くの一(女忍者)④~くの一(女忍者)は忍び
花が咲き乱れるハプスブルク宮殿に警護警察が一列に並ぶ。
きれいに縦列に揃う警護隊員は皇帝に最敬礼する。
その広場の真ん中に皇帝は立ち師範と真美子は呼ばれる。
「そなたヤポーニャ。カルパチア山脈たるチェイテ城に行ってもらえるか」
威厳ある皇帝の前に畏まり三河武士とその娘は恭しく頭をさげた。
「皇帝さまのご命令。しかと承ってございます」
凛としたドイツ語で師範は答えた。
「よいっ」
首都ウィーンからの特使という一行に化けるのである。
「つきましては皇帝さま」
我が特使の派遣にもう一人任命をしてはいただけないか。
「うーむ我が孫であるか」
皇帝の顔が曇る。
何があるか
何がいるかわからぬ
山岳民族のチェイテなどにハプスブルク家直系の孫を同行させたくはない。
「おじいさま。僕は参ります。ヤポーニャの真美子と約束をしています」
皇帝孫はハプスブルク家を背負って立つ存在。
"かわいい子には旅をさせよ"
「ジイサマ。我がハプスブルク帝国の領地チェイテの問題です」
異国の師範が尽力されてハプスブルク家の孫は何もしないのは考えてしまう。
「仕方ないことを」
皇帝はしぶしぶ
かわいい孫の直訴を受けた。
「だが申し付ける!決して危険なことなどなきにいたせ」
皇帝孫には侍従と警護隊員を増員いたす。
「申し出はわかりました。おじいさま」
皇帝孫
"しめた!"
真美子と顔を見合わせた
"やったぞ!"
ほくそ笑みである。
「よしっカルパチアに行こう」
仲良しの真美子と皇帝孫はハイキング気分である。
宮廷の警護兵隊がズラッと並ぶ大広間にある馬車に乗り込んだ。
「しかしですなあっ父上」
皇王子(父親)は首を傾げて納得しない。
「チェイテなどこのハンガリー=オーストラリア帝国からみたら微々たる領地ですよ」
どうでもよい山岳カルパチアに我が息子を送り込むのであるか。
「父上の考えは解りませぬ。今上の皇帝は考えることが…」
孫をカルパチアなどに特使に出すことは高尚過ぎてついてはいけない。
皇帝と皇王子の親子に亀裂が入った瞬間かもしれない。
「うんうん。日本の諺に"かわいい子には旅をさせよ"があるらしいぞよ」
かわいい子に旅?
「お父上っ。それは違いませんか。皇帝孫はカルパチアに小学校から旅行にいくのとはわけが違う!」
ウィーンの宮殿はしばらく親子喧嘩が華咲いた。
ウィーンのハプスブルクからの"予期せぬ特使"を受け入れるチェイテ城。
カルパチアの長閑な山岳地帯は数日前から受け入れ準備に忙しい。
イライラ
「ウィーンの…宮殿から…皇帝の特使がやってくる?」
キィキィ~
女王エリザベート
布切れを引きちぎりながら
チェイテで苛立っていた。
「なぜに?…でございますか。どのような理由で…ハプスブルク皇帝がこんな山奥のチェイテに特使でございますか」
山岳の民家も乏しい淋しい帝国の僻地チェイテ。
華やかに鮮やかなハプスブルク家は似合わないではないか。
酪農家と山林が生業のカルパチア民族
このような貧乏民族に特使派遣とは
「ウィーンからわざわざ馬車を仕立てあげてございます」
ハップスブルクの皇帝の目的は何か。
真意がわからぬまま送り込むのである。
「あのお坊ちゃん育ちはなんですの。皇帝の尊い考えは辺境の地に住む"田舎の女王"に解りませぬ」
女王エリザベートはウィーンからの使者を受け入れてからイライラの日々。
なにやら胸騒ぎがしてしまいストレスが溜まる。
「キィ~キィ」
ヒステリックな女王さまと化していく。
夜な夜な
処女の侍女をひとり
断末魔の叫びを聞きたくて
ひとり
「血祭りにあげたい」
処女の生き血を浴びること
断末魔な処女の憐れな苦悩な叫び
ストレス解消のため
地下牢へ送り込みたくなる
「気紛れでぞんざいな皇帝がハップスブルク」
チェイテ城に特使の一団が来たらそそくさと返してしまいたい。
キィ~キィ
エリザベートはよからぬ災いを察知していく。
ピシャッ!
気紛れな皇帝に負けぬ我が儘さはエリザベート女王である。
ドンドン
チェイテ城を早馬が到着をした。
「申しあげます!申しあげます」
チェイテの門番は馬を導き入れた。