東雲主任はやさしくない⑤
本社勤務3週間経過。
東雲さんのレクチャーは相変わらずスローペース。
少しずつ実務も開始しているので、手は動かしているが
もう少し頭を使う仕事もさせて欲しい。
「高木くん、これやってみない?」
前日の業務実績確認後、パソコンの画面を見せてきた。
「これ今年スタートの業務なんだけど、3ヶ月間連続で同じトラブル発生しているから
対策を練って欲しいんだけど、やってみない?」
「はい、やります!」
頭を使う仕事をしたくてウズウズしてた僕は二つ返事で引き受けた。
「何でこの業務が必要かというとーー」
東雲さんの定番の説明が、いつもよりも濃厚だった気がする。
―――三日後―――
「高木くん、お願いした件はどう?順調?」
「―――すみません、ちょっと行き詰ってます」
「じゃあ、状況確認しよう」
ミーティングスペースに移動し、僕はモニターに資料を移して説明した。
「あちら立てれば、こちらが立たずって感じなんです」
「うん、そうなるよね」
東雲さんは、“うんうん”と頷く。
落胆でも叱責でもない、いつものトーンだ。
「高木くん、一つアドバイスするね。
複雑な仕事の流れをそのままコントロールしようとすると複雑なプロセスになるんだよ。
複雑なプロセスは実現不可能か、実現できても実行不可能になる」
東雲さんの説明に僕は“うんうん”と頷いた。
「複雑な仕事の場合はね、一旦全部バラバラにして、一つ一つのパーツに最適な方法を考える。
そして、そのパーツを組み立て直した時に、噛み合わない場所が出る。その場所を探してみよう」
東雲さんは、どこまでバラせばいいのか、僕の資料を使って詳しく説明してくれた。
―――二日後―――
「例の企画はどんな感じかな?」
前日の業務実績確認後に東雲さんが聞いてきた。
「組み上げ直して、噛み合わない場所を見つけたんですけど、どうやって調整したら分からないです」
僕はモニターに資料を移して説明した。
「ここが嚙み合わないんです」
「うん、そこは噛み合わないよね」
東雲さんは、“うんうん”と頷く。なぜかニコニコしている。
「高木くん、ヒントをあげるね。
私たちの仕事は“商品の輸送”だよね。商品と一緒に動くモノがあるけど分かるかな?」
「――――分かりません」
数秒、考えを巡らしたがパッと思いつくものがなったので正直に答えた。
「商品と一緒に動くモノは“情報”つまり“データ”だね。逆に“データ”を動かせば商品も動く
“データ”を動かすために必要なのが“輸送計画”、そして輸送計画の水源は“契約書”なのね」
東雲さんはホワイトボードに図解しながら説明を続けた。
「契約書の条件を満たさない、もしくは商品とデータの動きが同期しないところを潰せばよいのさ。
もう少し頑張ってみよう、三日くらいあればできるかな?」
「やってみます」
(正解は教えてくれないのか)
東雲さんは自分の席に戻っていった。
みなさん、こんばんは。
トラブル対策を任されました。
今まで経験した事のない内容で困ってるのに
東雲主任はニコニコしてます。
“ヒント”しかくれないなんて厳しくないですか?
みなさん、応援よろしくお願いします。
次回
「やっぱり東雲主任はやさしくない」
2026年公開です。お楽しみに!




