マイ・テラー 最終章ー3
小説家の顔をした
凛々しく美しいその姿の人物は俺にこう続けた。
「私、ここが、みんなの今が、大好きだ。」
真っ直ぐにそう言いきったその言葉は、
このストーリーが一番伝えたかったのメッセージではないかと思えるほど、美しく鮮やかだった。
愛情溢れた、その表情はこのストーリーを生んだ母親の顔。
俺もそのキャストの1人だった。
いや、このストーリーに引き寄せられた、
1人の読者であったのかもしれない。
ストーリーに惹かれた?彼女に惹かれた?
…これもまた、彼女のシナリオの一部たったのだろうか…。
「…ねぇ、最後に一つだけ、お願いしてもいいかな?」
「いいよ。なあに?」
「1人の読者として、これからも君のストーリーを見続けてもいい?」
「…んふふ。いいよ。
でも、私の本は、
いつも本棚の奥に埋もれているものばかりだから、
ちゃんと探し出してね?(笑)」
「ありがとう。
あと、君は渡り鳥なんだろ?
だったら、また、いつでも戻って来いよ?
みんな変わらずにいるから。」
「…うん。ありがとね。
…ありがとう。」
扉に向かっていく背中が、少し寂しそうだったのは、気にしないでおこう。
自分のことを、へそ曲がりと言っていた彼女が、
真っ直ぐに歩き出したのだから。
そう。このストーリーは、
『名も無き語り屋の
心の全てで綴った、
優しく真っ直ぐな愛情溢れるストーリー』
END
。