
斜め後ろの能天気な会話。
課題まで終わっただと! 代われ、代わってくれ!!
「おい! 木佐ぁ ちょっと待て」
「せんせーい! 早く帰りたいんでいいですか?」
職員室のドアの前で嫌そうな声。
「デートなんですよ〜」
「ああ!? 神聖なクラスの仕事だ。なにいってやがる。おい木佐お前も残れ!」
「ええ〜」
「はい決定!!」
暗くなり始めた廊下をとぼとぼ歩く。
「百合ちゃん。どうしたの?」
「別に。デートがつぶれて悪かったわね」
やっぱりチャラ男だ。天罰よ!
「ううん、デートだよ」
「は?」
チャラ男が誰もいない教室のドアをあける
「よっと」
半分のプリントを片手に抱えて。
「どうぞ」
「どうも」
私が入った後、ドアを閉める音。
窓際の机にプリントを置く。
「百合ちゃんと」
向かいに奴が座る。
にっこりわらう。
はあ
「じゃなんで。はじめからやりますって言えばよかったじゃん」
「そんなこと言ったら、あやしまれるでしょ?」
両手でほおづえ着いて、軽く上目遣いでじっとこちらを見ている。目が大きい。
「滝口は彼女いないしさ。おじさんで焦ってるし、なめられたくないって思っているし。まあ小心者だからさ。ああいえば、絶対ああいうって分かってた」
「あんた。やなやつね」
「しってるでしょ?」
「さっさとおわらせよ」
薄暗い教室の中。プリント畳んで、3枚セットにして、ステープラーでとめる。
もくもく
外ももくもく
「くもってきたかな。やだなあ」
「百合ちゃん。傘もってる?」
「持ってる。あんたは?」
「持ってない」
「雨降んなきゃいいね」
「降らないかな?」
「??」
「百合ちゃんと相会い傘」
「死ね・・・」
もう周辺は真っ暗
「やっと終わった。まじ滝口最低!」
「だね^^」
さっさと帰りたい。けど
「木佐、ちょっと待ってて」
「いいよ。どしたの?」
「トイレ。ちょっと暗いからさ」
「一緒にいってあげよっか?」
「いらない」
駆け出して教室の外。点々と光る蛍光灯。数はあるのに廊下の先はうすぼんやり。
他の教室は見ない!
一気にトイレまで走る。
はあ。無事済ませて教室へ戻る。
よかった。灯り点いてる。
まだ、木佐いるよね?
がら
「木佐、ごめんね。待たせて」
あれ? 木佐
あれれ? ちょっと
え、えっと
灯りついているのに。
机の下、椅子、教卓の下とか? ロッカーとか?
ちょっと止めてよ?
ゆっくりゆっくり窓際の机の前へ
・・・
いない。あのやろーーー! さっさと帰りやがって!
やっぱりチャラ男だ!!
「ばかやろー」つぶやく。思わず声が出た。
やっぱりムカつく。
「百合ちゃん」
直ぐ後ろで声。
「うあ!」
カーテンの中!?
「びっくりした?」
手が伸びて私を捕まえる。
(「百合ちゃんつきあって」)
あの時みたいに。
木佐を男だと認識したあのときのように。
背中に体温。
前に回った男の腕・・・!?
やだ・・・!
無意識に右手が後ろへ上がろうとする。
「もう、痛いのいやだよ」
手首がぐっと摑まれる。
・・・どうしよう
どうしよう
どうしよう
ガラガラガラ、ドーーーーン!!!
「え?雷」
あれ?
後ろの圧迫感がない。振り向くと
カーテンの下の方にふくらみが。
めくる。
「なにしてんの?」
「雷・・・いやなんだよね・・・」
頭抱えて震えている・・・木佐。
「木佐、帰るよ」
手を引っ張って立ち上がらせる。
なんだか、馬鹿馬鹿しくなって来た。
職員室には、既に滝口の姿はなく。プリントの山を書類の上にわざと置いといた。
当直の先生に挨拶して、下駄箱へ行く。
雨
ときどき雷
しゃべんない木佐。
「ほら」
「いいの?」
傘を差し出す。
「駅までだからね」
「ありがと」
雷がなるたびに必要以上に近くに寄ってくる木佐を肘でつつきながら
歩く。
「女の子の方がキャーっていうべきなんじゃないの?」
「なよい男は嫌いだ」
「酷い・・・うわ!!」
また雷が鳴った。