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101/114

#101 追いかける紙あれば救う神あり

「……い………きろ…起きてくれよ神様ァっ…」


 喚び声により、神は少しだけ意識を取り戻す。自決覚悟で魔力を受け渡し、もはや意識が消失するのも時間の問題なのだろうが。


「ようやく目ェ覚ましやがったか……!」

「…どう、なったのかな」

『安心しろや、勇者はそこでノビてらァ、ゲヒャヒャ!』

「そっかぁ……なんとか、勝てたんだね…」

「それでぇ?神様はどぉして死にたがっているのかなぁ?」

「…遠回しに……死ぬなって…言いたいのかな」


 ノーナは薄気味悪い笑顔を貼り付けているだけだった。これで心配しているらしい。


「手足の方から消えていっている。どうすれば止められるのだ」

「……助けようとしているのかい?」

『当たり前だろォ!?オメーも仲間だろうがァ!笑えねぇ事抜かすんじゃねぇよォ!』


 神は首を動かして自分の手足を確認する。その消え方を見て、少しだけ考えた。


「…今この体は、君達の信仰によって守られている……本当なら、魔力を失った時点で跡形も無く消えるはずなんだよ…」


 だけど、まだ足りない。彦星君の考えた作戦のおかげで、多少はマシになっているけれど。それでも、決定的な何かが足りない。


「……悪いんだけど、体…起こしてくれないかな」

「無理をするでない、とにかく今は安静に……」

「頼む。あの子を……勇者を見る必要が、あるんだ」

「仕方ないなぁ」


 ノーナとゲヒャ丸の協力によって、神はようやく上体を起こした。その目でしっかりとリンの様子を視認し、再びその体を横にする。


「ありがとう…神様を助けようとするのは、とてもいい事だと思う……でも、今はやめた方がいい」

「何故だ」

「世界は未だ、神を魔王と認識している。なれば、魔王が復活すればその対となる勇者は……」

「目を覚まして再戦…って事ぉ?」

『ゲヒャヒャヒャヒャ!なんだよそれ、超めんどくせェ!!』

「だから今は…静かに、消えるのを遅らせる程度がいい」

「どうすれば良いのだ?」


 神はゲヒャ丸をじっと見つめて、二の腕しか残っていない肩で指名した。


「ゲヒャ丸君……君に、頼りたい」

『アァン?』

「神と同等のを受け継ぎ、見事に馴染ませた君なら……神自身と連結し、魔力を借りられれば…少なくとも消滅までの時間は稼げる」

『結局はオレサマがいねぇと、何も出来ねぇのか!ゲヒャヒャヒャヒャ!けどよォ?オレサマは相棒と離れたら死ぬぜェ?』

「そうだ…つまり、この戦いが終わるまで、ザンキ君はここに張り付けになる……仲間を信頼し、送り出す必要があるんだ…その覚悟が、その価値が…果たしてあるのだろうか?」


 とどのつまり。神様は遠回しに見捨てろと。そう言っているのだと、ゲヒャ丸もザンキもノーナも理解する。理解した、上で。


「ノーナ殿、急いでヒコボシ殿を追いかけてほしい。そして、我はここで待つと……そう伝えてくれぬか」

「構わないけどぉ、お願いする為にはぁ、代償がいるよねぇ?君はどんな犠牲を支払うのかなぁ?」

「我の左目をやろう。実験材料にはちょうど良いだろう?」

「……代償とぉ、お願いがぁ、釣り合ってないよぉ?」

「お願いは言伝と、もう一つ……何があってもヒコボシ殿を裏切るな」

「うん、それなら良いよぉ」


 迷い無くノーナはザンキの左目をもぎ取ると、懐から保存用瓶を取り出して、その中に仕舞った。


「じゃあ」

「頼む」


 それだけ言うと、ノーナは小躍りしながら上を目指して行く。その姿をザンキは確認すると、魔力で傷口を止血して神様の方を向き直った。


「……良いのかい?」

「何がだ」

「…その目」

「構わん。それに、今更左目を失った所で大して支障などない。むしろ左腕がうるさく勝手に動くのだ、こちらの方が邪魔だろう」

『ちげぇ無ェ!ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!』


 それはそうなのだが……ここまで仲間を信頼しているのも、人間としては珍しい部類だな。


「さて……我はどうすれば良いのだ?」

「……呆れた狂信者だよ、君は」


 そう呟いて、神は少しだけ……安堵した。

ご愛読ありがとうございます


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