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えんでびっ!  作者: 灰月
14/15

その14 料理は愛情

「う〜。体がだるい〜」

「あら〜」


 静華さんが体温計を見るなり、困った表情を見せた。そんなに酷いのかな?


「三十九度近くあるわ〜。今日は学校お休みね〜」


 そんなにあるのか。道理で寒気はするし、鼻水止まらないし、目眩がする訳だ。


「しずっち、私に何か手伝える事無い?」


 サヤが言った。なんて健気な天使なんだろう。それに引き換え奴らは…。


「龍之丞風邪引いてやんの〜! バーカ!」

「本当に馬鹿ね〜。愚の骨頂だわ〜」

「夕飯は赤飯です〜!」


 バーカとか、鈴音さんが一番腹立つなっ!


「体がダルいからツッコむ気力さえ無いよ」

「おお龍之丞よ。ツッコむ気力さえ無いとは情けない」

「本当に馬鹿ね〜。愚の骨頂だわ〜」

「寿退社です〜!」


 ああもう、腹立つ人ばっかり…。


「しずっち〜。言われた通り氷水を持ってき…ひゃぁっ!」


ザッパーン!






「あちゃ〜。やっちった〜」



 冷ってぇぇぇー!!!

 やっちったじゃねーぞコノヤロー!!!


「アハハハハ! それで少しはアラスカの人達の気持ちを知るんだな!」

「本当に馬鹿ね〜。愚の骨頂だわ〜」

「ゴ〇ラがついに東大挑戦です〜!」


 ツッコミたいけどそれどころじゃねぇよ!!!


 俺はサヤが用意してくれた、濡れてない服に着替えた。なんか熱が上がったような気がする…。


「あら〜。四十度もあるわ〜」

「嘘!? 本当ですか!?」


 四十度ってやばくないか!? 病院行きだぞ!?


「…となると、残りの角度の和は百四十度ね〜」


 三角形の話かよ!!! つーかこの状況で三角形の角度を調べんなよ!!!


「龍ちゃん。安静にしないと悪化するよ〜」

「原因はお前達なんですけどね!」


「アハハハハ! バーカバーカ!」

「本当に馬鹿ね。愚の骨頂だわ〜」

「豆腐を踏んで滑ってコンクリの角に頭をぶつけてしまえです〜!」


「「「アハハハハ〜!」」」


 くそったれ三人組がぁぁぁ!!!


「龍ちゃん。学校休むって連絡しないの?」

「あ、そっか。ヒロに連絡……」


 …って、それはヤバくないか?

 でもヒッポは馬鹿だから日本語通じないんだよな〜。ヒロしか無いか…。


プルルルル…


「もしもしヒロ?」

『おはようございます。御主人様』


 無視無視無視無視。


「今日三十九度近い熱が出たから休むな。豊岡に伝えておいて」

『じゃあ残りの二角の和は百四十一度だね?』


 この野郎…。隠しカメラでも設置してんのか?


『龍が見る景色は僕にも見える。ただそれだけの事さ』


 こいつってあのエロ神より凄いんじゃねえか?


「とにかく風邪引いたから休むよ。じゃあね」

『肋骨六本に両腕両足だね? 分かった。伝えておくよ』

「おい! 俺は骨折なん……」


 切られた。あいつは何故ああなんだろうか…。

 と、サヤが立ち上がった。


「よし、それなら私が龍ちゃんの為にお粥を作ってあげるっ!」

「ん? サヤって料理できたのか?」


 意外と料理が出来る天使ランキング第一位なのか? それはどう考えても無理じゃないか?


「大丈夫。料理で一番重要なのは愛情だよっ」

「ちょっと待った! 料理は愛情だけでどうにかなる訳じゃないぞ!」

「そうなの?」


 こいつ…。料理は愛情で全てが片付くと思ってたのか…。


「そもそも料理ってのは、心技体。三つの要素が一つになる−−」

「−−よく分かんないや。とにかく作ってくるね〜」

「おい待て!」


 が、そんな俺の声はサヤに届かず、サヤはぷかぷか浮きながら部屋を出ていってしまった。

 静華さんに、サヤを手伝ってくれますか。と言っても、静華さんはまだ三角形と睨めっこをしていた。

 残りの三人は俺に使うべき《氷水漬けタオル》を、気持ちいー。とか言いながら順番に額に当てていた。


 しかし、サヤが作ろうとしてんのはお粥だろ? 最悪、水にご飯を入れて温めれば、味無し雑炊になるだけだからなぁ…。


ギャオース!!!



 何で恐竜の声がすんの?


「龍ちゃんの為に〜♪ 美味しいお粥を〜♪ 愛情たっぷたっぷたっぷたっぷ〜♪」


 なんか歌を歌い始めたし。

 …愛情たっぷたっぷたっぷたっぷ?


「あっどぶねずみ! 鍋に入っちゃ駄目だよ!」


 うわわわわ〜! 頑張れサヤ!絶対にどぶねずみを中に入れるなよ!






「まっいっか。栄養になるよね」


 守り抜けよぉぉぉー!!!


「フフフフ…」


 今度は笑い出したぞ!? 頼むから変な事すんなよ!


「フフフフぇっくょーい!!!」


 くしゃみかよ!!!


「あちゃ〜。お粥に唾かかっちゃった〜。まぁこれも栄養栄養♪」


 手で抑えてくれよぉぉぉー!!! そんなの栄養でも何でもねーよぉぉぉー!!!


「よし、ここで隠し味投入だよ〜」


 既に、どぶねずみとお前の唾っつう隠し味が入ってるんですけど。その他に何か入れるんですか?




「あんパン投入〜」


 お前お粥作る気無いだろ!!!


「完成〜。龍ちゃ〜ん! 私の愛情がこもったお粥が出来たよ〜!」


 サヤが完成したお粥を、部屋に持ってきた。そして俺の布団の側に置く。

 あれ? スプーンは?


「私が食べさせてあげるね。だから起きて龍ちゃん」

「サヤ…。お前……」


 サヤ…。なんだかんだ言っても、お前は本当に心優しいよ。

 俺の為に一生懸命、やったこと無い料理に取り組んでくれて、自分は汗だくじゃないか。


「美味しく無かったらごめんね龍ちゃん…」

「いや、サヤがこんなに頑張って作ってくれたお粥だ。美味しくない筈が無いだろ? それに美味しくなくても、全部食べるからな」


 おいおい、泣くなよサヤ。俺まで泣けてくるじゃねーか。


「龍ちゃ〜ん。大好きだよ〜」

「ありがとうな、サヤ。嬉しいよ」

「うんっ! それじゃ龍ちゃん、お口を開けてっ!」

「あーん」


 やっぱり料理は愛情というのは本当なのかもしれない。



 サヤが作ったお粥は、見た目も臭いも普通だったから−−。



パクッ






「サヤ……」

「美味しかった?」






「これは駄目……ウォェェェェェー!!!!!!!!!」




−−続く。

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