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誰がための存在証明(レゾンデートル)  作者: リョウト
First chapter~There is no success without hardship~
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第4話 アーキテクチャ仲間のよしみだ

さっき小説情報を見るとお気に入り登録をしてくれている人が二人居ました。まだ始まったばかりで方向性すらまだ見えない状態ですが、読者の皆様型が楽しんでいただけたのなら幸いです。

 ~オネスト~


「……で、どこで金に換えるのよ。どこに売ればいいのかすらわからないわ」

「うーん、うちの親父もこのゲームやってて調剤してるんだけど」


 セリオの問いにケイトが思案顔になるが、どこか浮かない。


「だけど、何ぃ~?」

「うちのあのバカ兄達がもっとレアなの山程持ち込んでそうなんだよね」

「あぁ~」


 ケイトの言葉にローゼは納得した。確かにユニークボスを狩る選択肢がある程度には実力もあるのだろうし、おそらくβテスターでもある。自分たちよりももっと先のフィールドに行っていてもなにもおかしいところはない。


「だから、必然的にもう片方の当ての神主を頼った方が良さそうだ」

「あ、二つ当てがあったのね」


 ケイトの言葉にセリオが感心する。もう一つの世界と言ってもいいMMOでは、信頼できる取引先は多ければ多いほどいい。一つだけならいつ取引ができなくなってもおかしくないからだ。


「でもなぁ、めちゃくちゃ気難しいんだよなぁ。一つでも気に障るような事したら即PKしてこようとする位に」

「……なんだよその危険人物」


 ドン引きしたローゼが素に戻って呟くしかし、忘れてはいけない。ローゼもケイトに絡んでいた不良を即PKした事を。


「まあ、地雷さえ踏まなければ気のいいアンちゃんだから。でも、わかりやすい地雷が一つある。それだけは触れないように」

「何よ、もったいぶってないでさっさと教えなさいな」


 少し言いづらそうにしているケイトにセリオが急かす。


「……外見。あの人の性別、男だから。ヒカルサン……は知らないか。まあ、割と短気な女顔のお兄さんよりなまじ男らしい顔してるから、いじられるの嫌いなんだよね。まあ、あの人は下手すると女よりも女らしいからなぁ……」

「外見ェン?あははぁ~、こんな如何にもな目の傷つけててどれだけ今の大学来た時にいじられたことかぁ~。辛さは知ってるからァ、やらないさぁ~」

「ローゼと同意見。私も夜酒買いに行ったら年齢確認求められるから、免許証だけはいつも持ち歩く癖がついたわ」

「……それなら、いいけど」


 確かに外見にコンプレックスがありそうな二人、いじられる辛さは知っているだろう。だが、しかし。この二人は、おかしな事があったらオブラートではなく、画鋲を括りつけて正論を吐く。ストレートど真ん中ではなく、ストレート危険球だ。この二人は性根は善だ。間違いない。しかし、それ以上にまっすぐ尖っているのだ。それは、ケイトに一沫の不安を覚えさせた。そしてそれは、間違いではなかったと、ここに記しておく。


 ―――――


 ~調剤屋兼鍛冶屋【Warnin' Boobm】~


 オネストメインストリートの路地裏をしばらく進み、不自然に開かれ、日の光が当たるその場所に、目当ての店はあった。

 周りの建物は少しシミのように黄ばんでいるのに対し、まるでついさっき建てられたかのように真っ白く、埃の気配はしない。清潔な場所、というのが第一印象だった。次の瞬間には『こんな辺鄙な場所に立てやがって』という愚痴に変わる程度の印象強さだが。


「ここ……なんだよねぇ?」

「気のいい兄ちゃんじゃなくて根性ひん曲がった魔女の婆さんが出そうな雰囲気なんだけど。本当にここなの?」

「うん、まあ、気難しいからねー。あんまりどさどさ来られても困るってことらしいよ。セっさんと同じで高圧的にしか喋れない病だから」

「あら、それは立派なコミュニケート障害ね。病院通いをおすすめするわ」

「うん、皮肉を全力で投げ飛ばすんだよね。わかってた。期待なんてしてなかったさ」


 そういうケイトの顔には、軽い失望感が漂っていたが、ローゼは無視した。触らぬ神に祟りなし。こっちは触ってマジでいいことない。

 扉の前に立ったケイトは扉に付けられたノックハンドルで扉をを3・3・7拍子で叩く。ふざけてるわけではない。これは店主の身内だと店主に知らせるための合図なのだ。ケイトはローゼが後ろで肩を震わせていることに気づくが気づかなかったことにした。しかしその背中はやりたくてやってるわけではない事を精一杯語っていた。……ローゼに通じたかは別の話だが。


「ん、どこのどいつだこの合図を知ってんのは…と。カル坊じゃねぇか。どうした、手前の兄貴は。急成長したのか?まさかその後ろのヤーさんだってんじゃないだろーな。それよりは黒髪になって性転換して嬢ちゃんになったってのが現実味がありそうだが…うぅむ」


 出てきた店主の格好を見てローゼが少し間を空け反射的に突っ込む。それは、ケイトが危惧したものだった。


「どこの魔法少女だよ!?」


 店主の格好は赤と青、白のカラフルなビビッドカラーで彩られ、よくある魔女の格好のスカートをズボンにしたらこうなりましたと言わんばかりの格好で、左手に謎の杖を持っていることも印象付けに手を貸していた。

 後、いい感じに店主の脳内が花畑だったのもローゼの理性を吹き飛ばすのに力を貸していた。ツッコミ欲……恐ろしい欲望である。


「ちょ、ローゼさん!?」

「うっわ、本当にこれは……なんで敢えてそんなビビッドカラー使っちゃったのかしら。女に見られたくなければもうちょっと落ち着いた色彩感覚養いなさいな」

「セっさん!?いや、本当に待ってくださいシンさん、この二人突っ込みどころに針穴通すどころかぶちぬく剛速球な物言いするだけで「よっしゃ貴様ら長野須賀神社の現神人(アラビトガミ)とも呼ばれた俺の実力をその身で思い知りやがれ!」シンさん!?」


 ケイトは悲痛な声を上げるが時すでに遅し。店主はローゼに猛然と襲いかかる。


「現人神だかなんだか知らないけどさ!」


 そしてローゼもそれに応戦するためホルスターから銃を抜く。

 そして杖と銃身がぶつかり合い、銃身の向きをローゼが無理やり変える形で店主に向け、突きつける形にしながらハンマーを起こす。しかし、トリガーを引く前に店主はスウェーの要領で銃口から頭をそらし、そのまま勢いをつけて杖をローゼの眼球へと突き出した。しかし、その杖はローゼの左手に阻まれる。肉迫しているがどちらも決め手がない状況に陥った中、ふと、ローゼが口を開いた。


「君ィ、もしかしてミラー・ブーマー?」

「そういう手前はローゼス・ノブレス。ちっ、ランク2かよ、抜かったぜ」

「あははぁー、前と全く同じ展開だったもんねぇ〜」

「もう一丁手前が持ってりゃ眉間打ち抜かれてたな。ってか、道理で顔に見覚えがある筈だ」


 ローゼの心当たりは大正解。AMの公式大会で面識のある人間だった。


「運が悪かっただけでしょランク10。公式大会予選で俺に当たらなきゃ、ランク7は硬かったんじゃないかなぁ〜」

「結局手前より下だろーが。んで?うちの店に如何用で?銃か?ガンパウダーか?」

「薬草と素材買取でぇ~。金ないからさぁ~」

「了解、アーキテクチャ仲間のよしみだ。適当に色つけてやる。作ったはいいがサイズ合う奴が知り合いの中にいない防具一式があってな。それつけてやる。ブツは?」

「俺からはこのゴブリンクラブとゴブリンシールドォ~。本命は後ろの二人~」

「……薬草の詰め合わせよ。あとは、ゴブリンの骨とゴブリンナイフ。鑑定お願い」

「えっと、はい」


 急に険悪な状態から超友好的になった二人に困惑しながらセリオとケイトは袋をカウンターに置いた。


「あいよ確認と。……へぇ、確かにこれはレアだな。これなら6000出せる。文句や値段交渉なら今のうちだぞ」

「ケイト、相場からこの値段はどんな感じぃ?」

「あっはい、相場より少し高いくらいかな。相場はこんくらいの量なら5200くらいだから」

「んじゃ、交渉成立って事でぇ~。セリオは文句あったりする?」

「……特にないわよ」

「そうかい、ならこれがお代な。じゃ、防具取ってくるな。その他の商品はそこらに並べてあっから自由に見てな」


 店主はカウンターの下から袋を取り出すとカウンターの上に置く。その時にずしりとした音と、金属同士がぶつかる音がした。おそらく貨幣の音だろう。

 そして店主が防具を取りに店の奥へと引っ込むと、ケイトはまず、一番の疑問を口にした。


「アーキテクチャって何?」

「あ、聞くのそっちなんだぁ」


 ローゼはその言葉に貨幣の入った袋を持ち上げながらツッコミを入れるが、そのあと問いに答えずに、まず必要なことを聞いた。


「とりあえずさ~、簡単に分配する方法ってあるぅ?」

「袋を指定してウィンドウを開いてパーティー内分配で行ける」

「了解ィ」


 ローゼはその言葉に従って分配したあと、自分のアイテムウィンドウを開いてちゃんと分配されているかを確認する。ちゃんと、2000と表示されていた。


「で、AM解説するのね。それなら、私は適当に装備揃えたあとログアウトすることにするわ。じゃあ、お元気で」

「お達者でぇ~」

「旅に出るの?出すの?」


 セリオが店から出たのを確認したあと、ローゼは話を戻した。


「んじゃあ、アーキテクチャについてだっけぇ。AM、アームドメカニックについてはぁ?」

「知り合いがやってる程度かな」

「AMでは、設計することと、設計した機体で戦うことができる。そして自分で設計してない期待でも戦えるんだよぉ。設計者の同意が必要だけどね~」

「その設計者がアーキテクチャ、って事?」

「近いよぉ。正確に言えば、『設計して、その設計した機体を他人に譲った』ら、アーキテクチャって呼ばれるんだぁ。それ専門にやってる人たちのことは『専業アーキテクチャ』って呼ばれてる。逆に戦うことを専門にしてる人たちのことは『専業デュエラー』って呼ばれてる。あぁ、間違ってもデュエリストじゃないよ。いいね?」

「あっはい」


 ローゼが真面目な顔で言った迫力に押されて生返事を返すケイト。強面の男にはんば凄まれては少年のメンタルでは少々厳しいものがあった。そしてローゼは話を続ける。


「ま、人からもらった設計図で戦うのがデュエラーだから基本デュエラーは専業しかいないんだけどねぇ~」

「え?じゃあ自分で作った期待に乗るのはなんて呼ぶのさ」

「『ファクター』。どう?なんか消えそうでしょ」

「……溶けそうだね」


 ローゼの言葉に反応に困るケイト。なまじ真顔なのも困惑に拍車をかける。

 そんな中、店主が防具を持ってカウンターに戻ってきた。


「おい、ローゼ、これが防具だ。布製だが割と強いダンジョン内の植物系統の魔物の繊維から出来てるから性能は高いぞ。あぁ、弱点は火炎じゃなくて凍結だから寒いとこには着てくなよ」

「了解ィ。じゃ、ちょっと装備してみるよぉ」


 そういってローゼはアイテムウィンドウを開き全体装備切り替えで新しい装備に着替える。その姿はまるで、西部劇の旅人のようだった。


「おぉ。よく似合うな。堂に入ってる」

「帽子で目の傷が隠れて怖さは軽減されてるね。底知れなさが付加されてるけど」

「えっと、詳細は、っとぉ」


 ローゼはアイテムウィンドウを開き、装備品の詳細を選択する。それぞれの内容は、こうだ。


 メガプラントクロースハット


 DEF+17 MAG+3 耐久値 100%


 湿地林に群生するメガプラントの繊維を織り上げ帽子にしたもの。日差しを防ぎ、雨の景色がよく似合う。つばで距離を測ってもいいかも


 メガプラントクロースシャツ


 DEF+20 耐久値 100%


 湿地林に群生するメガプラントの繊維を織り上げインナーにしたもの。通気性抜群。これ単体だと上半身が少し淋しい


 メガプラントクロースコート


 DEF+17 POW+3 耐久値 100%


 湿地林に群生するメガプラントの繊維を織り上げアウターにしたもの。羽織って砂風に靡かせると力が湧いてくる


 メガプラントクロースズボン


 DEF+20 耐久値 100%


 湿地林に群生するメガプラントの繊維を織り上げズボンにしたもの。ちょっとやそっとじゃ擦り切れない。裾がボロボロなのは仕様です


 メガプラントクローズブーツ


 DEF+15 SPD+4 【武具属性付加】徒手空拳・剣 ATK+5 耐久値100%


 湿地林に群生するメガプラントの繊維を織り上げブーツにしたもの。かかとにカッターが取り付けられていて、蔦が絡んでも少し安心。馬がよく走りそう


「へぇ、まだブーツは使いこなせないけど、かなり優秀な防具だ」

「ふふん、このミラーが作ったもの、そこんじょそこらで売られてる防具よりも強いに決まってる!んで、これ探してる最中に見つけたんだ。やるよ」

「これは……?」


 ローゼは手渡されたものの詳細を開いた。


 マグナムの弾


 ATK+16 個数 4


 大口径な弾。炸薬を多めに入れ、表面に溝を入れ回転させることにより貫通力を上げている。作るのには手間がかかる


「……いいのぉ?」

「せめて10個、出来れば50個入ってなけりゃ売り物にすらならんよ。つまり、余りもんだ。気にすんな、商品としてのなら在庫はたくさんあっから。とりあえず聞きたいんだが、銃はどんなタイプが欲しい?うちじゃあ取り扱ってないタイプだと用意できんからなぁ」

「リボルバーのシングルアクション。手入れしやすいのがいいよねぇ~」


 ローゼの言葉に店主、ミラーは顔を顰める。そして申し訳なさそうな顔で告げた。


「……すまん、取り扱ってない奴だ。ウチで取り扱ってるのはボルトアクションとダブルアクション。シングルアクションは俺よりも腕がいいのが既に居たからなぁ。手を出す気にもならなかった。一応上がいいのに面識はあるが、地図書こうか?」

「いや、いいよぉ。街見て回りたかったんだ、ちょうどいいさぁ。それじゃ、ミラー。防具が縒れるか金になりそうなもの手に入れたらまた来るよぉ。行こうか、ケイト」

「おう、いつでも来い!……流石に修理とかはお代を取らせてもらうがな」

「あっと、僕、そろそろログアウトして寝なきゃ」

「あぁそうかぁ。ごめんねぇ?」


 ローゼは店のドアを開け、店を後にした。気に入る銃が手に入るのか、それに思いを馳せながら。

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