真美子(マミコ)②~徳川幕府に特使あり
中世の欧州諸国に栄華を誇るのは華麗なる王朝貴族たるハプスブルク家。
首都ウィーンに広大な宮殿を構え大帝国ハンガリー=オーストラリアの歴代皇帝が鎮座する。
ハプスブルク宮殿の周辺警護する軍隊。
ウィーンに本部を置く優秀な警察組織を備えていた。
宮中警護の警視総監(日本警察では)。
皇帝よりじきじきに命令がくだる。
「チェイテ領地の怪事件。村人の騒ぐ"神隠し"は立派な事件である」
若い村人の娘ばかりが犠牲者という。調査をせよ。
厳命を受けた警視総監はウィーン警察組織図を机に広げる。
「我がウィーン警護の組織に立派な警官や軍隊はあるのだが」
チェイテを内偵するにあたり
囮・生娘の婦警・婦人自衛官が欲しかった。
「お城やチェイテ領地を内偵するには。若い娘に変装させるのがベストなのだ」
チェイテの生娘に成りすませ潜伏させたい。
「しかし基本的に問題がある。我がハプスブルクのウィーンはゲルマン民族である」
西洋のハプスブルク
白人だった。
「チェイテ領地はハンガリアンともうしましてアジア系でございます」
チェイテ城に忠誠心を持つ家臣らがゲルマン娘を見たら…
「一目瞭然。よそ者とバレます」
ハンガリアンはアジア広域にある民族が根っこ。
遊牧民や山岳民族などの混血である。
ハンガリーの国民
「我が民族はアジア系であることが誇りである」
欧州諸国民族分布
ゲルマン‥英国・ドイツ・北欧諸国(フィンランドは除く)
ラテン系‥フランス・イタリア~旧ローマ帝国領地~(ルーマニア?)
ルーマニアのラテン系は自己申告
「ハンガリアンは黒い瞳でございます」
ゲルマンから日本人のような黒い瞳は生まれない。
「弱ったなあ。同じハプスブルク領地は領地。アジア系になるのか」
かといってチェイテ領地の山岳民アジア系の生娘を
今から訓練させ婦警に内偵の組織に仕立てることもできない。
「チェイテはアジアの民族なのか」
欧州から見たアジアとなると
日本人
韓国人
中国人
モンゴロイド
ウィーン警視総監は強かにニヤリと笑った。
「日本か」
ウィーンは青い瞳の少女ばかり。金髪を黒髪に染めてチェイテ民族に扮することにして。
中世のハプスブルク家は欧州諸国と友好の証しとして外交官特使を送り戦争や民族紛争を回避する。
その特使の派遣先にアジアも含まれる。
"徳川幕府(江戸時代)の日本があった"
黄金の国ジパング
「我がハプスブルク帝国と日本は友好の証しをみたい」
ハプスブルクからの特使を受ける徳川幕府。
将軍は家康である。
ヤンヨーステン・三浦按針を通じて特使を江戸城に受ける。
「西洋の国から特使とな?ハプスブルク?なんであるか」
特使を興味から城に招いた家康ではある。
ハテハテ?
首を傾げるばかりである。
「西洋のハプスブルクが我が日本国と友好?」
わけのわからぬままでは困る。さっそく長崎奉行の幕臣に海外事情を相談する。
「将軍さまに申し上げます。長崎奉行にはオランダ特使がございます」
通訳を得てようやく家康はハプスブルク家を"理解する"段階になった。
「ハプスブルクとは。西洋のアルプス山脈の小国が始まりだと」
欧州はとんとわからぬ家康。だが軍事策略の版土拡大の道すがらは興味がわく。
「ハプスブルクとな」
オランダ特使は懇切丁寧に欧州を教えてくれる。将軍家康がその気になれば貿易や交易に大々的な影響を与えかねない。
欧州たる一大勢力ハプスブルクは脈々と一大帝国である。
関ヶ原を征して天下統一を成し遂げたばかりの戦国武将・家康。
欧州という西洋史を知り唸らせた。
「余はハプスブルクに興味を抱くぞよ」
天下統一はいくら頑張っても日本列島という単一民族のみ
ハプスブルクや旧ローマ帝国などはゲルマン民族・ラテン系・スラブ民族などコスモポリタン(国際化)である。
「特使どの。つかぬことを聞きたいが」
異民族を束ねてはいかがなるものか
「肌は違い。言葉は違い」
『世界史』の紐解きにては近隣諸国は常にいがみ合い骨肉の争いをしている。
「いかなる政治手腕にてハプスブルクは統治権を駆使し広大な領地を治めるものか」
ますます興味であった。
「我が日本国から幕府を代表して首都ウィーンに特使(外交官)を送り出せ」
しっかりウィーンを見聞し
ハプスブルク皇帝なる偉大な統治者・国王を知ってまいれ。
家康によって特使に選ばれたのは。
三河武士のエリート集団だった。
大将軍・家康公の信頼を得て人選であり当然なことだった。
「将軍さまが命をくだしたとな」
江戸からの早馬を受けたのは三河三州岡崎城である。
「西洋に?ハテハテ」
西洋に派遣されし人材を岡崎から出せ
岡崎城主松平は早馬の伝文が理解できなかった。
「城主が知らぬことは寺子屋に尋ねよ」
城下町にある寺子屋師範を2~3あたらせた。
「お城からの尋ねでございますか」
師範はゆっくりと伝令文を読んでみる。
「文面からは西洋の異文化へ我が国を代表をして旅立ちたまえとありますな」
"西洋の異文化"
「これとはいかなる国でございますか」
江戸の初期には鎖国もなく東南アジアから貿易船が長崎に出入りしていた。
「オランダのある地でございます」
おお~
異国でございますか
「あの三河湾を遥かに越えた辺りに西洋はございますか」
大阪や九州に行くだけでも恐ろしい時代だというのに。
「師範さまにお尋ねいたします。将軍さまはどのようなおつもりで早馬を寄越したのでございましょうか」
うーん
三河岡崎の田舎ではとんとわからぬことである。