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#76 宣言

今週より新章開始です!

 秋口、ビースティア。

 懐かしき獣人国の土を、僕は数ヶ月ぶりに踏みしめる。目的地は巨大図書館だ。

 え?教師の仕事?僕は常勤じゃなくて非常勤だからね。最初こそやる事は多かったけど、学校側の事情が変わって暇が作れるようになったから、自由になったのさ。


「今さらここに何の用ですか?」

「ちょっと調べ物だな。学校の地下探索にいるだろうと思って」

「……地下?」

「ん?……あ、いや、こっちの話」

「……また危ない事しようとしてませんか?」

「大丈夫……だと思う。多分。きっと?…おそらく」

「…はぁ……何かあったら必ず言ってください」

「わかった」


 探している資料というのは、以前見つけた十二都市の秘密という本で、配置図は手元にあるのだが……肝心の天島という場所の詳細が無かった。


「……魔法学校に行って気が付いたんだ。それに、立ち入り禁止の学校地下…それに現在起動していない十三番目の転移部屋……僕の予想が正しければ、ここに謎を解く鍵があるはず」


 あるはず。そう、あるはずなのだ。だと言うのに、能力を使っても見当たらず関連書籍も見つからなかった。

 そう言う時は、図書館の本を管理している人に聞けば簡単に探してくれるのだが……。


「申し訳ありませんが、お探しの書籍には閲覧制限がかけられています」

「いやいや、そんなわけないだろ?この前来た時は普通に置いてあって閲覧制限も何も無かったぜ?」

「いえ、しかし……」


 ここまでくるともう水掛け論だ。互いの意見は交わる事がなく平行線で、 受付の獣人にそれ以上の権限は無く職務を遂行しているに過ぎない。それなら早く話を中断して上の人と交渉してやろうかと……そう思った時だった。


「そちらの殿方にはお出しして構いませんわ」


 入口の方からとんでもなく美人の獣人が現れて、受付の人に許可を下ろす。


「よ、よろしいのですか?」

「えぇ、何も問題はありません」

「……少々お待ちください」


 閲覧制限のかかった本を取りに行ったのだろう。受付の獣人が急ぎ足でその場を離れた。


「助かりました、ありがとうございます」

「……どうして他人行儀なのでしょう、ヒコボシ様」


 はて?この美人さんと面識はなかったはずだが?


「…すみません、以前どこかで……?」

「いやですわヒコボシ様、私ですよ。……もしかしてお忘れですか?」

「……すいません」


 美人の獣人さんはひどく悲しそうな顔をして首をかしげる。しかし本当に面識がないのだ。


「……私と一緒に一夜を過ごしたと言うのに?」

「…………んんんん!?」


 待って待って、意味がわからない。何だこれ、突然爆弾が投擲されました!?

 あとギャグマンガのうさぎ探偵みたいな目でこっち見ないで貰えませんかねぇ小子さぁん!?


「彦星さぁぁぁん?」

「まて、誤解だ小子!僕には心当たりが全然無い!」

「ひどいですわヒコボシ様。あの時は私の事を優しく抱きしめて下さいましたのに」

「ちょっと黙っててもらえませんかねぇ!?」

「彦星さんの浮気者。こうなったら拷問して他にも何か隠していないか調べなくては。ああでも彦星さんは嘘つきですから嘘しか言わないんですよねぇ?」

「不穏な単語が聞こえた気がするんですが!?目のハイライト消してこっち見るのやめて、怖い!」

「他にも詩的な言葉をかけてくださったりプロポーズしていただいたり」

「それは盛った!!今絶対に盛った!!話が面白くなりそうだから盛った!!!」

「……あ、あのぉ…」


 誰が浮気したとかしていないとか異端審問会が始まろうとした時、ちょうど受付の獣人が調べていた本を取って戻ってきた。


「残念ですわヒコボシ様。楽しい時間はもう終わってしまいましたのね」

「全く楽しく無いがなっ!本気でお前誰だよ!獣人の知り合いは多いが、お前みたいに綺麗な超絶美獣人は知らん!」

「それでは改めましてヒコボシ様。お久しぶりです、私は現ビースティア王女〈オリヒメ・アマノ〉ですわ」


 へぇ、王女様……ん?王女?オリヒメ?


「えっと……本当に?あの、オリヒメ?」

「はい。本当ですヒコボシ様……リメは、オトナの女性に見えますです?」

「……あ、あぁ…とても……なぁ小子?」

「は、はい……背も私より高いですし、礼儀作法もしっかりしてます。非の打ち所がないお姫様です」

「しかしどういう理屈なんだ?僕の知っているオリヒメはもっと子どもの姿だっただろ?」

「私たち獣人は人族とは違う成長の仕方を……いえ、とにかく本を借りて王城まで行きましょう」

「そ、そうだな」


 本を持ったままガチガチに緊張されても可哀想なだけだ。早くここから出よう。


 ▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


 久しぶりのビースティア王城。その客室に案内された僕たちは、ティーセットを囲んで一息つく。そこにはビースティア国王も参加していて。


「久しいなユーヒコ」

「あんたは変わってないな、獣王」

「変わる?」

「オリヒメがすげぇ美獣人になってて驚いた」

「そうだろうそうだろう!!」

「もう、やめてください。恥ずかしいです……」

「にしても、成長しすぎだろ。この前まで子どもの姿だったじゃねぇか」

「それについてですけれど、私たち獣人は生まれて十年経つと急激に成長します。とと様も、こう見えて五十年は生きてます」

「嘘だろ……絶対に三十代かと思ってた」

「我ら獣人は若い頃の姿が長いのだ。我もあと十年もすれば、一気にしわくちゃのジジイよ」


 さて、獣人成長の話はそれくらいにしていただいて。


「それでユーヒコ。貴様の今日の予定は何だ?まさかオリヒメを娶りに来たとかでは無かろうな?」

「いや、それについてはまだ先の話。本当は王城に来るのも、もっと後になってから……それこそ最終決戦まで来る予定では無かったんだがな」


 本当に今日は図書館だけに用があった。

 魔法学校を調べて、その結果を考慮し、全ての判断と作戦が立て終わって、準備が整い次第、こちらの戦力とともに来るつもりだった……のだが。


「……順番が逆になったな…まぁ、今のうちから言っておけば混乱しなくて済むのか?」

「一体、何の話だ?」

「悪い、こっちの……いや、そのうち全員の話になるな。せっかくだから、今のうちに話すぜ」


 ティーカップの中身をもう一口飲んで、ほう、と息を吐いた。


「僕は神を殺す」

ご愛読ありがとうございます。

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