二十話 僕と初めての教室
「ほら、ここがわたし達の教室だよー」
昇降口から続く、みしみしと軋む廊下の先、そこにその部屋はあった。
「教室ってここだけ?」
「ううん。あと一つ、あるよ」
全部で2つ、思った通りここは弱小高校らしい。
雪谷さんは目の前の引き戸を開け、中に入り、僕もそれに続く。
教室は、そこらの高校と何一つ変わりない、ところだった。
40人は授業を受けれそうな広さ、深緑の黒板。その上にはスピーカーが設置してある。ただ、違和感がある。広さに対して、机と椅子があまりにも少ない。全部で6組だろうか。二席ずつ、縦に並べてある。
一席は小学生のような女の子が座っている。そして、一番右端の席には、花が置いてあった。
花が机に置かれる。それが示すこと、暗示。
この教室にいた人が、一人亡くなっている……。
でも、横にいる雪谷さんをはじめ、ここで会った人たちは全く悲しむそぶりを見せなかった。
それは、僕に気を使ってくれてのことなのか。それとも、いつもより元気がないのか。
よくわからない。ここの人たち、会った人たちみんな。
「あー、音波! どこ行ってたんだよ! あたしを置いていきやがって」
座っていた少女が振り向く。
――卯原さんだった。
「いやー、ごめんごめん。なかなか海月君たちがこないから」
「むー、茉莉≪まつり≫もどっか行っちゃうし。おかげであたしは暇だったんだかんな!」
「あはは、ごめんごめん」
にぎやかに笑う彼女たち。でも、それっておかしい。
やけに机の上の白い花は視界に入ってきた。
「ね、ねぇ雪谷さん」
「ん、どうしたの?」
「あ、あれ……」
僕はあの机を指差す。
これは、聞いてはいけないことだったのかもしれない。そっと、心の中から消しておきたいものだったかもしれない。
でも、そんな懸念は心の奥にしまう。
疑問を解消したい。心が知りたかった。
「あぁ、あれ?」
「うん、あの、花がのった机……」
「あれ、海月君の席だよ」
「……は?」
「いやー、今日からこの教室で勉強する海月君へ、わたしからのスペシャルプレゼントなのだー」
「あ、あはは」
「どう? 気に入ってくれた?」
何とも嬉しそうな顔で訪ねてくる雪谷さん。普通、こういうときは落ち込ませないよう気に入ったという回答がもっともベストなのだろう。けど、悪いが言わせてもらう。
息を大きく吸い込み、声を出すんだ僕。
「僕はまだ死んでないっ!!」
細かく刻んでもようやく二十回目!
先が思いやられますが、ひっそりとやっていきます!
感想くれると嬉しかったりです!