その3 龍之丞の災難
「俺のプリンが無ーい!!!」
食べようと思って、取っておいたプリンがぁぁぁ!!!
「ごめん龍ちゃん。食べちった♪」
「サヤァァァ!!! お前かぁぁぁ!!!」
「じゃあ返してあげる〜」
返す? サヤはどうやってプリンを返…指を口の中に入れやがったぁぁぁ!!!
「ウプッ…。オエッ…」
「止めろぉぉぉ!!!」
俺は間一髪の所でサヤを止めた。
「食べちった。ならいいから! 俺、プリン諦めるから!」
「龍ちゃん優し〜」
ちくしょー。そんな満面の笑みを浮かべられたら、怒るに怒れね〜じゃんかよ。
「だから静華さんの家で寝ろって言ったんだ! レンを見習え!」
「だって〜」
「だってもヘチマもありません!」
「うぅ…。だって龍ちゃんと一緒に居たかったんだもん…」
ズキューン!!!
今、俺の体を貫いた物は何だ?
恋?
…ってオイ! 俺には白河さんっていう心に決めた人が居るっての!
「龍ちゃんは一人ノリツッコミができるんだ〜」
「へへっ。まあな」
サヤはニコニコ顔で言う。こうやって顔をよく見てみると可愛いんだけどな。服装が全てを台なしにしてるのは否めない。
「いや〜。それにしても、しずっちが信じてくれてよかったよ〜」
「まぁ、行動しやすくなったのは確かだよな」
先日の夕食時、静華さんに天使と悪魔の事を全て話したのだが、静華さんはいとも簡単に信じてしまったのだ。それは、あの人の性格なら頷ける事なのだが…。
そして静華さんに信じてもらえたレンは、テメーの部屋は臭いです。私は静華の家で寝るです。と…。
あんにゃろー!!!
「なぁサヤ。俺の部屋って臭いか?」
「臭いって言うか、龍ちゃんの臭いがするよ〜。私はこの臭い好きだよ〜」
天使はやっぱり天使なんだなぁ〜♪
バッガーン!
「おはようです」
と、例の可愛くない悪魔が俺の部屋に入ってきた。扉を開けただけとは思えない音と共に。
「…って、扉を壊したのかよ!!!」
「開け方が分からなかったから、蹴飛ばしてやったです。テメーは扉まで忌ま忌ましいです」
「引けよ!!! どうして、押して駄目なら蹴り飛ばすんだよ!!! 引けよ!!!」
「やかましいです。黙れです」
「コノヤロー!!! 扉の敵討ちだぁぁぁ!!!」
ボカスカボカスカ
これは扉のぶん!これはクリリンのぶん!これはヤムチャの…。あれ、サヤが喧嘩を止めないぞ…。
「ポテチ美味しかった〜」
「俺のポテチィィィ!!!」
「龍ちゃんのだったの!?」
「あったりめーだろうが!!! ここは俺の家だぞ!!! 他人のポテチを置いとく訳がねーだろ!!!」
「そっか。じゃあ返すね〜。ウプッ…オェッ」
「ギャー!!!」
もう何なのこいつはー! 俺はもう疲れちゃったよー!
「たかだかポチごときでギャーギャーうるさいです」
「ポチじゃなくてポテチですぅ〜。ポチじゃ犬になっちゃいますぅ〜。お前は馬鹿悪魔ですかぁ〜」
「コンニャローですー!!!」
ボカスカボカスカ
この馬鹿悪魔!馬鹿悪魔!
「ごはんですよ〜♪」
と、俺達が喧嘩をしている最中、一階から静華さんの美しい声が聞こえてきた。
「やっほ〜い」
「今行くですー」
二人は獲物を追い掛け始めた肉食獣のように、部屋を出ていく。
扉を開けたり閉めたりする音は勿論聞こえない。悪魔が扉を壊したから。
悪魔って本当に悪魔なんですね…。
「はぁ…。修理か…」
貴重な夏休みの一日を、扉の修理に費やさなければならなくなった。
頼むから出て行ってくれないかなぁ…。