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誰がための存在証明(レゾンデートル)  作者: リョウト
Fourth Chapter ~Fire Fear Find~
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第89話 俺は全て当てはまる

 ~小料理屋【有夕】~


「では、中間発表無事に乗り越えましたことにーっ」


「「「「「「「カンパーイ!」」」」」」」」


 葉楽の音頭にあわせ、グラス、ジョッキが音を鳴らし祝福を上げる。二つのテーブルの上には数多の肴が並び、ジョッキに注がれた金色のビール4つとテーブルが別れて尚一際違和感を放つウィスキー、ワイン、黒ビール。

 一応同年代の飲み会だというのに違和感しか発しないその三つの盃は、基本的に周りに合わせるということを無視する三人組のものであった。


「……よく置いてあったねぇ、その黒いのぉ」

「頼んだらあったから。周りに合わせずにウィスキーのロック頼んだラックも中々だと思うけど」


「1番渚! 一気飲みします!」


「ビールってさぁ、飲んだ気しないんだよね、薄くってぇ。飲むなら蒸留酒か果物酒か蜜酒。みたいなぁ?」

「要するに味が苦手、と」

「麦茶のスパークリング呑んでる感覚だからねぇ。しゃあない」


「げほっ!?」

「噴出した!? 酒弱いのに勢いでやるから!」


 葉楽は丸く削られた氷をグラスの中で転がしながら灰羅に目を向ける。


「しっかし、強いくせにそんな『私飲めないんですぅ』見たいなチョイスしなくっても」

「今の裏声マジムカつくわね」


「仇は取る……! 次鋒、牡丹、行きます……!」

「私も、男として! 章浩、出る!」

「一人だけいいカッコはさせない……! 林音、出ます……!」


 灰羅はワインを口に湿らせる程度に含ませた後、トマトとモッツァレラのカプレーゼを食べ、改めて葉楽へ問いを返す。


「て言うかそんなつもりないし。これそこらの生ビールより度数高いし。あたしの回りビールに合わないものばっかなのよ。ワイン頼ませてよここら辺なら」

「……うん、何でか知らないケドその辺イタリアンばっかりだもんね。私でもワインが欲しいレベル」


「「「げふっ」」」


「ていうかキミ酒そんな強くないんだからカパカパのまないように。送る羽目になるの結局俺なんだから」

「がんばれ男の子ー」

「Hum」


 葉楽はウィスキーを煽ると普通のビールを頼んだテーブルに目を向け、そして逸らした。


「……どしたの?」

「……耳で聞こえてさ、見てみてさ。やっぱり目を逸らすってあると思う」


 僅か数秒で出来上がった、出来上がってしまった隣の惨状を見て、苦い顔をしながら葉楽は再確認する。酒は呑んでも呑まれるな。一気飲みダメ、絶対。

 再確認したところで葉楽は店主のほうへ向き直り、手を上げ、要請する。


「向こうのテーブルとこっちのテーブル、別会計で。ああ、肴と通し分だけこっちに」

「はーい」

「「鬼か!?」」


 放たれたその言葉に葉楽は心外とばかりに眉を顰める。


「向こうビール4杯だけだよ?その他の肴は幸いにして汚れてないからこちらに移す。彼らが払うのはワンコイン。優しいじゃないか」

「元々打ち上げだからって奢るって言ったのどこの誰よ!?」

「知らんね」


 葉楽はてかそれ言ったのエルじゃなかったっけとか重いつつ、重い気持ちを何とか上向かせる。この3日間で整理してたら気付いてしまったあることは、この二人に入っておかなければならない、と思ったからだ。


「それで、あー、記憶、のことについて、なんだけど」

「! 何か新しくわかったの?」

「ま、纏めてる最中の医学書で、ちょっとね」

「……言いたくないなら、言わなくても」


 エルの言葉は葉楽の左手で遮られる。葉楽はそのままジャケットの内ポケットから紙箱を取り出しながら続ける。


「キミ達には、言っておく必要があると、そう思ったんだ。言わせてくれ」

「……その紙箱の中身?」

「いいや、違うよ? 今まで使ったことなかったんだ」

「ま、よく出来た子達だからね」


 エルの言葉を肯定しながら葉楽は更に中身を取り出す。取り出したのはキセルとマッチ。しかし、灰羅は違和感を覚える。


「あんた、タバコ嫌いだったでしょ? 『タバコは脳の血管を縮める』とかいって」

「タバコじゃないよ、これ。広義の意味での喫煙ではあるけれど……香炉みたいなもんさ。アロマハーブを燃やしてその香りで気分を落ち着けるんだ。……イギリスいたとき、必需品でね」

「こんなのが後6人いるんでしょ? 仕方ないわね」

「こんなのって何さー」


 葉楽の言葉に灰羅はエルを指差し、それにエルミーラは白ソーセージの皮を剥きながら言い返す。しかし葉楽はそれを無視してキセルに紙箱から粉末を入れ、マッチを擦って火をつける。


「ま、そんなことはいいんだ。そんなことは今は問題じゃない。この医学書のとある部分の記述だ」


 葉楽は取り出した医学書のページをパラパラとめくりながらキセルを咥え、煙を吸い込んで精神の動揺を少しでも抑えようとする。そして、とあるページを開くとそこでめくるのをやめ、二人のほうへと向きを変えながら吸った煙を二人とは別方向へと吐く。


「ふーっ……ここだ。この『多種多様なイレギュラーへの対処』の593ページ『異世界漂流者』の章14行目。読んでみてくれ」

「いせ、は、もと、えっと……難しい漢字多くない?」

「『異世界漂流者は元来その種族の特徴にない特異な能力や特徴を持っていることが極めて多く、次元転移の衝撃によって記憶障害を受けていたりすることも多く、発見された際不思議な物品が周囲に落ちていることが多い』常用漢字ばっかりじゃない」


 エルが一通り目を通した後で灰羅へそれとなく差し出すと灰羅は書いてあることを読み上げる。


「あはは、私日本語慣れてないから漢字読めないんだよねー……」

「まあ、そこらへんも今は問題じゃない。重要なのはさっきの内容だ。俺は全て当てはまる」

「偶然じゃないの? これ下手すると異星人も当てはまることあるし」

「それはそうだが……」


 灰羅の言葉にまだ顰め続ける葉楽に、灰羅は器に盛られていたキャンディを一つつまみ、葉楽の口へと放り込む。


「む」

「ま、可能性の一つとして考えておく程度にしときなさいな。悩んでるの、似合わないわよ」

「そうそう! 厄介な発表も終わったんだし、飲んで騒ごうよ! 悩んでたりだとかの時間は無駄だよ!」

「むぅ」


 口の中の安物のキャンディの甘味と、灰羅とエルの言葉に葉楽は勇気付けられたのか口の中のキャンディを勢いよく噛み砕く。


「それもそうだ」


 キセルの灰と共に悩んでいたことを灰皿に落し、葉楽は不敵に笑う。


「足踏みしようが進まない、何時だって結果は行動についてくる! 兎角今重要なのはコロナとトールをぶちのめすこと! ハッ、Re:mapping法の研究よりは俄然楽さ! イギリス時代のあの訓練よりも!」


 葉楽はグラスを煽り、更に燃料を投下する。


「目標は打倒コロナ、トール! 記憶のことはその後勝手についてくるさ! トールが嘘ついてなければ!」

「流石にうるさいっ!」

「あっ、はい、ごめんなさい」


 まあテンション上げすぎりゃ飲み会なんてする時間帯、迷惑でないわけがないが。

ああ、ようやく戦闘が書ける

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