表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
えんでびっ!  作者: 灰月
1/15

その1 えんでびっ!

「ナイスシュート!」



 夏。辺りにはアブラゼミ、ミンミンゼミなどの蝉が不協和音を奏でている。

 そんな暑い日の午後。俺は食後の運動としていつもの散歩コースを歩く。河川敷では少年達がサッカーをしていて、見ているだけで暑苦しくなってくる。少年達と言っても、俺と二つ三つしか違わない、中学生なんだけどね…。


「あっちーなー」


 立っている事さえかったるくなる程の暑さ。いっそのこと、図書館やコンビニなどに逃げてしまいたいのだが、一度入ると出る時が大変なので我慢をする。

 俺は相良家の跡取り。こんな暑さに屈する訳にはいかないんだ。


 俺は負けないぞ!!!



「やっぱコンビニ行こっと」



 数秒で心が折れた。


 いや、だって暑いんだもん。仕方ないじゃん。


「いっその事、雪とか降ってくればいいのにな」


 この相良家に代々伝わる、雨乞いならぬ雪乞いの儀式を始める時が来たようだな。


 俺は空に手をかざして、呪文を唱えた。


「アンダーミドルーミノルハキレジー。クラスノマドンナ、シラカワサーン!!! アンダーミドルーミノルハミズムシー。クラスノマドンナ、シラカワサーン!!!」


 俺は必死に天を仰ぎながら、呪文を唱える。


 ちなみに相良家代々伝わる、と言ったが、相良はべつに神社の家系でも何でもない。もちろんこの呪文だってインチキ。


 しかし、まさかこの適当な呪文が、俺の平凡で在り来りな人生をがらっと変えてしまうとは、誰が予想できただろうか。



「……スキデスシラカワサーン!!!」


 ふぅ。と一息つく。

 それにしても、呪文を唱えていたはずが、いつの間にか白河さんへの告白になってしまった…。


キョロキョロ


 辺りを見回したが、誰にも聞かれていないようだった。

 もしも今のをクラス中に聞かれてみろ、男子からは冷やかしの嵐だ。顔はイマイチ。運動神経はゼロ。性格は普通。性格が普通ってのも変な言い方だが、それでも俺は普通なのだ。そんな駄目駄目人間ゴンが、絶世の美女である白河さんと付き合えるはずが無いってな。

 だから、クラス中にこの事が知れ渡るのがとても怖いんだよな。


「あぁあ〜。やっぱり人間は顔なのかな〜」


 言って俺は空を見上げた。青空が広がり、右側には入道雲。


 そして…。


「ん?」


 俺は雲ではない、何かの姿を空に発見した。


「人?」


 いやいやいや。人が空から降ってくる訳が無い。でもあれはどう見ても…。


 その物体はどんどん高度を下げて、俺に向かってくる。


「おいおい…。おれは雪乞いをしたんだぞ…」



 やはり俺に向かって落ちてくる物体、それは人間だった。



「うわぁぁぁー!!!」



ドッカーン!!!


「着地かんりょー」

「着地完了です」


キョロキョロ


「あれ、それで私達を呼んだ人は何処かな?」

「やいやい、早く姿を見せるです! それとも怖じけづいたですか!」


 下に瀕死状態な人が居る事に、こいつらは気付かないのかぁぁぁ!!!


「俺からどけぇぇぇ!!!」

「キャー!」

「ですー!」


 俺は一気に起き上がって、二人を退かした。


「お前らはいきなり何だよ! 空から降って…きて……」


 起き上がって言った俺は、地面に尻餅をついている二人の姿を見た途端、言葉を失った。


「どうしたの?」

「文句があるならさっさと言えです!」

「も、文句って言うか…」


 お前らは…。



「天使と悪魔!?」



 俺の言い放った適当な呪文。そしてこの出会いが、俺の駄目駄目人生を百八十度変える事になる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ