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えんでびっ!  作者: 灰月
8/15

その8 変人集結!

「あっちぃな〜」

「暑いです〜」

「暑いよ〜」


 夏休みのとある一日。天地荘202号室にいる俺達に、紫外線、湿気、猛暑が束となり、容赦無く襲い掛かってくる。

 勿論俺達に手向かう為の策など無く、ただただ体内から出る水分に対して、気化熱による体温低下の任務を課せる事しか出来ない。


 いや、厳密に言えば、対抗策は有る。この場所からクーラーの効いている場所に移動すればいいだけの事。いっその事、その策を実行に移せればどれだけ楽なのだろうか。

 しかしそれは出来ない。何故なら、夏は『汗をかかなければいけない季節』なのだ。

 熱中症に気をつけながら汗をかく。これが理想的な夏の過ごし方なのだ。


「龍ちゃ〜ん。イツデモテキオン君、使っちゃだめ〜?」

「若いんだから我慢しろっての」

「扇風機がガンジーに思えてくるです〜」


 お、レンはガンジーを知ってるのか。それなりに教養は有るみたいだな。


「ねぇ龍ちゃん。空ってどうして青いの〜?」


 と、窓にもたれ掛かりながら空を見ていたサヤが、唐突に聞いてきた。



「サヤはそんな事も分からないですか? サヤは勉強不足です〜」

「え、レンちゃんは分かるの?」

「当たり前です。朝飯さいさいです」


 朝飯前とおちゃのこさいさい、が混ざったんだな。

 まぁレンはガンジーを知ってたし。空が青い理由も分かるだろう。


「空が青いのは、オゾンが青いからです」

「オゾン?」


 こりゃまた頭の良い間違え方だな。海の青が反射して、とかじゃ無いんだな。


「違う違う。オゾンは確かに青いけれど、空が青い理由じゃ無い」

「そうだったですか?」

「そうだ。空が青い理由がオゾンじゃ無いなら、何だと思う?」


 この質問に二人は腕を組んで考え込み出した。そしてサヤが手を挙げる。


「はい、空が青い理由は?」


「あんぱん食べた〜い」


 ………。


バチーン!!!


「ふぎゃっ!!!」


 俺は例のデコピンを、サヤに喰らわせた。ふざけた生徒に対しては容赦無く体罰を行う。それが俺の教育方針だ。


「分かったです」

「はい、レン」

「昔昔、ある所に二人の男女がいたです…」



…。


……。


………。



 二人の男女の名は、アンドレとキャサリン。

 二人はお互いをとても深く愛し、ある時は湖で水面を眺め、またある時は丘に登り街を眺め。

 二人は時間さえあれば、常に一緒にいたです。


 しかし、現実とは残酷です。その残酷な現実は、愛し合っている二人に対してでも、容赦無く襲い掛かるです。


「キャサリン! お前はまたあの男と会っていたのか!!!」

「………」

「お前はいずれこの国を担う存在なんだぞ!!! 分かってるのか!!!」

「はい…。存じております…」

「それなら何故、あのような平民と愛し合っているのだ!!!」



 そうです。二人の恋は、許されざる恋だったです。

 キャサリンは国王の一人娘。アンドレはただの一平民。勿論この恋を、国王が許す筈もありませんです。そして国王はキャサリンを城から出すまいと、常に衛兵に見張らせたです。

 国王に軟禁されてしまったキャサリン。そのキャサリンはもう二度とアンドレに会えない。そう思ったです。



…。


……。


………。



「だから空は青いです」

「そんな事より、その後の二人はどうなったの?」

「ああ、俺も気になる。ちなみに不正解な」

「続きは請うご期待です」


 くぅ〜。続きが気になるぜ〜。


「あ、そうそう。空が青い理由だけど、それはだな…」


 二人とも正解にカスりもしなかったので、俺は太陽光は七つの色を含む事から説明をした。馬鹿な俺が何故分かるかって? 実は丁度昨日授業でやってたんだよね。


「虹が七色なのもそれが理由なんだ。それで空が青い理由だけど、その太陽光が空気中の酸素分子や窒素分子にぶつかって散乱し…」

「産卵? 太陽も子供を作るんだね〜」

「その子が力士になったら山太陽です〜」


 あぁ〜はいはい! 詰まらない話をしてすいませんでしたね〜!


バタンッ


「ただいまぁ…」


 と、その時、アパートのドアが閉まる音と共に、女性の声が聞こえて来た。この声は間違いない。あの人だ…。


「誰が来たのかな。見に行こうよ」

「行くです」


 二人は早速、部屋を出て階段を下りて行った。俺も二人に遅れて、階段を下りる。


 すると、馬鹿二匹がどこから持ち出したのか分からないが、アパートに入って来た女性にエアガンを向けていた。


「このサヤがいる限り、このアパートには傷一つ付けさせないぞ! 不法侵入者め!」

「覚悟するです!」


 何やってんのこいつら。不法侵入者は、ただいま。なんて言わねーよ。

 とにかく俺はこの馬鹿を無視し、ドアの入口に立っていた人物に言った。


「お帰りナナ姉さん」

「久しぶりね龍ちゃん」


 俺に久しぶり。と言った、妖艶な雰囲気を放つ女性。やはりアパートに入って来たのはナナ姉だった。


「やっとナナ姉が帰って来たのか!?」


ドタドタ


 と、俺の声が聞こえたのだろうか。二階から鈴音さんが下りて来た。


「おかえり! 今まで何やってたんだナナ姉!?」

「あら、鈴音。ただいま。それで……」


 ナナ姉は天使と悪魔をじろじろ見つめた。


「何?」

「何です?」


「このカワイ娘ちゃん達はどちら様かしら?」


…。


……。


………。


「クフフフ…。天使と悪魔。とっても興味深いわねぇ〜。ンフフフ…」


 夕食の時間。俺達住人は久しぶりに全員揃った。サヤとレンが来てからは初めての事だ。そして俺はナナ姉に、二人は天使と悪魔。と、紹介した。


「名前はサヤとレン。サヤはとびきりアホで、レンはとびきり腹黒い。こんな感じ」

「ンフフフ…。アホに腹黒。いいわよ〜。とってもいいわよ〜」

「こ、恐いよ鈴っち…」

「恐いです静華…」


 ナナ姉が放つ異様な雰囲気に、二人はたじろいでいた。


「そうそう。まだ私の名前を紹介してなかったわね」


 紹介しよう。彼女はこのアパートで最も変人な、ナナ姉こと、諸星奈々子。もろぼしななこ、だ。鈴音さんの一つ上で、大学二年生。オカルトが大好きな、超変態大学生だ。

 顔、スタイル共に妖艶で、大人の色気を放つナナ姉は、とても男性にモテるのだが、この性格が災いし−−。


「龍ちゃんには新しい薬の実験台になってもらおうかな〜。クフフ…」


 マジすいません。マジすいません。マジすいません。


「それじゃあ全員揃った所で、改めて自己紹介するわね〜。私は安芸静華。このアパートの大家さんよ〜♪」

「アタシは音無鈴音。大学生だ」

「そんで俺が相良龍之丞だ」

「サヤで〜す。職業は天使と、とある小説のモデルをやってま〜す」

「同じくレンです。職業は悪魔と、とある駄目駄目小説のモデルをやってるです」


 それを言わないでぇぇぇー!!!


「よろしく。サヤちゃん、レンちゃん」


 言ってナナ姉は、スッ。と手を差し出した。どうやら握手を求めているようだ。

 サヤがそれに応え、手を差し出した。


「よろしくね。ナナ」


 が−−。


カシャン


「えっ!?」


 ナナ姉がサヤに手錠をかけた。


「天使の解剖ができるなんて、なんてラッキーなのかしら〜」

「私を解剖〜!?」


 ナナ姉は天使を解剖する気か!!!


「サヤを解剖なんてさせないですー!」


 サヤを抱えたまま部屋に行こうとするナナ姉に、レンは勇敢にも立ちはだかった。


「いくらで解剖させてくれるのかしらっ?」


「そうですね…。サヤ程の天使になると、お値段は弾むですよ」


 お前は友達を売るのか!?


カタカタ



チーン!


「税込み百円です」


「安すぎだよレンちゃ〜ん!」


 うーん…。いや、妥当だろ…。


「そう。じゃあ十回払いでお願いねっ」

「分割金利手数料はジャパネットアクマが負担しますです。だから月十円です」

「はいっ十円」

「まいどありです」


 商談が成立した。


「これで十ヵ月後にガチャポンができるです…。フヒヒヒヒ〜」


 ガチャポンの為に友達売ったの!? 最低だなこいつ!


「待ちなナナ姉。レンちゃんが許してもアタシが許さないよ」


 と、今度は鈴音さんが、ナナ姉に立ちはだかった。


「そう…。調度いいわ。貴女とはいずれ決着をつけようと思ってたの」

「アタシもさ」


 ナナ姉は床にサヤを置いた。そして睨み合う二人。

 −−最初に動いたのは鈴音さん。


「はぁっ! 奥義・皇帝掌!」


 鈴音さんは下段キックで相手の体制を崩した瞬間、両手の手の平で相手の水月を狙う奥義、皇帝掌を繰り出した。


「甘いわっ!」


 しかしナナ姉はジーパンの右ポケットから鉄の盾を出し、これを防ぐ。

 因みに、ナナ姉は存在そのものが四次元なので、あまりツッコまないで欲しい。


「相変わらず、硬い盾だ…」

「貴女も、素晴らしい奥義ね」


 正直この二人は人間離れしている。今さっきの攻防も目で追うのがやっと。反応なんてとてもじゃないけど出来っこない。


「今度はこっちから行くわよっ!」


 言ってナナ姉がポケットに手を入れた。そして取り出したのが−−。


「エクスカリバ〜」


 ナナ姉がのぶ代の声と共に取り出した物。それは古より伝りし秘剣、エクスカリバーだった。一体何の剣なのかよく分からないが、そこも深くツッコまないで欲しい。とにかく凄い剣なのだ。


「行くわよっ。奈々子流剣術奥義!」


 奈々子流剣術なんて初めて聞いたのだが、そこはあまり深くツッコまないで欲しい。とにかく、今閃いた剣術なのだ。


「龍一門!」



 なんかよく分からないが、とにかく斬撃が飛んで、衝撃波となった。そしてなんかよく分からないが、鈴音さんはその見えない衝撃波を交わした。

 何故斬撃を飛ばせるか。何故見えない斬撃を交わせるか。という事には、あまり深くツッコまないで欲しい。二人は超人なのだ。


 しかし、その超人にも予想だにしなかった出来事が起きた。



パリーン!!!


 なんと鈴音さんが飛ぶ斬撃を交わした事によって、アパートの花瓶が割れてしまった。

 二人は驚いた顔をして目を大きく見開き、割れた花瓶を見た。


 そして−−。


「鈴音…」

「勝負はおあずけか…」


 そしてその二人と俺は、とある人物を同時に見た。


「あなた達、花瓶を割ったわね…?」


 ま、マズイ!!!


「おい龍之丞! 囮になってくれ!」

「龍ちゃん。あなたをしんがりに任命するわ」

「ちょっ! 二人共逃げるのか!?」

「「さいならー」」


「よく分からないけど、私も逃げるですー」

「私も〜」


 二人と二匹はアパートから退避してしまった。

 逃げなきゃマズイ。俺もそう思い、アパートから退避しようとしたが−−。


ガシィィ!!!


 何者かに肩を掴まれる。それを振り払おうとしても、全くびくともしない。

 俺は恐る恐る肩を掴んでいる人物を見た。


「あの…。やったのは鈴音さんとナナ姉であってですね…。俺は何もしてない…」


「問答無用じゃぁぁぁい!!!」


ドァァァン!!!


「ンギャァァァ!!!」




「ねぇ鈴っち。何で逃げたの?」

「静華さんがちょっとね…」

「静華がどうしたです?」

「静華はキレると鬼になって、見境なく人を襲うのよ」

「「鬼?」」

「そう。あれは、対峙してみないと分からない」

「確実に言える事は、静華を怒らせちゃ駄目って事。二人とも気をつけるのよ」

「「はーい」」



「おんどりゃあぁぁぁ!!!」


ズォッコーン!!!ドガガガァァァン!!!


「ごめんなさい静華さーん!!!」


 誰か助けてぇぇぇー!!!


 肋骨を数本もっていかれた龍之丞だったとさ。


−−続く。

レッツスタディーのコーナー


サヤ『ねぇねぇ〜。しんがりって何〜?』

鈴音『お姉さんが教えてあげ−−』

奈々子『殿しんがりは、負け戦などの時に敗走する総大将を守る為、敵の追撃を阻止する役目よ』

サヤ『なるへそ〜』

鈴音『うぅ…。アタシがサヤちゃんに教えようとしたのに…』

レン『じゃあ空が青い理由は何、です?』

鈴音『お姉さんが教え−−』

奈々子『太陽の光が空気中にある酸素分子や窒素分子にぶつかると、光が散乱するのよ。散乱は、太陽光が含む七色の光がそれぞれの色に散る。って言ったら分かりやすいかしら』

龍之丞『青っぽい色は散乱されやすく、赤っぽい色は散乱されにくい。昼間は太陽の光が大気中を通過する距離が短いよな? だから、太陽光が厚い大気の層を通り抜ける時に、散らされやすい青っぽい色の光が散らされて、目に見えるんだ』

奈々子『逆に朝・夕方になると、太陽の光が空気中を通過する距離が長くなるわ。だから空の色は、散らされにくい、赤っぽい色になるの。他の色は早くに分散し、衰退するから見えなくなっちゃうのよ』

サヤ『う〜。よく分かんないよ〜』

龍之丞『うーん。教える為には人の何倍も理解しなきゃいけないって事か…』

鈴音『アタシだったら上手に説明でき−−』

静華『字数が足りないから今回はここまでね♪』


鈴音『静華さんまで…』


全員『次回をお楽しみに!』

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