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宇宙でひとりぼっちになりまして  作者: 御堂廉


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第五話 これゲームで見たことあるやつです!

小型コンストラクターが完成してからというもの、様々なことの効率が一気に跳ね上がった。

コンストラクターツールに木を切り倒す機能が追加され、スキャナーの効果範囲が広がったことで、ある程度のエリアを一気にスキャンすることが出来るようになった。


素材集めも楽になったのは当然として、ストレージをいくつか作れたのは結構大きい。

いちいち変換して……ということが要らなくなったので、その分早くなるし、小型とはいえ携帯型に比べたら容量も20倍位違うから効率が段違い。

もっと早く作っておきたかったと思ってしまうわねこれ。


で、探索をするに当たってついに……乗り物が完成した!


一人乗りの装甲ATV。

素材の大半は鉄とチタンによる装甲に費やされたけど。

とりあえず、あのデカイやつレベルの生物に襲われたりしない限りはなんとかなると思いたい。

一応、豆鉄砲かもしれないけどアサルトライフル程度の武装はついてる。

ターレットライフルと言って、車内から操作する小型の武装となる。

ちょっとした動物とかはこれで仕留められるし、全てを自動にしてしまえばセントリーガンにもなる。

……弾数少ないからしばらくは無理だけど。

なにせ弾頭に使っているのは軟鉄。

もう少し柔らかいほうが確実に仕留められるんだけど……今の所銅があまり採れてないから仕方ない。


燃料はバイオエタノール。これはもういろんなのを分解して得られる酸素、水素、炭素で合成可能だから結構作り出せたし、保管容器も作ったから積み込んで長距離を移動できるってわけ。

毎回思うんだけど、燃料に合成するのはいいけれど……合成するためのエネルギーはどこから持ってきているんだろう。

まあ、効率のいいエネルギーを直で使えるようなものを作らない限りは、こうして変換しない限り意味がないのだから仕方ないけれど。

内燃機関や電気が基本な私達地球人にとって、宇宙から来た技術はまだまだレベルが高すぎる。


さて、ATVだけど。

一人乗りだしとても小さいから狭いんだけど、生身で歩くよりは全然良い。

気密もしっかりしてるから毒ガスなんかは大丈夫だし。


ってことで……スキャナーを車外に取り付けてスキャンさせながら移動してみよう!


「あぁ、この燃料エンジン独特の音と振動……」

『落下時に作成した地図と、おおよその現在地を表示します。帰投限界予測範囲を重ねて表示』

「それ超えると帰って来れなくなるってことね了解。まあそこまで遠出する気はないけど」


そもそも道なんて無いわけだし。

アクセル踏んで森の中へと突入する。

正直木が邪魔だからまっすぐなんて進めないけど、木と木の間隔自体は意外と広くて小型のATVなら楽に通れたのは救いだった。

その代わり強度の低い草とか細い木なんかは容赦なくぶち折っていく。


「た、楽しい……!」


結構慣れてきたら狭くて障害物だらけの森の中もガンガン進める。

なにせ地形の悪さも、ちょっとした障害物も気にせずに行けちゃうんだから面白いに決まっている。


後、進んでいて分かったけれども意外とセンサーに引っかかる生物は多い。

聞き慣れない音にビビって大半は遠く離れていったりするけど、よく分かってないからか立ち止まってじっと見ていることもあった。

何匹か仕留めて車載ストレージに突っ込んで持ち帰り。

もちろんスキャン済みで鹿とか熊とかに近い動物たちが何体か採れた。

今日も焼き肉よ!


面白いことに、こういう普通そうに見える動物でも、小さいけれどあのキレイな結晶がある時があった。

結局これなんなんだろね?


森の中を突き進んでいくうちに、川を発見。


『木に覆われていて見えなかった川です。水量と流速は十分あるので発電可能です』

「でも流石に基地から距離有りすぎるわね……」


今の所燃料でジェネレーター回しているからいいけど、いつかはこういった感じで電気を作らないと間に合わなくなりそう。

森の中で風力とか太陽光とか無理だし。

やるとすれば……送電線を作って設置していくことだけど、流石にそれはタロスでもないとやってられない。


結構深そうだからここは通れないし、別な方向行きましょ。


□□□□□□


大変です。

囲まれています。


人っぽいのと、結構な数が集まっている集落っぽい反応があったので近づいたのが間違いでした。

くすんだ緑っぽい肌に尖った耳。大きな目と口で尖った歯をむき出しにして威嚇しています。

大きさは小学生位?

原始的ではあるけど槍のようなものを持ってます。


私、こういうやつよくゲームで見てましたよ!ゴブリンです。

ゴブリンってことにしましょう。

ぶっちゃけ全くと言っていいくらいに話が通じないし、コンタクトしてみようかと外に出てみたら攻撃されました。


「やばいやばいやばい」

『数は多いですが武装はこちらの装甲を破れません、中にいれば問題有りません』

「そうじゃなくて……あいつら何で揃いも揃ってマッパでおっ勃ててんのよ!!」

『仮称ゴブリンの生態はまだ分かりませんが、戦闘時の興奮でそうなるのでは』

「……私の知ってるゴブリンだと女と見ると……っていうのがあってね?」

『創作物の内容ですので信憑性は分かりません。そもそも創作物にあるゴブリンと同種かどうかもわかりません』

「そうだけど……って槍投げてきた!!」


カン!と音を立てて装甲に弾かれる。

ATVに乗ってれば安心だけど……どうしようか。

下手に殺して完全に敵対されてもなぁ……。


なんて思っていると。


『警告、エネルギーの収束を確認。何らかの攻撃が来るものと思われます。3時の方向』

「え!?……えっ何、あれ……きゃぁぁぁ!?」


エイダの警告で右を向いたら、一匹のゴブリンが両手を上に掲げていて、その手の部分が光っていた。

眩しいと思った瞬間、ATVに強い衝撃と熱量、そして光がぶつかった。


『炎の塊のようなものがぶつかりました。着弾と同時に爆発。爆炎と爆風のみの手榴弾程度の攻撃力があります』

「それ結構強いよね!?」


生身なら死ぬよそれ!?

っていうか今の何!もしかしてリアルに魔法!?


『エネルギーの収束を確認。1時方向』

「いやぁぁぁ?!」

『氷塊が衝突しました。着弾部分に温度低下を確認』


ガガガガガン!って感じでなんかがぶつかってきた。

エイダによるとつららのような氷塊らしい。

そして当たった所はしばらくの間極低温状態が続いているとか。

……うん、あるはずないって思ってたからずっと言葉にしてなかったけど……。


「これっ、魔法じゃない!?」


とりあえず一旦ここから引いて逃げよう。

流石にこの数を相手にするのも嫌だし、こっちが勝つにしても後味が悪い。


「エイダ!逃げるわよ!」

『ルートを表示します』


アクセルを踏み込んで逃走する。

突然動き出した私達にゴブリンは慌てて距離を取り、その隙に包囲を脱するとそのまま基地へ向かってエイダの出してくれたルートに沿って帰った。


「……あーびっくりした……」


ゴブリンかぁ……しかも魔法。

ってことは……あのエネルギー凝縮体って、魔石とかいうあれ?


「……エイダ。未知のエネルギーの名称を魔力と命名。エネルギー凝縮体を魔石に」

『了解しました。理由を聞いても?』

「創作物……とか、歴史……もあるのかな。魔女ってあったでしょ?魔法を使っていろんな呪いとかをかける。創作物ではその魔法が一般的な世界があってね、そこでは世界に魔力の源である魔素とかマナとか言われるものがあって、人はそれを魔力として取り込み、魔法として様々な現象として顕現させるの。さっきのゴブリンがやっていたの、まるっきりそれなのよ」

『先程の火炎弾や氷塊は、エネルギーが集まり突然そこに現れました。我々の知る物理現象ではありえないことです』

「そのありえないを出来るようにしてしまうのが、その魔力ってエネルギーなの。物理法則を無視した事ができたり、道具の燃料のようになったり……。思えばあの時、一番最初に出会った大きな生物を倒したやつ……空飛んでたんでしょ?しかもそいつが高エネルギーを凝縮して何かをした。ドラゴンだったんじゃない?」

『伝承におけるドラゴンかどうかは視認できませんでしたが、そういう前提があるものとすれば可能性はあるかもしれません』

「それに未知の物質。あの生物……いやもう魔物でいいわね。あの四つ目の魔物の角はかなり大きな未知の物質だったんでしょ?あれだってミスリルとかアダマンタイトとかそういう創作物で出てくるようなものかもしれないわ」


推測だらけどころか、もう完全に当て嵌めに行ってるけど……正直、そうとしか思えない。

もしその力が魔力なら。

この世界で普遍的にあるエネルギーである魔力を使って、動力を動かせるようになれば……きっといろんな事ができるようになる。


私は……使えなさそうだけど。


ATVを降りて、被害状況を確認してみる。

火炎弾が当たった所も氷塊が当たったところも特に傷がついていたりってことはない。

あの程度の魔法ならば問題ないってことね。

暫定ドラゴンのあの魔法だと……多分吹き飛ぶ。

あの硬い表皮を持った魔物が殺されるくらいの威力はあるんだから。


「そういえば生体感知の精度下がってない?」

『現在実装されているものは精度と探知距離が低いものになっています。脱出艇を分解したので新しく作らなければ探査できません』

「……おおぅ……全く考えてなかったわね……ってことは鉱物なんかも?」

『こちらに来てからは探知範囲が周囲500m程度です』


高性能レーダーの制作をコンストラクターのタスクに入れておきましょ。

ATVのレーダーもちゃんとしたのに更新しないと……。


これから先どんな魔物に遭遇するかわからない。

ゴブリンがいるならオークとかもいるんじゃないの?

まかり間違ってドラゴンなんかにあったら死にかねないし。


ああ、そうだ。ATV格納するためのガレージも必要よね……。


「エイダ。装甲ハンガードア付きのガレージの設計図お願い。あと……この崖に沿って何階まで拡張できる?」

『現在の部屋の高さを変えないのであれば4階まで出来ます』

「じゃあ、とりあえず4階まで一部屋づつ設置。最上階は展望室としてシールドガラスと防御シールドを崖ギリギリのところに設置。直接攻撃されないと思うから壁はここの位厚くなくていいと思うの」

『了解しました。代わりに天井の強度を上げておきます』


よし。それじゃぁ今日も建築行きますか!!


□□□□□□


先に上の部屋を作って展望室を作った。

チェーン式のエレベーターを作れたら私の部屋ここにしようかなぁ。明るくて見晴らしよくてすごく気持ちいい。

地上部は全部倉庫とかにする予定。


まあ、なんやかんや作業とかしてたらもう夜になってしまったんだけど。

ガレージは後は外側のハンガードアの設置で終わり。

もう夜だから設置してる時になんかあっても嫌だし、明日の朝に回そう。


夕飯は芋を使ったナンのようなものと焼き肉大盛り、そして栄養カプセル。

流石に炭水化物とタンパク質だけじゃまずいし……栄養カプセルは植物とかから普通に必要なミネラルとかビタミンとかそういったものを抽出して作るものから、いくらでも作れるけど……お腹膨れないしなんとも味気ない。

ちゃんとしたサラダとか食べたいなぁ。


でも焼き肉美味しいです!


『警告、複数の熱源が接近中。反応が昼に会ったゴブリンのものと酷似しています』

「嘘でしょ!?まさか、追ってきたの?」

『前衛と後衛に分かれ、2方向に展開。総数31。エネルギー……魔力反応が強い固体が5。そのうち1が通常固体の4倍の反応があります』

「ボスってわけね。っていうか多いわね!」


急いで上に上がって見てみる。ぎゃぁぎゃぁと騒いでいるようだけど、遮音性能高すぎて全然聞こえない。

ただ……彼らが見ているのは……外に出しっぱなしにしたATV。


「ああ、乗り物って概念ないから、なんかの魔物とか思ってるのね……」


アホで助かった。

中から私が出てきたのも、多分中にまだ入っているって思っているか、同一個体のなんかだと思ってるんだろう。


前衛の棍棒とか木製の槍を持った奴らがジリジリと近づいてくる。

後衛の4匹がなにやら手を掲げたり、杖を振り上げたりして……魔法を放つ。

やっぱり、魔法にしか見えない。

スキャナーを壁越しに起動してスキャンしてみると……。


『データを受信しました。哺乳類と両生類の要素を持ち合わせています。小柄ですが筋肉量が多く、力は強いと思われます。また魔力と魔法の行使に関連がありました。魔法の行使の後、保有魔力の減少を確認しました。毒性は有りませんが肉は硬く臭みがあると思われます』

「……最後の情報は要らないかなぁ……」


でも、それなら多分……魔石が手に入る。

エイダに魔法を使っている所をスキャナ越しに観察させてしばらく見ていたら、こっちが無抵抗だと思って調子に乗ったようだ。


一回り大柄なやつが影から現れて色々と指示をしているように見える。


『翻訳は出来ませんが、独自の言語によって意思疎通が可能なようです。武器を使用していることからも知能があります。現状、この場所を知られた以上殲滅を提案します』

「ま、仕方ないわね。こうなってしまったらもう無理。ATVの武装でいける?」

『問題なさそうです』

「……エイダ、目標、ゴブリン。一匹も逃さないで」

『了解しました。ATVに接続。ターレットライフル起動、掃射します』


シャコン!と小気味良い音を立てて一瞬でターレットライフルが飛び出し、マズルフラッシュが3秒ほど見える。

3秒。たった3秒で31匹のゴブリンは文字通り全滅した。


『掃討完了。同種の生命反応なし』

「……ありがと。とりあえず、分解しておきましょ……。あ、食品に利用しないようにしといて」

『了解しました。タグを付けて保管しておきます』


外に出て、独特の血の臭いと、体臭らしい臭いで吐きそうになる。

ヘルメットのバイザーを下ろして臭いをシャットアウトして、コンストラクションツールを使って死体を分解、回収していくと魔石が31個落ちた。


「ちっさ……」


小石くらいのが殆ど。親指くらいのが4個、その辺の石くらいのが1個。

どれがどれなのかはまあ、分かるね。


彼らの血肉と骨はしっかりとなにかの素材として再利用してあげよう。


これが、私がこの星で本格的にファンタジーの洗礼を受けた最初の出来事だった。


マリア「……エルフとかいないかなぁ……美青年……美少年……それだったら……うん、いいかなぁ……うへへぇ……」

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