マイ・テラー 5-3
女として見ない。
それは、端からすれば酷なことかもしれないけど、
理由を知っている私は、少し誇らしい。
大切な人に持つ感情の愛は、信頼と愛しさの二種類だ。
彼にとって私は前者なんだ。
大切に想っててくれる。
男と女だからって必ず後者でなければならないなんてことはない。そんな彼の優しさ。
だから互いに、この距離が合っていた事を知った。
「…傷つかない恋って、ないよね?」
「あぁ。そうだな。」
でも、今日はあえて言ってみた。
この人だけじゃなく、自分自身にも言い聞かせるようにして。
あの日、
“好き”
という言葉の意味がわからなくなった私達に、かけてあげられる言葉が今はある気がする。
かっこつけたことを言っているようで、逃げている自分達に。
「大切な友達2人だからさ、傷ついてほしくないって思っちゃうけど…。
それでも恋をしようとしている2人、
とっても強くてかっこいいと思う。」
話し出した私を静かに見つめる悠弥。
横目で見た彼は、あの頃の面影と重なって見えた。
「いつか、私も、あいつみたいな真っ直ぐな恋出来るかな?」
その言葉の意味をちゃんとわかってくれたのか、
彼はふっと優しく笑みを浮かべた。
「大丈夫。
…沙苗さんは素敵な方ですよ?」
冗談も隠れた本音も、もう今の私達にはわかる。
だから、その隠された一言を、私はそっと心の中に締まった。
恋人でもない2人。
仲間として認めてくれている証。
「ふふっ。私に惚れんなよ?」
形は違えども、これも恋の形。
信頼の証拠。
私達は、また笑いあった。
。