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誰がための存在証明(レゾンデートル)  作者: リョウト
First chapter~There is no success without hardship~
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第1話 お天道様でも烏でもないけど

あまりMMOよりアクションゲームばっかりしているのが作者なので、おかしなとこがあれば教えてもらえると嬉しいです。

「へえ、ここが最初の街かぁ。えっと、マップは、とぉ」


 ローゼはマップを展開し、街の名前を確認すると、そこには【オネスト】と表示されていた。


「ふぅん、どっかの天使の名前だったっけぇ? っと、あいつと連絡しなきゃあ」


 それはどっかの光属性ぶっ壊れカードの事であり、実際は誠実という意味である。

 ローゼは指定コールしようとするが、重要なことを思い出した。


「……あれ、あいつのキャラネ知らないやぁ」


 普段の口調の為判断し辛いが、首筋を伝う冷や汗で焦っていることがわかる。

 ちなみにキャラネとはキャラクターネームの略である。


 そんな時、ローゼの頭の中に指定コールの着信音が響く。ウィンドウを開くとかけてきた相手は【セリオ】というネームだった。どうせ灰羅だろうと当たりをつけ、応答する。


「あいあい此方ローゼェ。そちらは?」

『此方依頼人。時間ピッタリとは流石ね。待ち合わせ場所を決めてなかったのを思い出したのよ。ユーザ検索かけて、探し出したわ。手間かけさせてくれたわね。待ち合わせ場所は中心部の大きな噴水の北側。反対同士で延々待ち続けるなんてバカよ。てなわけで集合。くる前にアイテムウィンドウ開いて中身見ておきなさい。このゲーム、きついわよ。それじゃ』

「……こっちに喋らせてくれると嬉しいなって」


 ブツン、と回線がきれた音がした後、マシンガントークで言いたいことだけ言って切ったちびっこいのの顔を思い描き、口元をヒクヒクさせながらローゼは呟く。幸い、誰もその呟きに耳を傾けていなかったが。

 腰のホルスターの中の拳銃を撫でながらローゼはアイテムウィンドウを開く。アイテムは初期装備以外持っていなかったので所持金の方に目をやる。大体準備金位は用意されているだろうと思ったからだ。しかし、甘かった。


「あれぇ?」


 表示されていた数字は0。何度見直しても0。一文無しだ。


「こういうのって50ゴールドだけでも持ってるものだって聞いたけど……」


 ローゼは眉を顰めながら呟く。急いで世界設定を見てみると、最後の方に冒険者となる為の装備の為になけなしの財産全てをつぎ込んだと書かれている。次に装備武具のステータスを確認する。


 はじまりの拳銃


 ATK+1 耐久値 無限


 冒険者の銃士として最低限の武具。リボルバー式で壊れない以外特色はない。


 はじまりの弾丸


 ATK+1 個数 無限


 銃士の必需品。あらゆる銃に使えるが、あらゆる弾丸の中で最底辺の弾丸。


 はじまりのレザーハット


 DEF+1 耐久値 無限


 冒険者として最低限の武具。壊れないが肌着とさして変わらない。


【はじまりのレザー〜】系統はブーツにSPD+1が付く以外は特に変わりもなく、割愛。とりあえず一通り見たローゼの感想は


「……バカじゃねぇの開発者」


 思わず語尾を伸ばす事すら忘れ、呆れ切った口調でため息をつきながらボソッと告げる。周りでうんうんと賛同している者たちがいたのはきっと気のせい。


 とりあえず考えていても仕方ないと噴水に向かって歩き出す。

 暫く歩いていると、ローゼの耳に、路地裏の辺りから何か、助けを呼ぶ声が聞こえた。

 普通なら気の所為と思い放って置く人間が多く、例に漏れずローゼ以外の人間は気にせず通り過ぎてゆく。普通はそれが賢明だ。厄介事に自ら関わり合うなんて馬鹿がする事だ。しかし、ローゼは路地裏へとスタスタと入ってゆく。一切の戸惑い、迷いなく。

 ローゼが変人というのは確かにある。傭兵(マーセナリー)の仇名をつけられた根本の原因もここにある。困っている人がいるなら手を差し伸べるのがこの男、ローゼであった。今居候として暮らしている家の家族に助けられ、その家の一員として恥ずかしくない素行を心がけているのもある。だが、それより何より、この世界はゲームだ。娯楽だ。


「いや、ちょーっとこっちに付き合ってもらいたいだけだよ? 目的は猟じゃねぇけど」

「いや、ある意味狩だろ? 身ぐるみ的な意味で。ぎゃははっ」

「それもそうさな。ヒャハッ」

「だ、誰か助けて……!」

「誰もみちゃいないさぁ!」

「まだ日は高いからお日様以外は? ぎゃはっ」


 こんなツマラナイコト、放っておけはしない。


「悪いねぇ、こちとらお天道様でも烏でもないけど見てんだよねぇ、馬鹿共」

「は!? なんでこんなところに!?」

「焦るな、よく見ろよ。はじまりシリーズ装備の初心者だ。俺たちβテスターの敵じゃあねぇ!」

「そ、そうだよな! いくらガタイがヤーさんみてぇでもこれはゲーム、ステータスに違いは、くぴゅっ」

「「えっ?」」


 いきなり紅い花を咲かせたチンピラの頭を見て、被害者の少年ともう片方のチンピラの惚けた声が重なる。

 原因は簡単、ローゼが腰のホルスターから素早く拳銃を引き抜き、チンピラの片方の頭に向けて発砲しただけ。それがちょうど眉間にある小さなクリティカルポイントにヒットして特殊演出で紅い飛沫の花を咲かせたのである。血液でも脳漿でもなく紅い飛沫である。間違えぬよう。


「ゲームの世界だろうが必要以上に殺生する気はない。失せろ」

「ひっ、ひぃぃぃ!」


 巫山戯た口調もなく、ただ淡々と銃を構え告げるローゼの姿に恐れをなし、もう片方のチンピラは悲鳴をあげながら走り去る。とりあえず相棒を瞬殺し、ガタイが良くて顔に傷があるオニイサンに凄まれたら一般人なら速攻逃げる。


「……さて、もう安心かなぁ〜。大丈夫ぅ〜?」

「ひぇっ!? あっ、その、はい、だ、ダイジョブ、デス」

「そうなのぉ、それならよかったよぉ〜」


 いきなり張り詰めた空気を解いたとはいえ、今さっきまでのローゼを見ていた被害者は、何をされるのかとビクビクしながら引き気味にローゼの問いに答える。


「危ないからねぇ〜、こんな人目に付きづらい場所は入らない方がいいと思うよぉ? 何か、用事があったのかもしれないけどぉ、ねぇ?」

「その、待ち合わせ場所へ近道して行こうと思って」

「それで絡まれてちゃ遅くなって元も子もないと思うんだけどぉ」

「あっ、はい、ソノトオリデス……」


 被害者が理由を告げると、ローゼはあっさりとツッコミをいれ、居た堪れなくなった被害者は縮こまりながら肯定する。


「……さて、なら、待ち合わせ場所、何処なのぉ?」

「え?噴水広場だけど、です」

「ん、行き先、同じだねぇ〜。一緒に行こうかぁ」

「あっ、はい、ありがとうございます!」

「お礼はいいよぉ、ちみっこクン。近道ってどっちなのぉ?」

「あっはい、こっちです!」


 ローゼが銃をホルスターに入れ案内を促すと、被害者はテテテッと早足で先導し始めた。


「あはは、そんな急がなくってもぉ」

「後十分で時間なんです!」

「えぇっ!? どれだけの間絡まれてたのぉっ!?」

「時間がサービス開始十五分後だったもので!」


 その言葉を聞いたローゼは、頭痛のしてきた頭を抑える。


「このゲーム、バカばっかりか!?」

「ひぃっ、ご、ごめんなさい!?」

「あっ、違うんだよぉ?君の待ち合わせ相手に言ってるだけでねぇ?」


 叫びに怯える被害者に必死で弁明するローゼ。今さっきまでの大物感は消え失せた。

 その時、被害者がいきなり立ち止まった。きっと、待ち合わせ相手から指定コールがかかってきたのだろう。


「あっ、あの!」

「うん、気にしなくてもいいからさぁ、出たらいいよぉ〜」


 許可を取る被害者にローゼは気にするなと促すと、被害者は頷いてコールに出た。


「あっ、もしもし、兄さん?どうしたのまだ待ち合わせ時間は先だよ?え?絡まれてないかって?あぁ、うん、大丈夫、絡まれたけど、って、叫ばないで!耳キーンってなるから!絡まれたのは事実だけどさ、いい人に助けてもらったから。え?ちょうど良かったって?」


 なんか雲行きが怪しくなってきた。主にローゼの面倒事的な意味で。


「え?弓のユニーク武器が手に入るボスが二体居て、どっちとも四人パーティ限定?だから助けられたついでにパーティに臨時でいれてもらえと?待って、うん、あってるじゃなくてさ、報酬も出すって伝えてでもなくてさ、え?僕ハブ?悪いね、じゃなくって!待って、切らないで、兄さん、ちょっ」


 立ち尽くす被害者。切られたらしい。色んな意味で。ローゼは近くによって肩に手をおく。


「……まぁ、多分戦力が増えるなら、報酬貰えるなら、俺の待ち合わせ相手も文句言わないと思うからさぁ、……ドンマイ」

「お手数……っ、お掛けします……っ!」


 被害者は激怒した。あの邪恥暴虐たる兄を除かねばならぬと。誤字にあらず。


「んじゃぁ、歩きながら先にパーティ組んどこうねぇ。えっとぉ、俺の名前はローゼぇ~。職業は見ての通りの銃士ぃ。君はぁ?あ、敬語は使わなくていいよぉ?」

「あっ、はい、いや、うん。僕の名前はケイト。拳士のケイト」


 そう被害者の少年改めケイトが名乗ると、ローゼは体をジロジロ見回す。


「ちょ、何かしたっけ?」

「……剣は?」

「あ、コブシのケン。ツルギのケンじゃないよ」

「あぁ、そういや徒手空拳とかもあったねぇ」


 恍けたローゼの発言に、ケイトはキッチリと突っ込む。そのツッコミを受けてもローゼはのほほんと説明キャラの言葉を思い出す。その時、ローゼの頭の中に指定コールの着信音が鳴り響く。


「あー……ごめぇん、コール掛かってきたから」

「あ、うん。出てもいいよ」

「ありがとぉ」


 許可を受けてローゼはウィンドウを開くと、発信者の欄に【セリオ】と表示されていた。ローゼの首筋に冷や汗が浮かぶ。


「あの……」

「皆まで言わないでぇ。嫌んなってくるからぁ」


 ケイトの心配そうな声にローゼは軽く返し、コールを繋いだ。

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