表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/23

十三話 僕の朝。

「……て」


 ……覚醒しかけの寝ぼけた頭。重い瞼はまだ開かずに視界は真っ暗である。


「……きて」


 呟くような声が耳元で聞こえる。何言ってるか、よく分からない。


「……てよ」


 肩が揺さぶられ始める。


 あ、あと三分ー。


「起きて。早くおきよーよ」


 むにゃむにゃ。


「おきないなら――だよ?」


 ……。


「……怒った。喰らえ、必殺」


 ……。


「溝に直撃どーんぱんち~!!」


「ぐぼろっ!?」


 痛い! 呼吸が、息が詰まる! 腹部辺りに異常な痛みがぁ!!


 痛みに悶え、がばっ、と布団から飛び跳ねた僕と目を合わせ、彼女は一言。


「おはよう」


「あ、うん。おはよう」


 目の前には、肩まで伸びた茶色を帯びた髪を風になびかせ、朗らかに笑う少女の姿。


 うん、朝、女の子が起こしに来るっていうのも悪くない。いや、良い。……と、普通なら思っているところだ。普通なら。


 だが、僕は騙されない。いくら可愛い子が居ようと、とても許されざる行動は見逃せない。


 僕は、覚醒したばかりの頭を使い、手に雪谷さんの肩を掴むように命令した。


「ねぇ、なんかとてつもなく痛いんだけど……」


「ん? あ、お母さんのせいじゃない?」


 とぼけるか。


 まぁ、確かにそれも含まれるだろう。しかし、今、現在時点での痛みは――


「雪谷さんのせいでしょ!!!」


「え? なんでわたし……?」

 

 心底不思議そうな彼女には、言葉の弾丸を放つしかない。


「……溝に一撃入れたよね?」


「うん」


「白を切ってもだめだよ。この部屋には僕と――へ? 認めた?」


 ……この人、あっさり認めた! しかも、悪気なし!?


「……あのね、人は殴って起こすものじゃないんだよ? 知ってた?」


「もちろん!」


「ちょっと待て! もちろん、じゃないよ!?」


 親指を立てている場合じゃない!


「しってるなら、なんで僕をなぐ――」


「早く起きないのが悪いのー」


 む、それを言われたら言い返せなくなる。


「ほらっ、早くご飯食べよ。冷めちゃうよ」


「ん。りょうかーい」


 雪谷さんは早く降りてきてね、と言い残し、ドアをくぐっていった。


 ふぅ、と息を吐き出す。


 僕は周りを、朝の日差しが眩しいぐらいに入ってきているこの部屋を眺める。


 やっぱり、おかしいよな。


 人って、こんな短期間で仲良くなるものだっけ。


 もっと、面倒で、大変な手順を踏まないといけないのではなかったっけ。


 こんな、こんなものだったっけ。


「まぁ、いっか」


 手を上に組み大きく伸ばす。


 僕は、彼女に借りたブルーのパジャマを脱ぎ、クローゼットの中のワイシャツとズボン、学ランを取る。


 制服は、これでいいのかな。


 ワイシャツを着て、ズボンを穿き、学ランに腕を通す。


 よし、僕は自分の服を見回し、変なところがないかを確認する。そして、僕はリビングへと向かった。





    

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ