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真美子(マミコ)③~武士が欧州へいく

三河の岡崎から遠路はるばる西洋の未開の地に渡るのは…


「よいかっ(ぬし)たち」

将軍家康の外交特使として三河武士団は組織された。

江戸に出向き厳命を貰うとオランダ商船にて江戸から長崎経由にて一路西洋である。


厳選された野武士たち。


「将軍家康どのからの厳命はかなり厳しいものだ」


三河岡崎であろうと日本以外に旅立てという。


「異人館のうようよいる西洋にいかれるのである」


心してオランダ商船に搭乗をされよ


「岡崎の一向どの。しっかり西洋をハプスブルク帝国を見聞してまいれ。我が徳川幕府のために」


人選された三河武士に家族もいた。


「そちらは特にである」


一族は真美子(マミコ)の家族である。


真美子の父


岡崎城や名古屋城に雇われ"隠密の剣"の達人であり道場師範の身分である。


武士団に携える弟子は剣術・武術に長けていた。


「我が真美子は幼き娘でございます。西洋の道中同じに願いたい」


年の端10歳の幼き娘。


だが…


父親の仕込みがよく剣術をたしなむ。


街の道場では子供ながらなかなかの腕前を披露し"女剣士"の見込みがあったのである。


「幼女など足手まといではないか」


城家老は心配をする。


「我が身が西洋にありしは何年になるやしれませぬ」

師範の父親は幼き真美子にこそ剣術を覚え自らの道場後継ぎとしたかった。


真美子は大事なひとり娘である。


「よいっぞ。構わぬ」


そちの申し出は受理いたそうぞ


派遣の武士一団に子供があろうがなかろうが


たいした影響もない。


オランダ商船の欧州行きは長旅である。今では飛行機でヒトっ飛びで"こんにちはウィーンの皆さん"である。


長崎を出航をし太平洋から大西洋を抜けて地中海はマルセイユ到着である。


船旅ゆえ時化(しけ)に遭えば生きるか死ぬかの覚悟。

船旅は3ヶ月の長きだった。


「ようやく陸にあがれますな」


フランスのマルセイユ港。

視野にあるホワイトガルフ(白い崖)を目の当たりにし乗船者は拍手をして喜んだ。


三河武士の面々ちょっと元気なく


甲板から陸地を眺めてホッと胸を撫で下ろした。


「師範どの。真美子ちゃんはしっかりしておりますなあ」


希望峰を回船するところから揺れに揺れオランダ商船。武士団はくる日もくる日も船酔いに悩まされた。


師範と真美子。


この父娘は毅然として泣き言をも漏らさぬ気丈さである。


「私は大丈夫である」


父親は鍛練の賜物ゆえ強靭な精神力であった。


愛娘も幼少ながら頑丈なからだとは知らなかった。


「長き船旅の次は馬車の旅でございます」


マルセイユ港に待つは…


「お待ちいたしておりました。東洋のヤァーポンからおいでくださいました」


ハプスブルク家から出迎え馬車と馭者である。


「師範どの。こちらの異国人はすごいですなあ」


マルセイユの宮殿にハプスブルクの豪華絢爛な馬車が数珠繋ぎであった。


ハプスブルク御用達はあくまでもきらびやかで成金趣味である。


「まあっ綺麗なことでございます」


幼女真美子は思わずハッと息をのんでしまう。


岡崎の片田舎ではまずみない豪華さ。


徳川将軍の絢爛さとはまったく異なる美しさである。

「西洋という世界は」


戦国の世の日本と異なる文化文明の地であると実感をする。


「しかし師範さま。これからの旅はでございます。言葉がどうかなりませぬかな」


オランダ商船は通訳が同席してくれた。


「さようですな。我々武士のみでウィーンに向かうわけですからな」


師範はウンッ!と手を打つ

見よう見まねで意思の疎通をはかってしんぜよう。


いやっ!


武芸諸法度に通じる師範である。


「日本古来からの"読心術"が使えぬか」


身なり仕草を見て心理を知ってみよう。


「オランダ通訳がいうには異国という欧州。様々な民族があり言葉が違っているらしい」


語学を学問体系化して理解していては時間が掛かってしかたがない。


「忍法を応用してみようではないか」


師範の頭の中に青年期の学習が甦ってくる。


『忍術』


忍びの世界…


「お恥ずかしい話でございますか」


師弟の武士は身構えた。


"武芸の達人にはなりたいと鍛練したが"忍び"(忍術)は…"


武芸の範疇ならば堪えようが


武士団は二の足を踏む。


「お父様お教えください。読心術とはなんでございましょうか。マミコにはトンとわかりませぬ」


小さな真美子はシャキッと背筋を伸ばした。


「皆さまヤァーポンからようこそ」


ハプスブルク家諸侯は"ドイツ語で"首都ウィーンまで馬車で案内すると宣言をした。


だが


江戸時代の武士に言語が理解出来るわけがなく…


「なんとかでございますな。馬車に乗りなさいと申したようでございますな」


師範を先頭に用意された馬車にそれぞれ分乗である。

その時に…


武士の生命


刀剣に侍従が手を掛けようかとした。


馬車に乗りなさい


手荷物類はすべて荷馬車に搭載するのである。


「きっキサマ!(刀に)手を掛けるとは(なんたる不届きモノ)」


おとなしい侍従はびっくり仰天である。


「こちら西洋は油断もなにもございませんな」


武士らはしっかり刀を手に持ち馬車に揺られてまいるのである。


「ヤッポーニャは変わっているな。馬車に乗るぐらい武器を納めるべきである」

まるで敵の領地に喧嘩を仕掛ける"暴力的な出入り"のごときである。


「師範どの。これには参りましたな」


日本での風習。武士という特権。


厳格で厳しい試練の『武士道』が通用しない西洋とわかった。


三河武士団は紆余曲折を経てウィーンにたどり着く。

目の醒めるような広大な宮殿に通され皇帝に謁見を果たす。


「ようこそハッポーニャ(日本)」


長旅ご苦労様であると皇帝は感激してくれる。


凛々しきハプスブルクの皇帝。武士団を見て"剣術"と"鍛練の賜物"を見抜く。


師範は武士団を代表として徳川家康からの勅使を手渡した。(オランダ通訳の書いたラテン語)


「おおっ日本の将軍(ショウグン)とな。はてっ?」

ショウグン?


ラテン語には"天皇"(エンペラー)や"国王(キング)"はあるが


皇帝はキョロキョロして側近に知恵を貰いたくなる。

「皇帝さまの様子は。なんか怪訝な顔なさいましたなあ」


ラテンは苦手であろうか


翌日から


武士団は徳川幕府の特使として役割を果たしていく。

日本文化をハプスブルク家に紹介する。


「言葉の壁はいかがいたしますか。読心術は師範さまが頼りなんでございますが」


師範とても万能の獅子ではない。はっきり異国が理解されているわけではないのが苦々しい。


「まあっ言葉というのは。じっくり腰を据えて理解してまいろう」


勇敢な武士も異国情緒溢れるハプスブルクでは"借りてきた猫"であろうか。


「ハッポーニャ(日本)の"ショーグン(将軍)"はわかったか」


皇帝は特使の文面にまだまだ理解されない。


「皇帝さまに申し上げます」


東洋の神秘日本についてはオランダに尋ねてまいりました。


ようやく将軍や徳川幕府がハプスブルク家に馴染みとなった。

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