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宇宙でひとりぼっちになりまして  作者: 御堂廉


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3/8

第三話 思ってた以上にファンタジーでした

 一夜明けて雨が止み……あの恐ろしい戦いの音は消えた。

 エイダも危険はないと判断したので、脱出艇のシールドを上げると……コクピットのシールドガラス越しに巨大な生物の死骸が横たわっているのが目に入った。


『全長15m、外見からの特徴から肉食の大型動物と思われます。地球上の生物での近似は不可能です』

「うん……そうだよね。地球に4つ目のやつ居ないもん。ていうか、なにあれ?」


 巨大な角を持ち、四本脚でティラノサウルスを更にかっこよく、そして凶悪な顔にして、背中から尻尾にかけて鳥のような羽毛で覆われた謎の生物。

 首元が大きく抉れ、頭の脇から二本出ている大きな角は折れ、体中傷だらけだ。

 かなり激しい戦闘だったことが伺える。

 傷跡はバックリと割れた切創だけでなく、焼かれたような重度のやけどや、炭化した組織もあった。

 腹は食われて内臓はもうすっかり無くなっていたけど、その他はまるまる残っている上体。


 グロい。


 何が一番近いか?エイダの言う通り近いものなんて無い。

 どちらかというと空想の産物である、ゲームに出てくる敵モンスターが一番近い。


 そして……雨によってちょっとした沼地のようになった草原も、戦いの痕でめちゃくちゃだ。

 いくつかちょっとしたクレーターみたいなのが出来ているところを見ると、砲撃でも食らったんじゃないかって思うレベルだ。

 昔の艦砲射撃を食らった所みたいな?


 そりゃぁ……シールド降ろさないと危険だったわけだ。

 そしてあの衝撃と音にも納得ね……無事で良かった。


 ハッチを開けて周囲を確認すると……。


「あぁっ……!」


 何ということでしょう。命の水を作り出してくれていた浄水器が、跡形もありません!

 いやアンカーで固定してた足だけ残ってます。

 しかもこの足の部分溶けた跡あるんだけど!


 後ろを振り向くと、脱出艇も焦げてます。

 直撃してたんじゃないですかー!やだぁぁぁぁ!!


「全然安全じゃないじゃないのここ!!めちゃくちゃ危険じゃないのよ!!武器よ!武器が最優先よ!!」

『護身用の武器では恐らくダメージを負わせることすら出来ません。それよりも簡易拠点を地中に作ることを提案します。それに伴い、建設場所はここではなくこの地点に作成する事を提案します』


 目の前に表示された簡易の地図にピンが打ってある。

 地形を見る限り崖みたいになってて……水場もある。

 けど……森を抜けてちょっと行った所って感じね。

 正直目の前で死んでるようなやつがいるかも知れないところに突っ込んでいくの怖いんだけど。

 遠いし。


 ただ、携帯型のコンストラクターは無事、ある程度の材料とコンストラクションツールを作ってくれていた。

 崖を掘って材料にしつつ、建築していくことは可能ね。

 そのためには……。


「移動手段が欲しいわね……」

『スラスターの破損部位を切り離し、残ったスラスターを使い機体を無理やり動かしてみます』

「え、大丈夫なの?」

『燃料の残量にはある程度余裕はありますが、計算では到着時点で残燃料はほぼ枯渇する予定です。また破損したスラスターを切り離す作業は手作業となります。更にエンジン冷却用のガスの一部を冷蔵庫へ回したため、不具合が起きる可能性があります』

「私エンジニアじゃないんだけど」

『こちらで指示を出します。修理用のトーチとグラインダーを使用し破損部位を撤去後、燃料の供給路を絶ち、電源から完全に切り離してください』


 メンドクサ。

 でも……行き来することを考えるとその方が効率がいいかぁ。

 その代わり燃料が枯渇するため、エンジンはもう動かすことはできなくなるし、電源もすぐに使えなくなってしまう。

 その前になんとかしないと。


『建設予定地の地下に鉱脈がいくつかあります。また周囲に植物が多いので燃料を生成することが出来ます』

「……なるほど。なら、やるしか無いわね!」


 でもその前に。

 あの死体をちょっと調べたい。

 有機物系の素材になるのは間違いないし、無傷の所の肉とか食べれないかなーとかちょっと思ったり。


『データを受信しました。骨格からチタンを検出。角に未知の金属化合物を検出、心臓付近に高エネルギーの凝縮体を検出、詳細不明』

「へ?チタン?金属?何で?」

『不明ですが、地球でも金属を身にまとう生物はあります』

「体内ってのが意味不明なんだけど。角の金属って?」

『地球の自然界には存在し得ないものです。スキャナーの性能では分析できませんが、密度が非常に高く硬いながらもある程度の靭性を持ち合わせているようです』

「固くて重くて壊れにくいってこと?……ちなみに切断できる?」

『現時点では不可能です。破片を見つけて回収してください。また、骨も切断出来る道具がありません』


 その他、肉とか皮とかは大丈夫だった。

 肉は鶏肉に近い味だけど見た目は馬肉とかみたいな感じ。皮は……グラインダーで火花散らす程度には頑丈だったけど切り取れた。

 ゲームなんかじゃナイフ一本で剥ぎ取ってるのに!無理ゲー過ぎるじゃないの……。


 角の破片もいくつか落ちていたけど、小さい割に結構な重さがあった。

 あと、脱出艇の頑丈な外殻装甲に擦り付けたら傷入ったんだけど。

 これ……突進されたら抜かれるんじゃ……。


 とりあえず肉は大量に確保して、マルチクッカーが出来上がったらぶち込んでおこう。

 ……後数時間で出来上がるみたいだし。


「で、エネルギー体って、これ?」

『スキャン結果からは高エネルギー反応が検知されました。この生物が生きている時にもエネルギーは感じられていましたが、このように塊としての反応ではありませんでした。死後に結晶化したものと思われます』

「でっっっっかいルビーみたいねこれ……触っても平気?」

『周囲の組織に変質は見られません、毒性なども無く、危険性は認められません』


 まあ、スーツ越しだから大丈夫か。

 とりあえず、脱出艇の中に転がしておく。

 爆発とかの心配も無いってことだから大丈夫でしょ。

 一応固定しておくけども。


「エイダ、これ高エネルギー凝縮体って言ってたけど、こっからエネルギー取り出せるの?」

『中型コンストラクターを使用することで加工することが出来るかもしれません。質などがかなり違いますが、エナジークリスタルと同じように扱うことが出来る可能性があります』

「あー……あの異星人の技術……かぁ。超科学だったもんねあそこ」


 地球人が宇宙に進出し、近場でうろちょろしていた頃。

 突然現れた未知の生命体との初のコンタクトが……超科学を持ち、私達と似ているけどどこか無機質な形をした人たちだった。

 彼らは自分たちをレヴィと言い、私達は惑星レヴィとレヴィ星人という風に呼ぶことになった。


 で、この人達の文明は私達のはるか先を行っていて、今の私達の使っている技術は大体彼らから提供されたものを元に作られている。

 エナジークリスタルはめちゃくちゃ乱暴に言えば、ベクタークリスタルと呼ばれている内部に向かってエネルギーを凝縮するっていう性質を持つガラスみたいな結晶の中で恒星の核融合レベルのエネルギーを閉じ込めるっていうめちゃくちゃなもの。

 なのに内部に閉じ込められているエネルギーを含め、危険なものは一切外側に出てこず、一定の手順でのみ取り出すことが出来る。


 詳しいことはわからないけど……こんな感じのもので、当然ながら未だに地球人はこれを作り出すことは出来ていない。

 向こうにとっては普通に電池扱いらしく、交易によって提供されているから使えてるけど……。

 まあ、それは良いか。

 エナジークリスタルと同じようなもん、って思えば高エネルギー凝縮体って表現されたのも分かるし、中型コンストラクターならばどうにかなるんじゃないかっていうのも分かる。

 なぜなら、中型コンストラクターで作れるものの中にエナジークリスタルを利用した宇宙船用中型エンジンがあるから。


「中型エンジンが作れれば……この結晶を利用して宇宙船が作れる……。あ、でも補給考えなきゃならないから駄目かぁ。沢山剥ぎ取っておけば良いんだろうけど」

『タロスに搭載出来るように改造して、惑星内の移動と攻撃手段とするのが最適かと』

「その手があった!!」


 そうよ!タロスがあれば……私が動かなくても重いもの持てるし、武器も豊富だし、採掘だってお手の物。

 最高じゃないの。

 それを目指しましょう!そうしましょう!


 ま、タロス作るには結局中型コンストラクター必要なんだけども。

 それまでは肉体労働頑張りましょうかね……。


 □□□□□□


 現在、脱出艇の中で超豪華なお夕食を頂いております。

 肉づくしよ!

 マルチクッカーが出来上がったので、早速肉やそのへんの草花や果物で食べれるものとかをぶち込んで料理にしてもらったのだ。

 焼いただけじゃない!

 シンプルな料理ではあるけどとっても美味しい。

 生きてるって素晴らしい……!


 芋はフライドポテトにしてもらったけど、濃厚な芋の味が口に広がって、今まで食べたフライドポテトなんかを軽くぶっちぎって美味しかった。


 よくわからない果実のジュースも、甘酸っぱくて美味しい。

 あぁ……ようやく人の生活が出来るように……。


 後、夜はもう外に出たくない。

 少し離れているとはいえ、あの謎生物のところに小さいスカベンジャーが来てるのよね……。

 群れで。

 ギャーギャー言いながらちっさい恐竜みたいなやつが貪ってるのを見ると……流石に怖すぎるし、あの硬い皮を引きちぎってるのよあいつら。

 襲われたら死ぬわ絶対。


 明日の朝には居なくなっててほしいと思いながら、耳栓して寝た。



 翌日起きると……そこには驚愕の光景が!

 骨!骨です。骨格標本みたいなきれいな骨!

 さすがのあいつらも骨は食べなかったようですね。でも……おかげで骨を回収できますね!

 角は未知の物質なんで携帯用コンストラクターに入れられないんだけど、骨ならチタンが混じった普通の骨みたいなもんらしいから入れられる。

 分解してストックしておこうっと。


 と思ったらストレージ容量がいっぱいになってしまいましたね。ちっさすぎます。

 あぁ……。

 ストレージも作らなきゃならないのか。作らなきゃならないものがどんどん増えていく!


 こうなったらさっさと拠点を……いやもう一気に基地を制作してしまおう。

 どうせ素材の土やら石やらはもう掘ってりゃ勝手に貯まるでしょ。


 まずは……脱出艇の壊れた部分の切り離しですかね。


 □□□□□□


「やっと終わった……」


 壊れたスラスターへ無駄に燃料や電力が行かないように工作するのは簡単といえば簡単なはずなんですけどね。

 ユニットごと消せればだけども。

 今回複数のスラスターが一つのユニットにまとまっていたため、手動で壊れて動かないところを切り離したという感じ。

 これが一つのスラスターが一つ一つ別のユニットになっていれば、コンストラクションツールで取り除くことが出来たんだけども。

 なんでこんな面倒なユニットにしたんですかね。


『そもそも脱出艇は非常用です。汎用性よりも確実に動作することと、コンパクトにまとまることを追求した設計となっているため、この脱出艇は5個のユニットのみで作られていますし、基本的に使い捨てが前提となっています』

「少なっ!壊れたらそこまるごと取り替えるしかなくなるってわけね」


 それか今みたいにメンテナンスハッチ開けてちまちま修理するか。


 ま、何にせよ……準備は整った。

 空に浮かび上がることは出来ないけど、頑丈な外殻を地面に擦り付けながらでも移動は可能。

 その辺の制御はすべてエイダに任せるけどね。


 機外に置いておいた物はなるべく全部回収して……ハッチクローズ。

 荷物の固定ヨシ。


「全システムエラーなしっと」


 エラーはないけど色々足りない。まあ、最低限のところのエラーは、だけど。

 警告灯はめっちゃ点灯しまくってるし、警告音もなりっぱなし。

 動かせるってだけだけね。


『メインエンジン始動……スラスター点火』


 機体が揺れてわずかに浮き上がる感覚。


「エイダ、任せたわよ」

『了解しました。ブースターに点火します。衝撃に備えてください。シールド閉鎖。ブースター点火5秒前4・3・2・1・点火』

「んがっ!?」


 ドン!と後ろから追突されたかのような衝撃が加わり、同時に機体を地面に擦り付ける嫌な感覚と振動が断続的に続いた。

 視界が揺れる!!!


「だ、大丈夫なんでしょうねこれ?!」

『外殻の損傷はありません』

「船は平気でも私がヤバいの!」

『我慢してください。後数分で到着します』


 あばばばばばばばっ。

最初の方はちょっと短めに書いてますが、だんだん話数が伸びるに従って文字数増えてくと思います……。

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― 新着の感想 ―
はじめまして、楽しく読ませて頂いています。SFジャンルの作品少なめなので嬉しいです!! 未来の妄想で鬼が大笑いするでしょうが、アニメやゲーム化して、タロンで大型モンスターと戦ったり、拠点開発できたり …
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