八話 僕の彼女への謎は深まった。
「……いっそ、地獄でもいいから手料理がよかった」
「なに、ぼやいてるの?」
カップラーメンを啜りながら、彼女は不思議そうにこちらを覗き込む。
「あ、もしかしてカップラーメン駄目だった?」
「駄目じゃない、駄目じゃないんだけど……」
とりあえず、お腹がすいた。早く食べよう。
ズルッ、ズルッ。
「うー、お腹がすいている時は何でも旨い……や?」
普通のシーフードな味。しかし、それも最初だけ。後から、謎の臭みと甘味が口一杯に広がっていき――
「ちょっと待て!!! なにこれ!? なんの味!?」
「え? やっぱり不味かった?」
「不味いなんてもんじゃ……」
「いやー、やっぱしおしおのりんごは駄目だった?」
「…………は?」
「いやー冷蔵庫の中にりんごがあったからわたしと、君のに入れてみたんだけど、けっこうおいしいから、大丈夫――って、なにラーメンを逆再生してるのよ。汚い……」
「おろろろろ。はぁ、はぁ。ぜぇ、ぜぇ。……ふざけんなぁ!!」
口の中に、とても嫌な味が広がっている。
「まずりんごをラーメンにいれるな!!」
「でも、隠し味に」
「それはカレーだからね!?」
「でも、以外においしかったと思うけど」
「そのりんご、確実にくさってるんですけど……。しおしお、て」
「そうなの? でも、ラーメンの香りとりんごの香りがまた絶妙に……」
「……」
彼女の舌と胃袋はオリハルコンで出来ているようです。