□第32話□ 囚われたもの
暫くはティナのターンです。…いやむしろ、サウロのターンなのか…。
強制的に排出させられる魔力と、乱暴な馬車の運転に、ティナは吐き気を覚えてた。
前日は状況が目まぐるしく変わり、かつ、正妃によって奪われた魔力はまだ、回復しきっていない。そこに、魔力を吸い上げる腕輪だ。
世界はぐるぐると回っていて、身体を立てておくことさえ出来ない。
ティナはぐったりとしたまま、ロランに抱きかかえられ運ばれた。
頭の上で、誰かが会話しているのを聞くともなしに聞く。
ティナと行動を共にしているのは、ロランを始めとしたほんの数名のようだ。
人を拐かしておきつつ、大人数で移動するには無理があるからだろう。
分散していったいどこを目指しているのか。
ぐらぐらと回る視界を堪えながら、じっと時を待ち続ける。
訥々と語られる男達の言葉には、僅かだが訛りがある。
家族のこと、畑のこと、天候のこと、内容はどこにでもありふれたことばかりだ。
山の民と名乗る彼らが、王族に、この国に、ケンカを売るようにはとても思えない長閑さ。
ティナはひどく不思議に思った。
「私に対する手段の強引さに比べて、この人達はとっても無害に見えるわ。なんでかしら」
たまに聞こえてくる低い歌声は誰のものか。
旋律には、どこかで聞いたことがあるような懐かしさがあった。
目眩と頭痛は消え、うとうとと微睡む。
どれくらいそうしていたのか。
衝撃に瞼を上げると、山の稜線は黒々と空に溶け、瞬く星達が頭上を照らしていた。
ぼーっと見上げていると、それを遮るように誰かがのぞき込んでくる。
薄明かりの中に朧気に見える相貌に、懐かしい面影が重なった。
「目を覚まされましたか?」
つかみかけた記憶は、ロランの声にかき消される。
「……私、寝起きは悪いのよ。近づかないでもらえる?」
精一杯のトゲを言葉に含ませても、ロランは柔らかく笑うばかり。
ぐったりとしたティナの身体を抱き上げ、馬車から降ろした。
「自分で歩きたいんだけど?」
「あなたは随分とお転婆でいらっしゃるから。
間もなく自由を差し上げますから、今はまだ、お待ちください」
お姫様のように横抱きにされ、姿勢の不安定さからティナは仕方なくロランの首に手を回した。
ロランが面白そうに口の端をあげ、それがまたしゃくに障る。
ティナが連れてこられたのは、王都からさほど離れていない小さな岩山の麓だった。
松明に照らされた大きな岩を、数人の男達が協力して押すと、その奥に洞窟が姿を現した。
「……ここは?」
「内緒です」
ティナが不機嫌に唇をとがらせると、ロランはぷっと吹き出す。
「すぐにわかりますよ、姫君」
「何それ。嫌み?」
「まさか! あなたの名を呼んでも?」
「……ティナよ。それ以外は受け付けないから」
「ありがとうございます、ティナ」
歩き始めてそれほど進まないうちに、数人の人間が入ればいっぱいになりそうな狭い空洞が現れる。
等間隔に置かれた松明が、その空洞の中にも設置されていて、揺らめいて地面に描かれた複雑で巨大な魔方陣を照らしていた。
目をこらして見てみても、何を表す魔方陣なのかさっぱりとわからない。
所々、距離、方角を表しているのはわかるが、それだけだ。
ここにロイドがいてくれれば、すぐに魔方陣を読み解いてくれるのだろうが。
じっと睨み付けていると、ロランはティナを抱えたまま、その魔方陣の中央に歩を進めた。
「何をするの?」
「……隠れ里に行きます。我々の。…………あなたの」
三人の男が魔方陣に力を込めていく。
淡く輝く中央で、ロランは真っ直ぐに前を見つめていた。
「あなたはあまりにも何も知らない。彼らによって、あなたは隔離されてきた。
……あなたには是非、山の民を、我々を見ていただきたいのです」
魔方陣からあふれ出る光の粒が、周囲の景色を溶かしていく。
無機質な反響とゴツゴツとした岩肌は、ヴェールを剥ぐように、柔らかな木々のざわめき、夜鳴き鳥の沈黙を深めるさえずり、湧きいづる清流のせせらぎへと変わっていった。
登り始めた月に照らされ、ティナはいつの間にかつめていた息を吐いた。
山にへばりつくように、粗末な家々が軒を連ねている。
窓にガラスはなく、屋根には朽ちた草を敷いているようだった。
倒れそうな小屋もある。
背後にある建物だけが、辛うじて少し大きめで立派だ。
目前にはぽっかりと開けた広場。
そこここに、緊張感を持った人々。
百名もいないように感じる。
子どもや女性が少ないが、いないわけではない。
彼らは黙り込んでこちらを見ていた。
「山の娘のご帰還です」
ロランが戦利品のように、ティナを高く掲げると、人々の歓声が爆発した。
踊り出す人。泣き出す人。ティナに向かって祈る人。
ティナはその狂乱をしばし眺めていたが、誰一人、ティナと目が合わないことで気付いた。
彼は山の娘の帰還を喜んでいる。
誰一人、ティナを求めていない。
もし、ティナが山の娘ではなかったら、どうするのだろうか?
ロランの勘違いであれば?
そうなったとき、今、目の前で歓喜している人々にとって、ティナの命はどれほどの軽さだろう。
宰相の前に引きずり出されたときと同じ空気を感じ、ティナは恐怖に身をすくめた。
ロランが、掲げていたティナを下げる。
下賜品よろしく、近くの男にティナを渡そうとしていた。
そんな数瞬の静けさの中、突然、異音が響いた。
「ゲフッ」
ロランの背後、淡く光る魔方陣から現れた男が一人、身を二つに折って蹲っている。
瞬間、銀の光が走った。
「娘を!」
ロランが隣にいた男にティナを押しつけ片手を上げるのと、その銀の光がロランに迫ったのは同時だった。
「サウロ?!」
動きをつめた騎士は、その切っ先をロランの喉に突きつけている。
あと一歩と言うところで、サウロは動きを止め、口を盛んに開閉する。
何か言っているようだが、音がティナに届かない。
「止めて!」
ティナは慌ててロランに縋ろうとしたが、振り払われた。
間違いない。
エレクトラにした何かを、ロランはサウロにもしたのだ。
だが、一瞬眉をひそめたサウロは、そのまま踏み込んだ。
ぎょっとしたロランが後ずさり、突き刺さる先を失った切っ先は、喉に赤い線を刻みつける。
「まさか、まだ動けるのですか?」
サウロが顔をゆがめ、大きく口を開く。
獣のように叫んでいるのか。
しかし、音はない。
表情や動きとはかけ離れた静かさで、サウロの剣がロランを追い詰めていく。
「おい、やべぇぞ。誰か、加勢だ! ロランを助けろ! 侵入者を殺せ!」
女や子ども、老人を下がらせ、男達が前に出る。
圧倒的に多勢に無勢だが、サウロに迷いはない。
氷の矢、緑の蔦、炎の弾。
多彩なそれらをことごとく避け、ただ一人、ロランに肉薄する。
「……こうなれば!」
ロランが両手をかざしたところで、背後の茂みが動いた。
「なっ!」
「ひぃっ!」
四、五歳程度の子どもが、頭を抱えて座り込む。
ロランは悔しげに眉をひそめ、サウロを睨み付けたまま、子どもをかばうように抱きかかえた。
「サウロ! 止まって!」
振り上げられた剣は、髪一本ほどの距離で、ロランの額の上に止まった。
だが、その制止は限界ギリギリのようで、サウロの太い首にはいくつも血管が浮かび上がっていた。
「ロラン、サウロの術を解いて」
「しかし……」
迷うそぶりを見せるロランを促すように、ティナはサウロの胸を押し、二人の間に出来た隙間に身を滑らせた。
「次は、私でも止められないよ」
「……娘が、…………仰るなら」
ロランが空中に魔方陣を描く。パァンッ、と破裂音が響いた。
「かはっ」
サウロが勢いよくむせ、引きつるように呼吸を繰り返す。
「……なるほど、貴様、空気を操るのか……」
咳が治まったところで、サウロはあふれ出た唾を袖で拭う。
ロランはその様を、心底嫌そうに、顔をゆがめて見ていた。
「あなたには効かなかったようですが?」
サウロはにやりと笑っただけで、その問いを無視した。
剣を持たぬ方の腕で、ティナを後ろから抱き込む。
「さぁ、帰りましょう」
耳元で吐息とともに吹き込まれた美声に、背筋がぞわっとしたが、何とかそれを押さえ込み、ティナは首を振った。
「帰らないよ」
「何故です? ルシオ様からの援軍もそのうち参ります。
それまで、私一人でも十分にあなたを守ることが出来る」
サウロが威嚇するように、ロングソードを片腕で振る。
ロラン達、山の男の殺気が膨れ上がった。
背後に身を寄せ合っていた女や子ども達は、これから起こるだろう修羅場を避け、背後に下がっていく。
「援軍は来ないよ」
ティナには確信があった。
「殿下?」
訝しむサウロの手を取り、剣を封じる。
「援軍は来ない。サウロ、私はティナだから」
サウロは暗い青い瞳を大きく見開いた。
ティナはティナとして浚われた。
ここにいるのは、レスリーではない。
「いや、しかし……」
「ルシオに会った?」
「いえ……急いでおりましたので、報告は姉に……」
戸惑いを見せるサウロと、それを見守るロランを、ティナは順番に見回す。
周囲の人間達も、固唾を呑んで見守っているようだ。
ティナはできるだけ、威厳を示せるように、背筋を伸ばした。
脳裏にルシオの姿を思い描く。
偉そうに、冷徹に、見下すように。
ティナの雰囲気が変わったことに、サウロはすぐに気付いた。
片膝をついて、主の傍らに侍る。
肩に掛かる程度の亜麻色の髪に、焦げ茶色の瞳。
幼さを残した面立ちを見ても、どこにでもいる平凡な少女にしか見えない。
なのに、周囲を睥睨するティナを、誰も無視できない。
先ほどまで殺意をまき散らしていたロランまで、じりっと後ずさっていた。
「聞きなさい。
私は、あなたたちが私を害すことがないことを知っている。
でも、それがどのような理由か、私は知らない。
だから、私はその理由を知るために、ここに留まろうと思う」
はっきりと言い切られた内容に、サウロの肩がはねたが、ティナは騎士の肩を片手でつかみ、軽く押さえつけた。
サウロの動きが止まる。
息をつめていた人々が、安堵故か、一斉に息を吐いた。
空気が緩むのを感じる。
「ロラン。そういうことだから、速やかにこの腕輪を外し、私とサウロに部屋を用意してちょうだい。
隣り合った部屋か、同じ部屋でいいから。
……サウロを傷つければ、貴方たちは私を永遠に失うと知りなさい」
男達、とりわけロランは再び緊張したようだが、ティナは無視して歩き出した。
サウロもともに歩き始める。
目配せをし合った後、ロランがため息とともに頷いた。
男達が一斉に動き出し、一人がティナを先導する。
標高のためか、空気は固く澄んでいる。
粗末ながらも、ベッドと暖炉がある部屋に通され、ティナはようやく肩の力を抜いた。
足がもつれ、身体が傾ぐと、それを力強い腕が支える。
「サウロ……来てくれてありがとう」
腕に縋るように体重を預ける。
サウロは軽く笑った。
「ルシオ殿とて、可能であれば、何を置いてもいらっしゃったでしょう」
「……可能であれば、ね」
苦い思いを込めて、先ほどまで封印の腕輪をはめていた手首をさすっていると、サウロは彼女をベッドの上に下ろし、ブーツを脱がし出した。
恥ずかしさのあまり足を引っ込めようとする足首を掴み、ティナを間近から見上げる。
強い意志を感じさせる深く暗い青い瞳。
男らしい眉をしかめ、不満を表明する様はどこか幼い。
ティナは足を取り戻すことを諦め、ぷはっと笑い声を弾けさせた。
「笑い事ではありません」
「でも、おかしいでしょ」
「……あなたが自分を惜しまないから、私やルシオ殿がそうするしかないのです」
昨夜のことまでも含め、暗に責められ、ティナはたじろいだ。
そこを、サウロが見逃すはずもない。
「何故、ここに滞在を?」
ティナの口ぶりからして、この地に根を下ろし、彼らのために生きることを選んだとは到底思えない。
そんな疑問を込めて見上げると、ティナは周囲を見回した。
見える範囲には誰もいない。
しかし、ここには魔法を使う大勢いる。
誰かに聞かれているかも知れない。
そう考えて、ティナは思い直した。
誰が聞いていても、何が変わるわけでもない。
それに……。
「もし、聞いているとしたら、ロランだしね」
「殿下?」
口の中で消えていく言葉に、サウロが首を傾げる。
「サウロは、山の民って知ってた?」
「……そうですね。あまり得意ではありませんが、歴史で少し学びました。
この地の先住民族で、まつろわぬ民。
彼らは我らの王政を拒否し、山にこもっていると聞きます」
「私はもっと知らない……」
孤児院では、「山には悪魔に魅入られた蛮族が棲んでいて、悪いことをした子どもを浚って食べる」と言い聞かせられていた。
離宮で学んだのは、建国神話。
大陸の中央から逃れてきた人たちを助けてくれたのが、山の民だと聞いた。
しかし、彼らは王による支配をよしとせず、聖女亡き後、英雄と袂を分かち山にこもってしまった、と。
「彼らは何故、私を浚ったのかな?」
「……力があるから、では?」
「私が誰かも知らないで、力があったから、というだけだったら、そうかもしれない。
でも、ロランは私を山の娘、と呼んだの」
「山の娘?」
「そう。それに……私がレスリーであることも、彼らは知っていた」
「は? あ……いや、まさか……」
思わずといったふうに声を漏らした後、サウロはそれでも戸惑いを隠せないようだ。
ティナは薄く笑って、薄く開けられた鎧戸を見た。
ゆっくりと身体を起こし、落ち着きをなくしたサウロをじっと見つめる。
見つめているうちに、騎士は心を静めることが出来たようだった。
「サウロがいれば、私は安全でしょ?」
「勿論です」
腰に佩いた大剣を、サウロは自信満々にチャリ、と鳴らす。
こんな場合でも自身の強さに一切の疑いを持たない騎士に、頼もしいと思えばいいのか、呆れればいいのか。
自身が誘導した状況にもかかわらず、ティナは苦笑を漏らす。
「じゃぁ、もう少し付き合って。
私、ここの人たちのことがもっと知りたい。ロランが何をしようとしているのか、知ってから……」
戻りたい、と言う言葉は飲み込んだ。
ルシオと派手にやり合っておいて、望んでいいのか、迷ったからだ。
「そうですね。土産を持って戻らねば、ルシオ殿にどやされそうだ」
目を細めたサウロに、ティナは居心地の悪さを感じる。
時折、この年上の男が見せる、「わかっている」と言いたげな眼差しが辛い。
「わかってるなら、今日はさっさと寝よう。
明日はいっぱい働いてもらうから」
薄い毛布を頭からかぶると、抑えた低い笑い声が響く。
本当に、年上ぶるのを止めて欲しい。
そう思うことこそが、年少者の証であることに気付くこともなく、ティナは布団にこもったまま、意識を失うように眠りについた。
目が覚めると、ベッド脇の椅子にサウロが身を預け、目を閉じていた。
そういえば、彼のベッドの用意をお願いしていなかった。
疲れていたとは言え、申し訳なかった。
詫びを込めて騎士を見つめていると、パチッと瞼が開き、深く青い目と目が合った。
「おはようございます、殿下」
甘く微笑まれ、朝から頭に血が上りそうになる。
「いや、殿下とかないでしょ。今、私、殿下じゃないし」
「では、名を呼ぶ許しがいただけるのですか?」
貴婦人のごとく扱ってくるサウロに、ティナは慌てた。
ベッドを飛び出て、サウロから距離をとる。
「昨日、呼んでくれたじゃない。エレクトラから聞いたんでしょう?」
外へのドアを開けようとした手が、サウロにより包まれる。
驚いて振り返ると、サウロは驚くほど近くにいて、覆い被さるように見おろしてくる。
「しかし、あなたから直接許しをいただきたい」
ルシオとは全く違う、腰に響くような低い声。
「いや……あの……。ティ、ティナっていうの。
前にも言ったと思うけど、特にこの姿の時は、私は殿下じゃないから。
敬語とか、いらない……の」
思わず言葉に詰まったのは、サウロの幸せが滲むような笑みを見たからだ。
見てはいけないものを見せられている気がして、ティナは視線を外した。
なのに、サウロは逃がしてくれない。
硬い手のひらが、ティナの頬をなぞり、指先が目元に触れた。
「そういえば……そうだったか……。
俺とあなたは対等だったのだったか、ティナ……。
……まだ、疲れが残っている顔をしている。
身体は大丈夫か?」
「へぁ?」
ティナが間抜けな声を上げている間に、いたずらな騎士の手が、ティナの顔を仰向かせる。
蜜を垂れ流しているようないい男の顔は目に毒だ。
理由もわからないまま、ティナは切羽詰まった焦燥感に煽られ、ぎゅっと目を閉じた。
その瞬間、サウロの手が強張ったように感じた。
唾を飲み込んだような気配。
なのに、何も喋らないサウロ。
目を開けるタイミングがわからなくなって、ティナは動揺したまま、自分のスカートをぎゅっと掴んだ。
「朝食を用意しました、ティナ。
すでに起きていらっしゃって助かりました」
どこか芝居がかったロランの声が割り込み、ティナはつめていた息を吐き出した。
いつの間にかドアが開いて、逆光の中、ロランが立っている。
「反乱軍の首領自らメッセンジャーとは、随分と暇なのだな」
「あなたほどの騎士がいるのなら、こちらも相応の者で対応するべきでしょう?」
とげとげとした男二人の言葉の応酬をよそに、ティナはさっさと外に出た。
二階建て以上の建物は、この集落にはないようだ。
ティナ達が泊まったのも、一間しかないような土壁の小さな家だ。
鬱蒼とした木々に囲まれ、点在する家々の間にも木があるものだから、遠くから見るとここに集落があることすらわからないだろう。
小さい子どもが目の前を駆けていき、ティナを見つけると、目を輝かせて寄ってきた。
「山の娘だ! ねぇ、僕たち、いつ、もっと広いところに行けるの?
母様とお話ししたんでしょう?
いつ、街に行けるようになるの?」
「え? は? 何の……」
「山の娘は昨日ここに到着したばかりでしょう? 村の中を君たちが案内してくれますか?」
戸惑うティナをよそに、ロランが子ども達を誘導する。
その子ども達に手を引かれ、ティナは小さな村の中を引きずり回された。
小さな広場。母の礼拝堂。
畑。果樹園。川。
一行を遠巻きに眺める大人達に、壮年の男達の姿は少ない。
女性と子ども、老年の男性が、あちこちで働いていた。
狭い世界。
疲れるほどもなく、すべてを見終わり、礼拝堂に戻ってくる。
昨夜、ティナが王都近くの岩山から転移させられてきたのが、この礼拝堂の中だったようだ。
ロランは子ども達を返し、ティナとサウロを礼拝堂に招いた。




