東雲主任は口出さない⑦
「課長への企画書報告は、明後日ね。課長のアポと会議室の予約しておいたから問題ないよ。
ちなみに私は明日は有休で不在だから、プレゼンの練習だけしておいてね」
前回の企画書確認から二日後の午後、東雲さんからいきなり通達された。
(いやいや、いきなりでしょ。しかも東雲さん明日いないって?)
「でも、前回指示されて内容を確認してもらっていません」
(いきなり、本番は無茶でしょ?)
「だいじょうぶ、何とかなるから気楽にやろう。ミスっても会社は倒産しないからだいじょうぶ」
(いや、会社倒産とか関係なく、僕の心が倒れちゃう)
「じゃあ、私は退勤するから。いやぁ、高木くんが来てくれて残業が減って助かってるよ」
(いや、東雲さん残業してプレゼン練習につきあったくださいよ)
僕がオロオロしている間に、東雲さんはオフィスを出て行ってしまった。
(いや、ちょっとこれは無理ゲーでしょ)
―――二日後―――
今日は企画書の報告。
報告は9時からなので、ちょっと早めの8時に出社した。
もちろん、東雲さんは出社済。
「おはようございます」
「高木くん、おはよう。今日の報告はちゃちゃと片付けようね」
東雲さんはいつも通り。
(なんで、この人は余裕なの?僕は心臓バクバクなのに)
―――二時間後―――
企画書の報告は終わった。
驚くほど何もなく、終わった。
驚いたのは、準備した想定Q&A表の的中率だ。
(東雲さんは予知能力でもあるのか?)
課長から質問が出るたびに想定Q&A表が役に立った。
特に指摘項目もなく、企画書を実行する許可をもらえた。
「高木くん、分かりやすいプレゼンだったよ」
報告会の最後に課長がほめてくれた。
「ありがとうございます」
(よっしゃ!グッジョブ!)
心の中で大きくガッツポーズをしながらお礼を言った。
東雲さんを見るとニコニコしている。
自席に戻ると僕は東雲さんに質問を投げかける。
「想定Q&A表の的中率すごかったんですけど、何かコツはあるんですか?」
「そうだね。評価者が判断するのに不安になる事は必ず質問してくるよ
特にセオリーからズレていたり、ちょっと高額の費用が発生したりとかね
だから、実現性とか実効性の答えを準備すれば良いのさ」
「でも予算とか、人材とか、自分たちじゃ対応できないですよ」
「だいじょうぶ、それを準備するのが課長の役目だから」
「それで良いんですか?無責任じゃないんですか?」
「だいじょうぶ、責任も含めて課長が判断するんだから」
「そんなに割り切って良いんですか?」
「お客さんに迷惑かからなくて、会社が倒産しなければOKだよ」
(いや、その基準はザックリすぎないか?)
「とにかく、評価会が無事終了して良かったね。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
僕は報告資料をクラウドに保存して、通常業務を開始した。
後日に課長から聞いたのだが、課長のアポを取った時に
東雲さんから概要を聞いていたとの事だった。
(しかも立ち話で3分)




