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えんでびっ!  作者: 灰月
12/15

その12 生まれ変わった二人

「ふぁ〜あ〜」


 六時間目は眠い。五時間目に眠らなかった歪みが、ここにきて顕著に現れる。


 モテたいな。モテなくてもいいから、白河さんと……はぁ…。


 顔はイマイチ、運動神経もイマイチ、頭もイマイチ。唯一の特技は無い。これと言って無い。

 我ながら、本当に残念な男。……ってオイ!!! 自虐しすぎだよ!!!

 でも本当の事なんだよなぁ……。


「龍、僕の話を聞いてくれないか?」

「んー。どうしたヒロー?」


 今は現国。右隣りにいるヒロが俺に話し掛けてきた。


「実は昨日さ、部屋の中で作ってた米が、部屋の中で飼ってたイナゴに食われちゃったんだ」

「そりゃイナゴは食うよなぁ…。つーか家で米を作ってんの?」


「でね、仕返しにバル〇ンを撒いたら、家で飼ってたイナゴだけじゃなくて、家で飼ってたカブトガニまで死んじゃって……」

「まぁそりゃバル〇ンだからな。つーかバル〇ン撒かずに直接対決すりゃいいじゃん」


「話はそれだけじゃ無いんだ。そのバル〇ンの煙が家中に充満しちゃって…。トモミが…」


 え?


「うぅっ……優しい子だったのに…」

「ひ、ヒロ…。トモミって…お前の…」



「うん。生命力は虫一倍有るゴキブリだったよ……」


 あぁ〜もう時間の無駄無駄!!!


「そうだ龍。白河さんとはお近づきになれたの?」

「……いや、全く」


 俺の左斜め前。窓側の席に座っている白河さんを見た。


 可愛いなぁ…。二重でぱっちりとした目。セミロングの綺麗な黒髪。白い、ゆで卵のように柔らかそうな肌。全てがストライクだ。


「そうなんだ。でも、いつまでもモタモタしてられないよ」

「そうなんだよなぁ…」


 クラス…いや、学校のマドンナである白河さん。当然ライバルだらけだ。

 その中でも最大にして最悪のライバルが、白河さんの右隣りに座る男。


「三杉君、この漢字何て読むの?」

「あ、これ? これはね……」


 テメェー! 漢字を教えるだけなのに近寄り過ぎだぁぁぁ!!!


「ありがとう三杉君。さすが三杉君だね」

「昨日予習しといて良かったよ」


 チクショー! 何が、昨日予習しといて良かったよ。だよ!


 そう、俺の最大にして最悪のライバル。それは彼、三杉健太。

 学校一のイケメンで、入学当時から女子達注目の的。頭も良く、テストの順位は学年一位。運動神経も抜群で、一年生ながらサッカー部のレギュラーだ。因みにサッカー部は一昨年全国大会に出場する程の名門。そのサッカー部でレギュラーなのだから、相当上手いんだろうな。

 五月くらいだったか。この席になってからあの二人は急激に仲良くなった。天才イケメンと、完璧美少女。そんな二人のお似合いぶりに周りのクラスメート達は、あの二人は似合ってるよね。とか、文化祭のベストカップル賞は二人で決まりだよな。などなど、クラスメート公認カップルとなってしまった。

 しかし、そんなクラスメート達に三杉はこう言う。


『黙れよ! もっと白河さんの気持ちを考えろ!』



 こりゃ勝てないよなぁ…。


「龍、諦めたらそこでゲームセットだよ」


「そう言われてもなぁ…。俺みたいなイマイチ人間が、あんな奴に勝てる訳が無いよ…」


「確かに龍は顔もイマイチだし、頭も、運動神経もイマイチだ。でも、天才かイマイチか又々別の人間か。それをを選ぶのは白河さんさ。龍じゃ無ければクラスメートでも無い。問題は白河さんが誰を選ぶか、だよ。まぁ十中八九、三杉だと思うけど」

「だよな…。選ぶのは白河さ…ん………ん? 十中八九、三杉?」


 結局三杉じゃねーか!!!


「はぁ……」


 俺は溜め息をつき、窓の外を見た。左隣りは今日も休み。


 目に入る青い空、白い雲。耳に入るセミの声。もちろん黒板と先生の声では無い。


「俺って何が出来るんだろうな……」


 家を飛び出して、一人暮しをして、変わろうと思った。昔の俺を変えようと思った。

 でも結局変わったのは窓の向こうに天使と悪魔……。


「サヤ!? レン!?」


「どうしたの龍?」

「あ…」


「龍之丞、お前は何言っとるんだ?」


 しまった…。授業中に大声出しちゃった…。


「すいません先生…」


 現国の先生は集中しろ。と言って、再び授業を始めた。


 俺は再び窓を見たが、サヤとレンは居ない。

 幻覚だったのかな…。確かにあいつらが見えたんだけどなぁ…。


「最近疲れてるからかな…」

「龍、保険会社に相談したらどうだい?」

「自動車保険に加入したら〜?」

「火災保険にも加入すればいいです」

「あのなヒロ。それを言うなら保険室に行け。だろ? サヤ、レン。自動車も火災も関係ないだろ?」

「そっか。ごめんね龍」

「ごめんね龍ちゃん」

「テメーには謝らないです!」


 あ゛ぁ? レンの野郎は学校でも生意………。


「来ちゃった♪」

「暇だったから来てやったです」






「ギャァァァー!!!!!!」



…。


……。


………。


「マジで天使と悪魔なのか!?」

「キャー可愛い〜」

「天使も悪魔もやっぱり羽が付いてるんだな!」


 放課後。やはりこいつらの周りにはクラスメートが集まって来る。そして二人は羽が付いただけじゃなく、服装も変わっていた。

 サヤは白鳥のように白く小さい羽を付けている。服は白い布ではなく、白くモコモコしたビキニ姿。頭には天使の輪が付いている。

 レンの服装はギザギザしたビキニ。ギザギザの尻尾に、頭には二本の角、角と言ってもサイのような固い角ではなく、犬の尻尾のような角。そして背中には翼。これらの色は全て黒っぽい紫色で統一されている。


「サヤ、レン。ちょっと来てくれ」


 言って俺は二匹…もう二人でいいや。その二人を屋上へと連れて来た。


「その格好はどうした?」

「よくぞ聞いてくれましたっ!」


 またデジャヴだよ…。


「実は今日、エロ親父から電話があったんだ。しかもテレビ電話でね」


 エロジジイ=神様ね。


「何て言ってたんだ?」

「うん。それはね−−」




「何エロジジイ?」

「用件はさっさと済ませろです」


『今回は真面目な話じゃ。少し黙っておれ』

「真面目な話?」


『そうじゃ。真面目な話じゃ』

「で、内容は何、です?」



『結論から言うと、お前達二人を正式な天使と悪魔に任命する』

「えー!?」

「どうしてです!?」


『うむ。これは閻魔と話し合った結果でな。お前達二人はそっちの世界で学んだ方がいいのではないか。という事じゃ』

「何で何で?」


『うむ。何故お前らが地上に降りてしまったか。その原因は分からない。じゃが、これは何かの運命なのではないか。そう思ったからじゃ』

「「運命?」」


『そう。運命じゃ。とにかく、お前達天使の能力、悪魔の能力で、これから龍之丞君を助けてあげるのじゃよ』

「うん。分かったよ〜」

「あのヤローを不幸にしてやるです」


『レン、やり過ぎは…分かっておるな? 閻魔のお尻ペンペンじゃぞ?』

「うっ…」


『そうじゃそうじゃ。天使と悪魔が同時に憑く。これを何て言うか知っとるか?』

「知らないよ〜」


『それはじゃな−−』




「えんでび?」

「そう。エンジェルとデビルの頭二文字を取ったんだって」

「ふーん…」


 えんでび、か…。


「と、いうことで。よろしくね龍ちゃん♪」

「これからお前を不幸にしてやるです〜。フヒヒヒヒ〜」


 今まで充分不幸にさせてもらったけどな!!!


「おーい龍之丞ー!」

「龍ー!」


 ん、ヒロにヒッポじゃん。どうしたんだろう。


「豊岡が呼んでるYO。その二人もだYO」


 豊岡が!? つーかこいつらが一緒って事は、怒られる可能性が大きいだろ…。

 豊岡は職員室で呼んでるとの事。俺達三人は早速職員室へと向かった。


コンコン


「失礼します」


 言って俺は職員室を見渡し…あ、豊岡がいたぞ。


「おう龍之丞! 来たな!」

「はい、こいつらも連れて来ました。それで、用件とは?」

「校長からの伝言だ!」



…。


……。


………。



「ただいま〜」

「ただいまです〜」

「お帰りなさ〜い♪」


 俺達がアパートに入ると、静華さんがリビングでテレビを見ていた。俺は靴を脱ぐが、こいつら二人は浮いているから、そんなのお構いなしだ。因みに通行人は二人を見て驚いていた。そりゃ浮いてるんですものね。驚くなって言う方が無理だよ。


「学校はどうだったかしら〜?」

「うん! また何時でも好きな時に来ていいって!」

「学校楽しかったです〜」

「そう、よかったわね♪」


 良かねーよ…。最悪だよ…。

 サヤが言った、何時でも出入りして良し。あの校長が二人の出入りを許可しやがったのだ。だって、天使と悪魔が出入りする学校って面白いじゃ〜ん。とか、アホかあの校長は。


「…って思い出したぁぁぁ!!!」


 俺が保護者って事、白河さんに知られちゃったかな!? 今までそれ所じゃなかったから忘れてたよ!


ポンポン


 誰だ俺の肩叩いたのは…。


「龍。諦めが肝心だよ」


 何でヒロがいるんだよぉぉぉ!!!

いよいよ次回からえんでび本編?開始です。

今後とも宜しくお願いいたしますm(__)m


灰月でした

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