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誰がための存在証明(レゾンデートル)  作者: リョウト
First chapter~There is no success without hardship~
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プロローグ VRMMO?何それ?

「VRMMO? 何それぇ?」

「知らないの?遅れてるわねー、あんた。アームド・メカニックばっかりしてるからそんなに世間から遅れることになんのよ」

「あの生意気ランク9が倒せないから仕方ないじゃあん!」

「……あんたランク2だったでしょう? なんで下のランクの子が倒せないのよ」

「あいつ公式大会に出てこないからランク8の中に入らないんだよぉ……マッチングでしか戦えねぇからAI説が出るレベル。眉唾だねぇ。ま、否定はいったけどさぁ」

「語尾伸ばすなイラッとくる」

「口癖失くせと申すかぁ」


 さんさんと降り注ぐ太陽光が、アスファルトを焦がし始めた季節、街中にある喫茶店の中で大学生位の年齢の男女ペアの二人がコーヒーを啜りながら世間話をしていた。男は鋭い目、鍛えられた肉体、右目付近の大きな傷、高い背……に似合わぬ間延びした喋り方で女性に疑問を投げかけ、女は丸っこい目、細い体、傷一つない顔、小さい背……に似合わぬ厳しい口調でバッサリと切り捨てる。

 彼らの手元のコーヒーは、周りのまとわりつく様な暑さとは対照的に、冷め切って湯気どころか白い泡ひとつ浮かんでいない。コーヒーの味に覚えのあるマスターの厳しい視線など素知らぬ振りで、男はかき混ぜ、女はカップを弄んでいた。


 さて、ここで固有名詞の説明をしておくと、【アームド・メカニック】とは、元々は専用筐体を利用してプレイするゲームで、専用筐体の中に乗り込み、自分で設計したマシンに乗り込み、自分で操縦してオンライン上の敵と戦う、という戦○の絆とA○を足したようなゲームである。最近とある脳科学者の協力により開発、発売されたVR体感機、【paradigm-paradise】(通称パラムス)により家庭でも楽しめるようになった。しかも利用料はインストール料4000円でそれからは無料で全機能を利用できる。お手軽に手を出せるのである。さらに半年に一回公式大会が開催され、ランク8よりも上はこの大会の成績によって決められ、マッチングの勝率、勝ち数での最高到達ランクは9となっており、実質最強とも呼ばれている。現在は【レイヴン・クロウ】というユーザーがその地位についており、ランク1、【コロナ・フェンサー】との対戦動画が上げられた時、高い操縦技術、素早い反応速度、漆黒とダークブルーという中二心溢れるカラーリングにクールな色に見合わぬパイルバンカーというロマン溢れた武装、射撃武器は肩のチェインガンと胸のブラスターのみで手持ち武器は近接オンリーなどの特異さを見せつけたことにより、ファンと研究チームが存在する。

 利点としては値段は手を出しやすく、初心者も優しく手助けしてくれる高ランクプレイヤーの存在、ロボット製作の自由さ、操縦の腕次第では人知を超えた動きが可能ということが挙げられ、問題点としては、コックピットの操作がめちゃくちゃ複雑、パーツ設計も複雑さに乗倍する形で造りにくくなっていく、VRの場合振動、反動、体感Gが専用筐体よりもかなり強烈、などが挙げられる。


 一番最初から物語にあまり関係ない固有名詞ばかり出ているような気がするが、気にしない方向で。


「でぇ? 俺にその、明日稼動予定のVRMMOとやらをやれとぉ?」

「そ。アンタのそのAM魂ゆえの技術とVRの知識はかなり使えそうだから。βテスターになれなかった身としては、心強い味方が欲しいわけよ、わかる?」

「ま、いいけどさぁ、AMに支障がないくらいしか活動しないよぉ?」

「それで問題ないわ。むしろそっちのほうが都合がいいの」

「……何故かは聞かないでおくよぉ。めんどくさいしぃ」

「懸命な判断よ、葉楽(ヨウラク)

「キミに言われても嬉しくないよぉ、灰羅(ハイラ)


 紹介が遅れたが、男の方は荒戸スサノト葉楽、女の方は瀬尾セオ灰羅という。益々見た目と真逆な印象を与えていく。


「ま、頼まれたからにはやるよぉ」

「頼むわよ?傭兵マーセナリー

「……その仇名気に食わないからやめてってばぁ」

「色々やらかしたからよ。因果応報ね」

「いい事ばっかりしたはずなんだけどなぁ……」


 そう言った次の瞬間に二人は一気にコーヒーを飲み干し、席を立つ。極自然に伝票を葉楽が握り、葉楽が歩く横を灰羅が付いていく。それが彼らのいつものポジションだった。


「ま、早めに帰ってこのディスクインストールしとくよぉ。キャラメイクもあらかじめしておけるのぉ?」

「ええ、勿論。ま、あらかじめ活動の事、掲示板に報告しといたほうがいいと思うわよ? あとディスク割ったら刺しに行くから」

「……了解ィ。ま、元々いつも入ってるとは思われてないだろうけどねぇ~」


 伝票をカウンターに置くと、店員がレジスターに打ち込んでいく。その姿を見ながら、葉楽は財布を取り出す。


「1,600円になります」

「2,000円でぇ。じゃ、行こっかぁ」

「あんたの家真反対でしょうが」

「あはは、そうだったねぇ。じゃ、また明日、えっと、なんて名前だっけ、あのMMOの名前」


 支払いを済ませながら、葉楽は灰羅に目的のゲームの名を聞く。すると灰羅はない胸を張ってその名を告げた。


「クリエイト・ワールドよ。覚えとけないならメモとっときなさい」

「はぁい」


 素直にメモする葉楽。その脳はよっぽどAMに特化しているらしい。


 ―――――


 ~~~~~


 48:名前:ローゼス・ノブレス

 えぇと、つまり、高ランクプレイヤは軒並みアームド・メカニックにも活動の場を広げるのか


 49:名前:バッド・バード

 そーゆーこと。ランク1もランク5もランク9も僕の知り合いのトップテンハイランカーは全員移動するって。

 んで、最初のうちは向こうに専念するってサー。

 そのせいで前の報告スレはお祭り騒ぎ。

 せっかく沈静してきたってのにまたお祭り騒ぎになりそうだ


 50:名前:ヴァイス・フリューゲル

 ま、詳しいことは過去ログ漁って欲しい。ま、うちらもまったりと制作活動できるなら広げてみてもいいかもな


 51:名前:パルス・イーター

 え!?ロゼまで向こう行っちゃうの!?俺に誰が教えてくれんの!?


 52:名前:オーガ・ハウリー

 オネーサンが手とり足取り教えてあげましょう


 53:名前:バッド・バード

 ↑だぁっとけ痴女。依頼拒否すんぞ


 54:名前:ローゼス・ノブレス

 ↑ハイランカーの風上にもおけない痴女が。笑わせる


 55:名前:ヴァイス・フリューゲル

 ↑セクハラショタコン年増の三重苦女が。通報すんぞ


 56:名前:パルス・イーター

 ↑ごめん今この場で会話してることすら譲歩なんだ。次言ったらマジ通報


 57:名前:オーガ・ハウリー

 あんたら辛辣すぎない!?


 58:名前:カラード・トール

 ぱぱー、ままー、ちじょってなぁに?


 59:名前:レイヴン・クロウ

 しっ、トール、目を合わせちゃダメよ!


 60:名前:コロナ・フェンサー

 トール、痴女ってのはHENTAIな女のことさ。HAHAHA!


 60:名前:マリア・ガトル

 以上、有名プレイヤのコントですた


 61:名前:ショック・オーナメント

 ↑そこ以外に突っ込みどころがあったろうに


 ~~~~~


「ううん、あの生意気ランク9もしばらく向こうに専念するなら俺も気にする必要もないかなぁ。バッドもヴァイスもくるんならパルスも来ればいいのにぃ」


 パソコンで掲示板を一通り見た後、時計が日付変更三十分前になっている事を確認すると、葉楽はパソコンをスリープモードに設定し、パラダムをかぶる。

 パラダムはヘルメットとゴーグルが合体した形になっており、脳波コントロールにより操作し、思った動作をそのままできる、VRを認識させる事に特化させることにより普及率を上げたものとなっている。どこかの苦学生な偽善者も嫉妬深い不幸な少年も手が出せる1万円ポッキリとなっており、これを起動させている間は使用者は一切身動きが取れないが、その分リアルな感覚を堪能できる。リアルすぎて脳に悪影響を与えることもあり、リミッターが取り付けられてはいるが。一定以上の負担で強制ログアウトである。

 ちなみに、AMの体感Gはリアルの肉体を鍛えていなかったら高機動機体の場合強制ログアウトの憂き目に合うため、ハイランカーは大体体格が良い。例外も多く、ランク1、ランク5、ランク8は高校生1学年ということもあり、比較的細身である。公式大会に出場した人間でしか比較できないため、ランク9は例に漏れず筋骨隆々派、線の細い美少年派、中性的な男の娘だよ派に分かれている。リアルの知り合いであるランク1の証言でAI説と女性説は否定され、外見は本人の希望で明かされていない。


 葉楽がパラダムに新しくインストールされた【クリエイト・ワールド】を選択すると、妙な浮遊感を感じたあと、無機質な空間、通称【VR設定世界】に降り立つ。設定世界でゲーム内でのHNを決め、初期ステータスと初期職業を決めることとなる。


【ようこそ、クリエイト・ワールドの世界へ。あなたは今から、剣と魔法、だけでなく、銃、槍、弓、槌、様々な素材で生み出せるものすべての世界へと旅立ってもらいます】

「ワールドの世界って、世界と世界がかぶってんじゃんってツッコミは置いといてぇ、何も制限がないんじゃ魔法が使えるだけで他は現代世界と変わらなくなっちゃうと思うんだけどぉ」

【その心配の必要性はありません。石油の類は取れないため、全自動(オートメーション)の工場は作れなくなっております。さらに、機械に製作を任せた武具にはステータスボーナスが付与されないため、手作り(ハンドメイド)が得策かと】

「鍛冶屋がいたほうがいいのかあ。ポーションとか矢とか数が必要なのもそんなシステムに?」

【消費アイテムには適用されませんし、消費アイテムにはレシピシステムが搭載されております】

「なるほどねぇ。職業としての調合士はあまり必要ないわけだ」


 葉楽は現れたヘルプキャラクタに質問をぶつけ、キャラ作り(メイク)の方向性を定めていく。


「……序盤はぁ、銃とかは作れないわけ?」

【スキルとして登録されているため、初期装備の中の一部に入っておりますが】

「最初に作れないのは?」

【初期装備の剣、槍、弓、槌、鞭、銃、杖、徒手空拳の中のスキルを組み合わせるボウガン、薙刀、ガンブレードなどとなっております】

「ふぅん、当てはまらなければ無理やりにでも当てはめられるわけかぁ」


 そう言いながら、葉楽はどうすれば一番AMでのプレイスタイルを崩さずに戦えるかを検討する。


「んじゃ、初期武器は銃で。スキルは?」

【一覧をウィンドウに表示します。その中から十、選択してください】

「ん~」


 葉楽はスキルウィンドウをスライドし、一覧を眺める。


「……詳細を見る方法はぁ?」

【一回タップしてください。二回タップで選択となります】

「了解」


 そして目に付いたものをタップして、詳細を確認していく。

 その内、目に付いた十のスキルを選択した。

  その後、日付変更ギリギリまでステータス配分を考え、決定を押す。


「これで」

【では、名前を入力してください】

「あいあい」


 目の前に大きく広がるキーボードを操作し、ネームディスプレイに入力した。


「【ローゼ】。それが俺の、この世界の名前」


 葉楽は目の傷をなぞりながら、そう告げた。

 要するに、邪気眼系中二病である。ていうかローゼが名前なら、ローゼス・ノブレスは「ローゼの貴族」になるのだがそれでいいのだろうか。


【了解致しました。では、ローゼ様。クリエイト・ワールドの世界をお楽しみください。光が消えたらそこはもう一つの世界となります・・・】

「はぁい」


  そして葉楽。いや、ローゼは光に包まれる。そして光の粒子と化して天へと登って行った。

【CN】ローゼ

【職業】銃士

【取得判明スキル】

武具スキル銃技能

他種スキル???.???.???.???.???.???.???.???.???.???

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