マイ・テラー 8-1
「どーした?」
どれくらいの時間が経っていたんだろう。
気づいたら、さっきまで章太がいた場所には、歩が立っていた。
「あいつ、さっきすれ違ったんだけど、
あの子のとこ行ったんだ?」
うん。と私が頷けば、
そっか、やっとだなぁ~。と歩は私の隣に並んだ。
「…なぁ、お前、あいつのこと好きだっただろ?」
「…ふふっ。うん、好きだったよ?
ちなみ、あんたの事も好き。」
そういって笑う私に、歩はこっちを向いた。
どうやら、意味をわかってくれたみたい。
「何?二股ですか?お嬢さん(笑)」
「(笑)。
私が好きになったのは、章太の恋してる時の雰囲気だよ?
でね、亜早美の真っ直ぐに友達を思ってくれる優しさと温かい雰囲気が大好きだった。
だからね…」
それは恋じゃない。
恋って呼んでしまえばそうなのかもしれないけど…
これは、大切な人を、素敵なモノを描き出したいって思う、小説家の性だよ。
歩は知ってる。私が、ストーリーを描く人間だってことを。
そして、私が人ではなく、雰囲気しか好きにならないことも…。
他人は私のこの章太に対する感情を、恋と呼ぶかもしれない。
でも、私は描くことを選んだ。
へそ曲がりの気まぐれ屋。
そんな私を、章太も歩も亜早美も…
他の仲間も受け入れてくれた。
だから、これでいい…。
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