1章~幼少期~
1話~壁の外~
周りを見渡せばモンスターの群れ。自分の後ろには腰を抜かし動けない幼馴染。逃げようにも5歳の僕では腰を抜かした女の子を抱えて壁の向こう側にある村までは逃げられない。
「大丈夫だよ。僕が絶対、飛鳥を守るから。」
こんな言葉は所詮強がりでしかない。どうしてこんなことになってしまったんだろう。話は30分前にさかのぼる。
決して子供だけで壁の外に出たらいけないよ。お母さんに言われた言葉。
僕たちの住む村から直ぐの所に壁はあった。お母さんの聞かせてくれるお話で、昔のすごい人が魔物から身を守るために壁を作ったことは教えてもらっていた。そして、外には僕たちじゃ決して勝てない魔物がいることも。でも僕はその話を信じていなかった。
壁の近くで住んでいるけど、冒険者や、騎士団の人がいつも小さな動物を狩ってきていたから。確かに昔は魔物がいたかもしれないけど今はおとぎ話の中でしか出で来ないと思っていた。
きっかけなんてなかった。あえて言うなら、晴れていたから、村に月に一度しか来ない旅の商人が来る日だったから。そんな些細な理由だった。商人が村に来た時の騒ぎに乗じて村から抜け出した。その時に幼馴染である飛鳥に気づかれてしまい一緒に来てしまった。飛鳥はしきりに戻ろうと言っていたけど僕はその言葉を聞こうともしなかった。
村の外に出て、最初に感じたのは感動だった。壁の外には平野が広がっていた。視線の先には大きな湖があり、いままで見たこともないくらいに綺麗だった。その証拠にさっきまで、半泣きになりながら帰ろうとしていた飛鳥も外の景色に心奪われていた。今思えばこの時点で帰ればよかった。これ以上欲を出さずにこの綺麗な景色を見て満足すればよかったんだ。でもそんなことはできなかった。
僕は綺麗な湖に憬れた。何も考えずに湖に向かって飛鳥の手を引いて走り出した。飛鳥は引っ張られるままに何も言わずについてきた。
走り出して10分もしたころ魔物が現れた。最初は一匹だった。逃げれると思った。来た道を戻ろうと後ろを見ると後ろからくる魔物の姿が見えた。慌てて回りを見渡すと気づいた時にはすでにかこまれていた。飛鳥もそのことに気付くと腰を抜かしたように座り込んでしまった。