マイ・テラー 5-1
「・・・。ぐぅぁー~!!」
「っうるせぇ!!叫ぶなっつの。」
いつもの溜まり場。
さっきからずっと携帯とにらめっこをしていた章太が叫び出した。
終わりかけた秋の空はこんなにも晴れているのに、
彼の心はどうやら荒れ模様らしい。
隣で眠りかけていた歩が巻き込まれた。
「っ、だってさー、あー、俺もぅダメだ。」
「諦めんなよ~。男だろ?」
「…諦めてねぇし…
心折れかけただけだし…。」
「…いや、それたいして変わんないからね、お前。」
「…うっせっ。」
あぁ~、また拗ねちゃった。
とこの漫才的会話を聞いて1人が笑い出した。
笑うなっ!!とまた章太が叫ぶ。
どうやら漫才は続くようだ。
章太はいじけた子供のように、また携帯を睨み始めた。
猛アプローチしてるのに、どうやら気づかないらしい“その子”。
なんとなく俺が知っている今の状況は、悪戦苦闘。
俺が出会ってから今までにないほど頑張っているこいつ。
鈍感ガールに、やっと聞き出したメールアドレスで、毎日メール中…。
純情ボーイは、今日も崩壊寸前らしい。
「なぁ、悠弥、俺どーすればいい?」
真顔で突然迫ってきた章太。
怖いっつの…(笑)。
「知らねえよ。
俺、女嫌いだっつったろ。」
「…けち。」
「……。
女の事は女に聞いてこい。」
俺は、さっきから少し離れた場所で別の話題に笑っている1人に目線を向けた。
俺達メンツの中で数少ない女の1人。
それに気づいてこっちを向いて一瞬固まった。
「…って、私ですか!?」
ヤバい。と顔をした沙苗。
でも、それはすでに遅かったらしく、
ヤツの餌食になっていた。
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