十五話 僕の通学路
真新しい雪の上に、自分の足跡をつける。
踏み出した足は思った以上に深く刺さり、転びそうになってしまう。
「あ、危なかった」
なんとかバランスをとりながらまた次の一歩を踏み出す。
一歩、二歩、三歩……。
「うわっ!」
崩れた、バランスが。
滑った、雪の上。
僕は顔面から雪の中へダイビング。
「う、海月君……」
「……」
雪に埋もれて息が出来ない。
手を突き、どうにか体を起こした。
すると、雪谷さんが今にも笑いそうな顔でこちらを見ている。
「な、なんだよ」
「かわ……ぷくく。可愛い、くく」
「うるせぇ!!!」
ニヤニヤした顔で小刻みに震わせる雪谷さん。
すごく、むかつく。
「いやー、君って雪ってのに慣れてないんだね~」
手を差し伸べる彼女。僕はその手を掴んだ。
「冷たっ」
手袋越しでも伝わる彼女の手の温度はやけどしそうなぐらいだった。
「冷たいって、手袋してるだけでも全然違うじゃん」
こっちは直接雪を触って、しもやけになりそうなんだよっ。
「だから、さっき聞いたのに」
「え? 何を?」
「君こそ大丈夫なの? って」
「え? ちょっと待って。さっきのってそういう意味だったの!?」
彼女は首を傾げて言う。
「それ以外になにかあるの?」
「……もういいです」
これから行くところの話かと思った。
ざく、ざくと雪を踏み分け進む。
どれくらい歩いただろうか。見れば、目の前には雪かきされた、アスファルトの道路。朝、早いせいか車は一台も通っておらず、少し寂しい感じがする。
しかし、住宅が幾つか並んでいて、どの家にも屋根一杯に雪が積もっていて。それは、どこか新鮮な気持ちがした。
「ふぃ~、やっと道路か~」
息を大きく吐き出しながら、立ち止まった。
「やっと、ってまだそんなに歩いてないでしょ」
雪谷さんは、そんな僕に苦笑を返し、そのまま歩く。僕は、休憩する間もなくまた歩き出す。
「僕にしては結構歩いたよ」
「はいはい」
「足首が複雑骨折しそうだよ」
「普段、どれだけあるいてないの!?」
……確かに。これだけですぐに疲れるって、僕は普段運動をしていない人だったのかもしれない。
「まだ、十分の一も歩いてないのに……」
「……え」
じゅ、十分の一? 今、十分の一って言ったの?
「そうだよ、十分の一だよ」
「うえええ……」
「あは、まだまだ旅は始まったばかりなのです!」
そんなわけで、野を越え、山を越え。まぁ、歩いて四十分程度で、目的地に着いた。
木造の二階建て。一軒家よりは大きいが、他のそれと比べると決して大きいわけではない。
そこらの小さい公園と変わらない程度のグラウンド。誰も人がいない。
――学校。
この封鎖された町の中にある、たった一つの学校。
。
僕は、ここで一体どんな生活をするのだろうか。
期待と不安。僕は、そんな感情を織り交ぜながら、目の前の雪の積もった学校を見ていた。