表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/23

十四話 僕の本当の意味での初の食事。

テーブルには一般的な朝食が並ぶ。


 ご飯、味噌汁、卵焼きと和風なありふれた料理だ。見た目はとてもおいしそうで今すぐにでも食べたいくらいだ。


 しかし、油断は禁物。僕は昨日、彼女の料理によって何時間かトイレにこもる羽目になってしまったのだ。


「海月君……そんなにじろじろ見なくても」


 不審者を見るような目で見てくる雪谷さん。

 だが、そんな目で見られても、これは僕の命に関する。とても、とても重大な任務。ここは戦場だ!


 雪谷さんを見ると、おいしそうに卵焼きをほおばっている。これだけ見たら全然大丈夫そうなのだが。


「海月君、食べないの? お母さんの料理、おいしいのに」


「へ? な、なんて?」


「海月君、食べ」

「その後」


「お母さんの料理……」


「おばさんが作ったの!?」


「うん! 朝が早いから、今日は作って行ってくれたみたい」


「……」


 僕の大切な時間を返して欲しい。


「んじゃ、いただだきまーす」


「……なんでそんなに態度が急変するの?」


 僕は雪谷さんの冷たい目線をあしらい、箸で卵焼きをつまむ。


 そして、口をあけた時、ギュピーンと頭に稲妻が走る。


 コレハ、ホントウニ、アンゼンナノカ?


 

 考えれば、作った人は彼女の母親。つまり、雪谷さんと同じ味覚の持ち主だったりした場合だ。


 目の前で美味しそうなにおいを放つ、この卵焼きに使われている卵が、どれくらいたったものなのか分からない。


「……なんでそこで固まってるの?」


 そんなことを呟いた雪谷さんは、何かを決めたように、よしと頷いた。


「んがぼっ!?」


 突然、彼女の手は僕の箸へと伸び、卵焼きを無理やり僕の口へ押し込める。


 や、やばい。絶妙な塩加減。卵のふんわりとした食感。特有の甘い香りとがハーモニーを奏で。


「う、うまい!!」


「でしょ、でしょー」


 雪谷さんがうまいというものは、信用できない。が、これは美味しい。とてもうまい。


 昨日からろくに食べてない僕は、次々と料理を口へと運んでいった。


 

「ふー、食った食った」


「……君ってこんなに食べるんだね」


 それは、殆どの体のエネルギーを水に流してしまったからに違いない。


「これから作りがいがあるなー」

と、どこか遠くを見ながら呟く彼女を見て、背筋が凍った。


「ごちそうさま」


 席を立ち、洗面所へと向かう。


 洗顔したり、いろいろと用意を済ませ、玄関へ。


「雪谷さん、本当に大丈夫なの?」


「うん、全然大丈夫! 問題なし、だよ。君こそいいの?」


「僕に躊躇う要素はないよ」


 玄関の扉を開ける。


 目の前に広がった景色は、真っ白な世界。


 ちらちらと降り積もる雪は、まるで鳥の羽根のように、ひらひらと舞っていた。


更新速度は気まぐれです><

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ