東雲主任は義理堅い⑧【完結】
本社勤務開始から気付けば3ヶ月経過。
近頃は東雲さんの「何故これが必要かというとーー」を聞く機会が減ってきた。
一人で仕事を回す事が増えてきて気付く。
(東雲さん、この仕事を残業しないでやってたの?)
「東雲さん、なんで残業しないんですか?」
「何でって?う~ん、そうだね。給料が高いからかな」
「でも、仕事できるから給料が高いんでしょ?」
(スキルに見合った給料なのは当然じゃないの?)
「私の技術は業務経験で培ったモノだからね、会社からの貸与品だよ。
なかなか会社に返すチャンスがなくてね。高木くんが来てくれて良かったよ」
(会社からの貸与品を返すのに、僕が関係ある?)
「東雲さんは仕事ができるのに、なんで課長にならないんですか?」
僕は素朴な疑問を投げかけてみた。
「ああ、課長は無理」
東雲さんは即答した。
「どうしてですか?」
「課長という役職は人事裁量権を持つんだよ。例えば、転勤辞令を出すとかね
転勤は会社にとって必要な事かもしれないけど、その人のライフプランに大きく影響する。
私は自分の家族のライフプランを維持するのが精いっぱい。
だから他人の人生に干渉する事はできないよ。だから課長はできないんだよね」
東雲さんは答えながらも、パソコンを片付ける手は止めない。
「さて今日は会議もないし、高木くんもいるから心配ないし、先に帰るね」
「お疲れ様でした」
オフィスから出る東雲さんに挨拶した。
(なんてマイペースな人なんだ)
――――東雲主任は今日も平常運転
(おわり)




