表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

おじいちゃんの宝箱(後編) 創業40日目

「なんか、腹減ってきたぜ・・」

坂上の呟き声が聞こえてきた



「牧島さん、そろそろ、休憩にしましょうか」

坂上の呟きが聞こえたのか、ほのちゃんが店長の牧島さんにそう提案した。


「はいお嬢様、もうお昼ですね。じゃあ昼ごはんにしましょう」


「うお~まじっすか、やっほう~!昼飯だあ~」

坂上は余程、腹が減ってたみたいだ


それにしても、やっと昼飯だ・・朝6時から、ぶっ通しでゴミ拾いは、きついぜ流石に

だが、泣きごとはいってられねえ、ほのちゃんも頑張っているんだから



「あ、そうだ、さっき連絡があってね、もうすぐ絵美留さんが来ると思うんだけど」


「えっ、あいつ来るんですか?」


「何か問題?真治君!」


「あ~いや、あいつ、勝手にほのちゃんと友達宣言してるだけだよね?ほのちゃんは、人がいいから、いやだったら断った方がいいぜ」


「そんなことないよお、絵美留さんは一緒にいて楽しいよ、真治君も仲良くしてあげてね」


「まあ、ほのちゃんが、そういうなら、仲良くするけど・・」


もとはと言えば牧島さんが悪いんだ。絵美留が2回目に来店した時にちょうど、ほのちゃんもいて「あの方が8番目に来店されたお客様です」とか紹介しちゃったからだ

彼女は高校一年生で、ほのちゃんが高校二年生だから年が近いこともあってすぐに友達になってしまった。



「祐樹!飲みモノ買ってきてくれ」

「へ~い」


牧島さんはジャケットの内側から黒色の長財布を取り出し、一番年下の坂上に声をかけた

「これで頼む」

「3千円もくれるんっすか?」


「ここから500mほど行ったところにドトールがあった。人数分買ってきてくれ」


「なるほど、自販機じゃないわけね!了解っす!お嬢ちゃん何にします?」



「そうですね~祐樹君のオススメでいいよ」ほのちゃんが言い終わったところで


「わ~い。じゃあ私はアイスロイヤルミルクティー。ちゃんとシロップもとってきてね。坂上さん」


いきなり滝川絵美留が現れた。

「おい、お前!いきなり出てくるんじゃねえよ!」

ビックリした坂上が絵美留に向って言った


「いや~最近、私の友達の間で気配を消して近づくのが流行っててね」


「知らねえよ、そんなこと」


「あら、絵美留ちゃん。こんにちは」


「こんにちは~穂乃果さん、牧島さんも!あと、阿部!」


「あと、ってなんだよ。絵美留!ゴミ拾いもしないで、昼飯時を見計らって、ちゃっかりすぎるぞ!」


「うるさいぞ!阿部!執事の癖に・・しょうがないでしょ!一時間前に電話して知ったんだから!」


「だあ~!俺は絵美留の部下じゃねえ!それに執事じゃねえよ!ボディーガードだ、そして、なんで坂上にはさん付けで俺は呼び捨てなんだ?」


「阿部が一番弱そうだからだ」


「まあ、否定はしないけどな」


「そんなんで、よくボディーガードになれたな」


実際、俺は弱い。

というか人生で殴り合いの喧嘩なんかしたことないし、自分の強さが分からない。

そもそも、ほのちゃんのボディーガード6人のうち武闘派と呼べるのは2人だけだ。

牧島さんは元警視庁捜査1課で坂上は総合格闘技のプロを目指しているらしいから・・

で・・残りの4人は全然そう言った経験はないんだけど、ほのちゃんが面接の時、顔と特技で採用を決めたらしい。

俺は我ながら凄く運がいいと思う。

何も取りえがなかった俺はゲームの知識だけは誰にも負けませんといったら採用だった。後でなんで採用してくれたのか聞いたら、

ほのちゃんの親父は携帯ゲーム会社の社長だからだそうだ。


「ねえ、他の三人は今日はいないんですか?」

絵美留が牧島さんに聞いた


「ああ、今トイレ掃除をしているところです」


羽田さんと、柴田さん、それに金沢さんは公園のトイレ掃除をしている。

7人でじゃんけんをして負けたからだ。


「真治君!3人を呼んできてくれる?お昼にしよ」


「は~い、行ってきます」

そういって、俺は公園の一番、東側にあるトイレに向った。


おお、トイレが凄くピカピカになってる。すごいな。

「みなさ~ん。昼飯ですよ~」


「おお~飯か!腹減ったぜ、まったく!嬢ちゃんの思いつきの慈善活動に付き合うのも大変だ!」

柴田さんがタオルで汗を拭きながら言った。


もう晩秋だというのに汗かいてるなんて、よっぽど真剣にやってたんだな・・いつも小言や嫌味が多いのに意外とこういうことは真面目なんだな


「あれ!羽田さんは?」


「まだ、一番奥のトイレ磨いてるよ」

いつもクールな金沢さんが言った。



「羽田さ~ん!!昼飯ですよ~」

もう一度トイレの奥まで聞こえるように大声で呼ぶと


「はいは~い!今行きますよ~」

といつものテンション高めの声が聞こえてきた。



「えみるさ~ん、お久しぶりで~す」

一番年上の羽田が言った

柴田さんと金沢さんも軽く絵美留に挨拶をした


「皆さん、ドトール行きますけど。何がいいっすか?」坂上が3人に聞いた


「なんでもいい。ただし、ウマいやつだ」柴田さんが言う。

「じゃあ俺も」金沢さんもそれに合わせる。彼は基本必要最小限しか喋らない

「じゃあ私もで~す」羽田さんもそれに続く

「みんなホットコーヒーにしますよ」

「私はアイスロイヤルだぞ!」絵美留が念を押す

「へ~い、シロップ付きでしょ、分かってますって、じゃあちょっと行ってきます。」


「さあ、お昼の準備をしましょうか」

ビニールシートを広げてサンドイッチの入ったボックスを開いた


「わお!サンドイッチ!!おいしそー」絵美留が目を輝かせながら言った


「柴田!クーラーボックスを車から取ってきてくれないか?」牧島さんがそう言うと

「うい~っす」と言って柴田さんは車の方へ歩き出した


「クーラーボックスに何が入ってるの?」絵美留が牧島さんに尋ねる

「店のプリンだ」

「絵美留のはないけどな、7個しかもってきてない」俺がそう言うと

「え~そんなあ」

当たり前だろ・・いきなり来てあるわけない・・世の中の厳しさを教えてやらないと・・と思ってると

「絵美留さん!私のプリンでよかったらどうぞ」とほのちゃんが絵美留に言ってしまった。


「お嬢様のは駄目です!店のプリンの味が変わっていないか、定期的に試食していただかなくては」牧島さんが注意する


「じゃあ、私のをさしあげま~す」


「やった~羽田さん、ありがと~」


「あっそうだ!私も新作プリンを作って持ってきたんだけど、穂乃果さんアドバイスもらえないかな?もちろん、みんなの分もありますよ」


「楽しみですね、絵美留ちゃんのプリン」


「たまには気がきくじゃね~か。穂乃果の考えた、店のプリンよりはまずいだろうけど」

クーラーボックスを車から取ってきたばかりの毒舌の柴田さんが薄笑いを浮かべながら軽く言った。


「もう、そんなことないって、結構上手でびっくりするよお。ゴメンね絵美留ちゃん」


「いえいえ、ホントのことですから・・私はまだまだ修行が足りないのだ」


「それにしても皆さん、お休みの日までゴミ拾いされて大変ですね~」

牧島さんに向って絵美留がそう言う


「そうでもないですよ、きちんと週休2日でお休みいただいていますし」


「そうか、プリン屋は金・土・日が休みで今日は日曜日だから・・でもあれ?金土は誰が穂乃果さんのボディーガードをしてるの?」


「あれ~えみるさんは~日曜日しか穂乃果さんと遊んだことがないんですか~別の曜日に行けばまた別のボディガードがいるんですよ」

羽田さんが口を挟む


「ほえ~ほんと~凄い大勢いるんだね~全部で何人いるの?」


「それは、護衛の特性上、正確にお答えするわけにはいきません」

牧島さんが勘弁してよという顔をした。


俺が知っている限りではプリン屋さんチームの他にパン屋さんチーム、お好み焼き屋さんチームがあるらしく、全部、ほのちゃんのお店でレシピも彼女が考えたお店らしい

俺たちプリン屋チームは月曜日から木曜日までプリン屋、金曜日、土曜日が休みで日曜日に、ほのちゃんの護衛をしている。実際、他のチームにはあったこともないし、

さらにその上には、ほのちゃん直属のボディーガードがいるらしい。

牧島さんはその直属のボディーガードに何回かあったことがあるそうだが・・


「おまたせ~買ってきましたよ」

坂上がみんなにドトールで買ってきたホットコーヒーを手渡した。


「いっただきま~す」


昼飯の時間となった。

たまごサンドにハムレタスサンド、ツナサンドにカツサンドどれもうまそうだ

「おいし~このサンドイッチ」

「ほんと、うまいなこれ」

「さすがはお嬢様です」

「ほのちゃん、おいしいよ」

金沢さんはみんなのコメントに頷いている

「さいこうで~す」


「だいぶ公園内はきれいになったよね。食べ終わったら、公園の周りを清掃しておわりにしましょう」


「了解!」


たまごサンドを食べ終わり、今度はカツサンドをほおばろうとしたところで・・


「あれ何かな?」突然、金沢さんが指差して言った

皆が指差した方向を覗きこんだ


「ほんとだ、あの女の子達、何をやっているのかしら」

ほのちゃんが突然立ち上がり、100mほど先を見た


「なんだか、変なポーズで写真を撮っていますね」



「背伸びをしたり、体を揺らしたり」

写真を確認してはなんだか困った顔をしている。


「何やってるんでしょうか?牧島さん」

ほのちゃんが牧島さんに聞いた・・


元警視庁捜査1課の実力を見せてもらいましょうか・・俺は牧島さんの推理を楽しみに待った


「何とも言えませんね」あっさりと牧島さんは返した


「面白動画でも撮ってんじゃねえの」柴田さんが持論を唱える


「はいはい、俺ちょっと確認してきますよ」真っ先に切りだした俺は手をあげた

「いやいや、ここは私が行ってきま~す」羽田さんがすぐに、負けじと手を挙げてくる

「俺が行くよ。一番年下で年齢も近いっしょ?」坂上が年下アピールをする


「そうね、みんなで行っても怖がらせちゃうね、ここは祐樹君にお願いしようかな」

う~ん残念!ほのちゃんは俺ではなく坂上を指名した


「よっしゃ了解!じゃ行ってくるよ」

中学生と小学高学年ぐらいだろうか女の子二人にむかって坂上が歩きだした


「あっちは、祐樹君に任せて・・ねえ、話は変わるんだけど、絵美留ちゃんのお友達の柏木愛海さんってどんな方なの?」


「えっ、アミアミにあったの?」


「ええ、何回かお店に見えたので、挨拶したんです。絵美留ちゃんと同じ初期からの常連さんですし」


「アミアミもプリン好きなんだね~、学校でのアミアミはそうだね~頭がよくって、なんだか喋り方が上品でどこかのお嬢様みたいなかんじかな・・・あとは、今ファッションに興味があるみたい。可愛い腕時計してるしね」


いや、実際お嬢様なんだよ・・

あの時計は元ブランド買取ショップ勤務の羽田さんが、

クイーン・オブ・ネイプルズと言っていた。

なんでも家が一軒買えるぐらいの時計だそうだ。

羽田さんからその事を聞いた、ほのちゃんは、柏木愛海のことが気になったらしい


「そっかあ~頭がいいんだ・・なんだかわかる気がする」

当たり障りのない返答をほのちゃんはした。

あまり深く詮索しているように見せたくないんだろう。


「あれ~祐樹さんと女の子のところに警察の方がやってきましたよ~」

羽田が面白そうに言った

ホントだ坂上のところに警察官がやってきた。職質してるんだろうな、きっと


「ありゃりゃ、ありゃどっからどうみても幼女誘拐にしか見えないぜ!スーツにグラサンだもんな」ニヤニヤしながら柴田さんが言う


「柴田さ~ん!穂乃果さんの前でそれを言っちゃ駄目ですよ~」

羽田さんが柴田さんに注意する。


「ああ悪りい悪りい!」

頭をかきながらあまり悪びれずに言う


「大丈夫だよ。そんなに気をつかわなくても」

ほのちゃんは柴田さんと羽田さんに向って微笑んだ


「えっどういうこと穂乃果さん」

絵美留が咄嗟に聞いてしまった。馬鹿だな・・


「ああ、私、2年前に誘拐事件にあったの、それでボディーガードをつけているわけなんだけどね」


「2年前の誘拐事件って・・あっ!・・なるほど・・・ね」

しまった!変なこと聞いちゃったという顔を絵美留はして、言葉を詰まらせた。

適切な言葉が思い浮かばないのだろう。

あれほど世間を騒がせた衝撃的で凶悪な誘拐事件だ。絵美留も思い出したはずだ。

しょうがない話題を変えてやるか・・何か面白い話題はと・・・


あれ?肩車?なんで?


「あ~~っ、あいつ等!!何やってんだ」

と言いつつ女の子達と坂上、それに警察官のいる方向を指した


「おいおい、なんで坂上の上に警察官が乗ってんだ!面白動画をとるのに協力してるのかよ」

柴田さんは言う。


「そうだよね~YouTubeアップされたら、どうするつもりなんだろ。勤務中なのに、ばかだな~」

絵美留が警察官の動きに突っ込みをいれた


「まあ、自業自得だろ」柴田さんが警察官の行動を突き放した


「牧島さん・・どう思います」

と俺は聞いてみた


「ここまで、見たところ・・ある条件を満たすような写真を撮影してるんじゃないのかな。何度も撮り直しをしているみたいだし。ある条件がコンセプトの写真大会でもあるのかも知れない」



なるほど、そう言われるとそのように見えてきた

彼らは、一度肩車を崩し、今度は一番小さな女の子を一番上にして3人で人の柱を作った。

お姉ちゃんらしき女の子が携帯を構えて写真を撮っているようだ。

そして次の瞬間、携帯を覗きこみながら喜んでジャンプをした。


坂上も警察官も妹らしき女の子もみんな笑顔だ。


彼らは4人で携帯を覗きこみ感激しているようだった。


「よほどすごい写真が取れたんだな・・」牧島さんが感心して言う

「みたいですね」俺も相槌をうった

「あの喜びようは、きっと、柴田さんが言うように面白動画がとれたんだよ。坂上さんもやるなあ!」絵美留がそう言った


坂上がこちらに向かって走ってくる。

「よかったね、面白動画うまく撮れて」

絵美留が言った。


「は?面白動画?」


「え?違うの?」


「まあいいや、それより、俺のプリンまだ残ってるでしょ。あの女の子達に食べさせてあげたいんだけど」


「あ、ちょっとまって!私のも持って行って。女の子は二人だし」

ほのちゃんは自分のプリンも坂上に渡した。


「お嬢様・・まあ仕方ないか・・祐樹!あの警官にも食べさせてやれ」

牧島さんも自分のプリンを渡す


「ありがとうございます、牧島さん」


「おい、坂上、俺のもやるよ」


「もう数、足りてるよ」


「お前も一緒に食べてやれよ」


「ああ、サンキュ、ところで真治さんゲームに詳しかったですよね?」


「まあな」


「四宮なんとかっていうゲームプロデューサーって知ってる?」


「四宮孝作のこと?」

その名前が坂上の口から聞けるとは思わなかった・・


「そうそう」


「ファミコン全盛期のゲームプロデューサーだな。代表作は「スターシェバリエ」というシューティングゲーム。彼の作ったゲームは6本あってすべてマニア向けだ。正式には公表されていないが6本それぞれにコンセプトがあって記憶力、計算力、創造力、直観力、論理力、溝成力を鍛えると言われている。どのゲームも難易度が高く、買った人のクリア率は1割ぐらいらしい。ちなみに俺は記憶力が上がると言われる「タンブリンダイス」だけクリアしたことがあるけどね」


「そっか、クリア率1割か・・・そりゃあいいや!あの女の子、まだ当分の間、ジイさんと遊べそうだな・・」

坂上が笑いながら言った。


「ジイさん?」


「あの女の子達のジイさんが、四宮孝作だってさ、真治さんのゲームの知識もたまには役に立ちますね」


「まあな」


「はい」

無口な金沢さんが綺麗に包んだプリンを3つ渡した

「なにこれ?」坂上が聞いた

「僕と柴田さん滝川さんのプリン、あの方たちのお土産に・・」



「今日の食後のデザートは、絵美留のまずいプリンで我慢するか」柴田さんが毒を吐いた


「もう、そんなことないよ、さっき自信作だって聞いたし、きっと美味しいよ」

確かにほのちゃんのいうように、絵美留の作ったお菓子はそこそこ美味しい


「食べて驚くなよ!」柴田さんに絵美留が言う


「ありがとうみんな、絵美留のプリンで我慢してくれて!」


「一言多いぞ!」絵美留がつんとした顔で言った


「冗談だよ!じゃあ俺もう一回行ってくるよ!」

そう言って坂上は皆に頭を下げ

嬉しそうに坂上は、女の子達のところに駆けだした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ