#106 総集編3/4
件の武闘試合からしばらくして。
彦星はシンバ国王陛下の指示で死の泉を開拓する事になる。これが後の塩湖村となるのだが、その辺りに関しては彦星というよりタウロスの一件で知り合った地下囚人のエイビル達の功績であるために割愛。
泉に住まう精霊っぽい存在と和解し、塩を生産して各都市へと販売し始めた。この国を挙げてのプロジェクトは大成功に終わり、ある程度軌道に乗った段階で彦星は代表取締役から会長に就任する。安定した収入源を得た彦星は家を買うために出かけ、その道中で獣人の少女を購入した。
理由は、放って置けなかったら……と小子には話しているが、本心は作者でさえもあずかり知らぬところで。一説によれば少女性愛者とも。ここから、彦星は大きな分岐点に立たされる。それこそ、世界を救うか破滅へと導くかのごとく重要な分岐点に。
獣人の少女を『リメ』と呼び、懐かれているのを我が子のように愛でつつ生まれた場所へ帰す手続きを進めた。が、リメの出身国である『ビースティア』は人間領『イマニティア』で帝国と呼ばれ、一触即発の膠着状態になっており、期せずして彦星は虎の尾を踏む事となる。おかげで彦星と小子は指名手配犯扱い、賞金首狩りに追われ、止む無くイマニティアを逃げ出す事になった。変装や足の確保などを万年筆で済ませ、およそ半年かかる道程をわずか二週間で走破。途中、ビースティアからの迎えが来たが近道を教えてもらってお帰り頂く。
別の箇所では、タイガが新たな修行のためにビースティアの森を訪れており、そこで先祖に関する真実を知った。異能と呼ばれていた能力が『煌めき』という獣人特有の固有能力であり、訳あって引き継がれてきた事や今後タイガ達の力が大きく世界を揺るがすという未来予知まで、全て。この修行生活で自分の将来、妻に迎える少女と出会う事を知らされなかったのは、もはや運命に決定づけられていたからだと思う他に無い。
ビースティアに到着した彦星は、まず当初の『リメを産まれたところへ帰す』という目的を無事に果たし、小子は図書館へ。彦星自身は金を手に入れて占いの館へ。漠然と占わなければならないと、心の何処かでそう思い……そして思い出す。自分が何をすべきなのか、何をしてきたのか、何が起こるのかを。呼び覚まされた記憶は過去を遡り、物語の一話は忘れていた過去を思い出す。
二日ほど悩み、過去の自分と今の自分で討論を続けた結果、このまま出来るところまでやってみる事にした。いざとなればまた時間を巻き戻せばいいし、何より今の自分が小子との結婚生活を送りたいと願ったからだ。
オリヒメは、無事に王宮へとたどり着き、父親の獣王と再会。彦星を助けるように懇願するが聞く耳を持たれずにあしらわれた。そんな現実を変えたいと願ったオリヒメは期せずして星域と煌めきに目覚め、一瞬だけ獣王を凌駕。その後、星力欠乏症で倒れてしまい、起きたのは数日してからの事だった。
今を生きると決めた彦星は、まず狩をして日銭を稼ぎながら装備の強化を図る。未来から得た知識に基づき、新たな付与と魔力纏を習得。その夜に小子は吸血鬼の獣人を迎え入れ、ホログラムと名乗ったその獣人に、彦星と小子は煌めきと星域の伝授を請うたのだ。
そうする内に時間は数日過ぎ、彦星はビースティア王宮に呼び出される事になる。
訪れた彦星を、獣王は全力で叩き潰しにかかったが、手の内を知る彦星には奇襲など意味を成さなかった。
それでも諦めきれない獣王は正式な方法で彦星とオリヒメの結婚を賭けた勝負に出る。三日三晩に渡って開催される嫁取り鬼ごっこはビースティア全土で行われ、戦闘力を持たない一般市民も参加可能な催し物となった。
同時に、ビースティアの周囲では不穏な気配が蠢く。魔王因子を持つ三人の獣人が彦星を消そうと目論んでいたのだ。三日間の死闘を乗り越え、疲弊した所を襲われた彦星は、獣王や修行中だったタイガ達と協力して更なる戦いを繰り広げる。
変身能力を持つ『コン』はタイガとレオナ、時間逆行能力を持つ『タマ』はヴォリスと小子、事実改変能力を持つ『シャルルカン』は彦星と獣王が相手をし、それぞれ戦いの中で大きく成長を遂げたのだった。
ご愛読ありがとうございます。
面白ければ評価、感想、レビュー、ブクマ、ツイッターフォロー等、よろしくお願いします。