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第18話 セリオっ!動くなよっ!

 ローゼはハーレムはつくりません。多分。灰羅も桜子も牡丹も信頼できる人と付き合えばいいと思っていますから。記憶がないから自分ですら信用できる人物ではありません。何が起こるかわかりませんから。

 記憶を取り戻したとして、本当に自分が信用できるかといえばまた別の話なんですけどね。

 ~ナラツ湿地帯~


「さぁて、どうしたものか……」

「壁吹き飛ばせばいいじゃねぇか」


 目の前の植物(プラントモンスター)を前にして、どうすればいか悩むローゼにミラーは事もなく提案するが、ローゼはそれを首を振って拒否する。


「そこまでMPがないんだよ。ほら、休まずに来ちゃったし。それに俺の知っている植物モチーフだとすれば爆発浴びせたらあれ以上に大きくなると思う」

「うげ、メガプラントよりも弱そうなのに厄介だな」

「そのメガプラントを知らないからどうとも言えないんだけどね。元々その種はとある島にしか生えていなかったんだけど、放射能を浴びることによって人間型になれて動けるようになった食虫植物なんだよ」

「……ウツボカズラ的なやつ?」

「いや、蔦で捕まえてたらしいからまた違うやつだと思うけど。見たのが随分昔だから記憶が曖昧でね」


 ローゼは右手にS・ファランクス、左手にインベントリから取り出した魔力銃を取り出して構えながら答える。二丁拳銃にする場合はオートマの方がいろいろと都合がいい。リロードの手間もあるし。


「さぁて、|Be done one dish(やってやるぜ)!」

「なんて言ったかはよくわかんねぇが、突っ込むぞ! ケイト!」

「はいさ! ミラーさん!」


 ローゼの掛け声とともにミラーとケイトがモンスターへと突っ込む。もちろん二人へと多数の触手が四方八方から襲い掛かるが二人共すべてを紙一重で躱しきりながらモンスターを挟み込む様へと位置どった。


「スキル発動! インパクトブレイカー!」

「スキル発動! インパルスパンチャー!」

「「ぶっ潰れよぉっ!」」


 そしてミラーはハンマーに、ケイトは右拳に力を集め、衝撃重視の技で挟み込む。しかしモンスターは怯むこともなく触手で叩き飛ばす。


「うあぁっ」

「くうぅっ」

「ケイト! ミラー! ちぃっ、これでも喰らえ、ファランクスの弾幕を!」


 ケイトとミラーが叩き飛ばされるのを見たローゼは、S・ファランクスのトリガーを引きっぱなしにして、毎秒65発もの弾丸でもって弾幕を張り、モンスターの追撃を許さない。その間にケイトとミラーは体勢を立て直す。


「すまん! ローゼ!」

「例は後だ! 弾幕はどうやらむず痒かっただけらしい!」


 その言葉と共にモンスターは自らの茎に付いた身触手を一気に振り上げ、振り下ろす。その範囲内にはもちろんミラーとケイトが脱出できない位置取りで含まれていた。ローゼの弾幕も意味がなく、無慈悲にもミラーとケイトのHPバーは消え去った……訳ではなく、当たる直前に当たる範囲の触手だけ切り払われる。


「俺は剣も使えるんだよ、この雑草が!」

「ケイト、大丈夫?」

「……まさかセリオさんに助けられるとは。普通に見捨てるかと思ってた。冷酷だし」

「あの花よりも先にあんたの首を刎ね飛ばすわよ」


 ミラーはインベントリにハンマーを収めて剣と入れ替えて触手を切り払い、ケイトは素早く飛び込んだセリオに助けられた。それを確認したローゼは何故か後ろで待機したままの二人に指示を出す。


「よし、無事か……! なら、チェリッサは触手切り裂きながらモンスターを撹乱!」

「了解教授!」

「ピィニィは弓で花の顎あたりを狙ってくれ!」

「……花に、顎……?」

「花と茎の境目らへんに花弁くっついてる出っ張りあるだろ!? そこ狙ってくれ!」

「……わかった……!」


 チェリッサが駆け出し、ピィニィが弓を引き絞り矢を放つ。その間にローゼは他の三人にも指示を出す。


「ケイトはヒットアンドアウェイで確実にダメージを与えてくれ! ミラー! 君炎の魔法使えたよな!? MPが残ってるならそれで燃やしてやれ! セリオ! 何も言わん、叩っ斬れ!」

「はいさっ! スキル発動、オーラナックル! 魔法詠唱(チャントオブマジック)!『風息吹くとき春訪れる! 風が舞い吹き花は散る! 風属性魔法【スプリングスピーダー】!』」

「おう、やってやるよ、言われなくてもさ! 魔法詠唱(チャントオブマジック)!『炎よ! 全てを焦がす業火よ! どうか矢のようにあの敵に飛びつき燃やし給え! 焔術【炎舞天昇(ホノオマイテンニノボル)】!』」

「随分とアバウトな指示ね。まあいいわ。撹乱もついでにこなしてあげる。奥義発動『残光駆(ザンコク)』!」


 ミラーの目の前に巨大な火炎竜巻が巻き起こり、竜巻はその姿を徐々に変え、渦を巻いた火炎の障壁のようになったかと思うと、ケイトの姿が掻き消え、それと同時にモンスターの巨体が揺れる。

 セリオはまるでニンジャの分身の術のように残像を作り上げると、自らの身体をも残像のようにぼやけさせその残像のひとつひとつがバラバラに散開する。そしてそのままチェリッサと共に触手を欺き躱しながら切りつける。

 ローゼはピィニィとは違う角度から超音波カッターを放つ為、魔力銃で牽制をしながら位置を動く。

 そしてミラーとモンスターとの間の直線上に誰もいなくなった時を見計らい、火炎の渦の中心から蛇が飛びかかるように一条の焔がモンスターに行き、モンスターを炎上させる。


「おぉ? なんか意外と呆気ないな」

「馬鹿! 油断するなミラー! まだどこも光の粒子に変わっていない!」


 放ったミラーが呆けた声を出し、それを聞いたローゼが注意した途端にモンスターの茎に生えていた刺が飛び出るように新たな触手となり、自らの体を纏う炎をすべて叩き落とした。


「はぁ!? 何でもありかあの雑草!」

「言ってる場合か攻撃くるぞ!」

「なら距離を……!?」


 モンスターが触手を茎に巻きつけ始めたのを見て全員が距離を取ろうとした時、足元から触手が泥を割って飛び出てきて全員の太腿に巻きついて動きを止めた。セリオの分身も全て足を取られ消滅する。


「……ヒールカッターで触手斬ってたの見て学習してたみたいだな。足曲げたら今にも転けそうだ。キーモンスターに対しての攻撃は効かないと見ておくべきだったか」

「キーモンスターってわからなかったから仕方ないですよ。っていうかまさか僕の強化したスピードにも対応しきったなんて……」

「え? お前100メーター走確か13.2じゃなかったっけ」

「いや、早いほうですから、それ。ヒカ……レイヴンさんの5秒フラットとか兄さんの9秒とかコロナさんの12秒……普通に高校生のタイムか。これは。とにかく、あの人らがおかしいだけですから!」

「え? 俺8秒7だけど」

「いや貴方アスリートみたいな体つきでしょうッ!? どう見ても普通の高校生みたいな体つきのっていうか一人小学生みたいなサイズのが混じってるけどそんなのがあんな早いのがおかしいっつってんです!」


 ミラーの指摘に反論し、ローゼがそれに反応してかき回してきて疲れたケイトは吐き捨てるように怒鳴る。その間にもモンスターは触手を巻き付け続け、力を溜めている。


「しかし、どうしたものか……」


 ローゼはそう呟きながらバックルを二回叩きメダルを二枚取り出し、思考する。全力で防御魔法をかけるとしてその対象は一人が限界。そして更に拘束から解かなければいけない。

 まず最初に自分は論外。決定打を与えられるような自信がない。超音波カッターを放とうにもSPには限りがあるし、そのSPを使い切って倒れてくれるかもわからない。同じ理由でケイト、ピィニィも除外。

 残ったのは三人だが、位置取り的にミラーは無理。モンスターを挟むためメダルを媒体にして魔法で包むためちゃんと届いてくれるかわからない。

 そして残るは二択。チェリッサ、セリオ。ローゼは二人を順に見やる。チェリッサもセリオも自分の獲物で触手を斬ろうとしているが触手が硬く、あまり効果がないようだ。


「(チェリッサは……あれ、ちゃんと包みきれるか? あのでかいの。しかも、なかなかに太くて頑丈そうな触手……拘束解くのに使おうと思ってるのは目の粗いヤスリのようにした金属で削り切る魔法……なら細いほうがいいな。つまり、あんまり大きくなくて触手も細い……!)セリオっ! 動くなよっ! 魔法詠唱(チャントオブマジック)!『【ファイル・ソーサー】!』魔法詠唱(チャントオブマジック)!『渦巻け泥よ! 全て受け流す珠となれ! 地属性魔法【クレイ・スフィア・シールド】!』」

「何する気……!?」


 ローゼの手から放られた二枚のメダルはセリオの近くへとたどり着くと、片方は高速回転を始め、触手を甲高い音を立てながら切り裂き始める。高速回転しているから見えないだけでその表面はざらざらとヤスリのようになっているのだろう。そしてもう片方は急激に運動エネルギーが消え去ったかと思うと重力に従い地面に落下し、泥へと溶け込む。そしてその泥はセリオを中心として円柱型に出てきたかと思うと、上が捻じれる形で綴じ、高速で回転しながら膨らみ、球状となった。

 それから間もなく触手は解き放たれ、セリオ以外の全員が叩き飛ばされ職種の壁へと叩きつけられたのであった。

【イベント名】グリーン・ブルーム・モンス誕生

【イベント発生条件】楢津湿地帯に時折出現する【モンス・シード・オクトプラント】を日光が当たる場所で倒した時イベント発生。

 モンスターが倒された一定距離に触手を発生、壁にして逃走できないようにする。この触手の壁に触れた場合は触手に拘束される。

 また、誕生したGBMが炎に包まれた時、【GBM強化イベント】が起こり、このイベントが起こったときにほぼ確実に(起こる確率は7/10)【範囲一掃攻撃イベント】が起こる。

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