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診察

作者: 菅部享天楽
掲載日:2026/03/17

 私は病気のようだ。最近から、いや随分前からかもしれない。この「臓器」の調子が悪いのだ。大したことないだろうと放置していたが病状は重くなるばかりである。

 仕方ない、医者に診てもらおう。

 私は病院に向かった。受付を済ませソファーに腰を下ろす。こうして待っている間にも私の「臓器」は病魔に侵される。

 私の名が呼ばれた。私は「はい」と返事をして診察室へ向かった。中に入ると1人の医者がアームチェアに座っていた。汚ならしい髭を生やした男である。

 私は医者の目の前にあるスツールに腰を下ろして辺りを見渡した。右手にはベッド、左手にはデスクがありその上は書類やファイルのようなものが山を作っていた。奥はカーテンで仕切られている。

 医者は「どうしましたか」と自分の細い腕を見ながら言った。気持ちの悪い男である。骸骨のようだ。私は「この辺りの調子が悪いんです」と胸辺りに右手を当てて答えた。医者は「と言いますと」と詳説を求めてきた。私は「兎に角痛いんです。それとなんか暑いんです」と言った。

 医者は「そうですか……他の「臓器」は大丈夫なんでしょうか」と聞いた。私はええと相槌を打った。それを聞くと「わかりました、その「臓器」を詳しく診たいので内視鏡とか入れてもいいですか」と訊いた。私は少々躊躇ったが病気が治るならと腹を固めてはいと返事をした。すると医者は「わかりました、ではそこのベッドに横になって待っていてください」と言ってカーテンを開け別室へと去っていった。私はベッドに横になり医者が来るのを待った。

 ところで内視鏡検査とはこんな唐突に行なっていいものなのだろうか。私が聞いた話によると簡単な問診を行なうということなのだが私は問診など受けていない。それと19時以降の食事、アルコールは控えなければいけないらしいが私が夕食をとったのは20時以降だった。

 医者が内視鏡システムを持ってきた。医者は「横になったまま体をこちらに向けてください」と言った。

 私は言われるがままに体を動かした。医者はアルミニウム製の器を私の口元へ置いた。そして「喉に麻酔をするので口を開けてください」と言った。私は喉に麻酔される姿を想像した。喉に注射器で……。私は顔を強張らせた。それを見た医者は「大丈夫ですよ、スプレーですから」と言った。私は安心して口を開けた。医者はさっとスプレーをして1分ほど時間が経った頃に鼻から内視鏡を入れた。鼻と喉にミミズのような生き物が這いずり回っているような違和感がある。カメラが喉を通過した辺りから目、鼻、口から様々な液体が溢れる。なるほど、この器はその受け皿というわけか。カメラが喉の付け根に触れた。私は強い吐き気に襲われた。麻酔はこれを防ぐためにしたのではなかったのだろうか、それともただ効いていないだけなのか。

 暫く時間が経った。急に医者が眉間に皺を寄せてモニターを凝視した。私は不安になる。医者はこれは酷いと呟いた。私は血の気が引いた。自分の「臓器」がどうなっているのか気になるが鼻に管を突っ込まれた状態ではまともにモニターを見ることができない。

 医者はゆっくりカメラを私の体外へと出した。「そのままで待っていてください」と言って内視鏡システムと共にカーテンの奥へ消えた。

すぐに医者は戻ってきた。「そこに座ってください」とスツールを指して言った。私はそこに腰を下ろした。

 医者は私に「診察の結果なんですが……かなり深刻ですね」と告げた。思わずえっと声を漏らしてしまった。続けて「具体的に言いますと「臓器」に複数ヵ所 穴が空いていたり、本来あるべき毛の数が少なかったりしています」と言った。私は思いもしなかった「臓器」の病状に目をかっと開き声にならない言葉を発した。医者は「でも大丈夫ですよ、治りますよ」と言った。私は「本当ですか」と聞いた。医者はええと笑顔で言った。気持ち悪い。

 私は「原因はなんですか」と訊いた。医者は「その「臓器」に巣食っている「菌」が原因です。おびただしい数の菌が巣食っています」と言った。……本当に治るのだろうか。

 医者が言うにはこの「菌」を全滅させなければ「臓器」の治療はできないらしい。

 医者は「1ヶ月分お薬をお出しします。なくなり次第いらしてください」と言った。私ははいとだけ言った。医者は「これから治療頑張りましょう。ではお大事に」といった。私は有り難うございますと一礼した。



 私は処方箋を持って薬局へ向かった。受付で処方箋を提出した。暫くして名前が呼ばれ薬を渡された。薬は黄土色の顆粒剤で1日3回食後に飲むらしい。

 私は医者の指示どおり食後に薬を飲み続けた。眠くなることが多くなった。そして1ヶ月後医者に診てもらった。

 医者はもう一度内視鏡検査を行なった。医者は黙ってモニターを見つめていた。検査が終わると「投薬するのを一時的にやめます」と私に告げた。私は「いいんですか」と訊いた。医者は「ええ、この「菌」は数が少なくなると殺し合いをする珍しい菌なんです」と言った。これで今日の診察は終わった。

 1週間が経った。医者は「もう少しですね。ただその「菌」が別の「臓器」へと移動しようとしていますので前の薬ともうひとつ錠剤を追加します。これも1日3回食後です」と言った。そして薬局へ行き薬を受け取って言われた通り薬を飲み続けた。

 3週間後私は病院へ足を運んだ。前回同様検査をした。そして医者はこう言った。

 「おめでとうございます、人間達は全滅しました。これから地球の治療をしましょう」

 2体は笑った。

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