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宇宙でひとりぼっちになりまして  作者: 御堂廉


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第二話 平和だと思っていたら危険でした

昨日に引き続き二話を投稿です。

次回更新は……多分来週……かな?

「スキャナー完成!!」

『コンストラクションツール、マルチクッカーは引き続き製作中です。スキャナーで周囲の植物などを調査してください。食料に適すもの、適さないもの、毒性のあるもの等を調査することでマルチクッカーで食品へと加工できます』

「そうね。その前に……空気と水の調査ね」


 銃の形をしたスキャナーを中空に向けて気体測定モードにする。

 トリガーを引くとパーセンテージが表示されて……完了した。


『データを確認しました。体に害を及ぼす毒性の気体、ウイルス、その他はほぼありません。未知のエネルギーをわずかに検出。毒性等は認められません』

「なら外でもヘルメット脱げるわね。はぁ、窮屈だった。っていうか、その未知のエネルギーってなによ。電気みたいなのがそのへん漂ってるとか?エネルギーそのものがそのへんにあるとか意味がわからないんだけど?」

『物質として認識できません。しかしこの惑星においては場所による密度の違いはありますが、基本的にどこにもあるもののようです。解析できればこのエネルギーを取り出し、空気を捕集するだけでエネルギーを取り出すことが出来るかもしれません』

「なにその夢のエネルギー。まあ、しばらく無理ね。中型コンストラクター作ったあとに作れる研究室が必要でしょ?」

『はい。分析に必要な機材は研究室構築後に作成可能になります』


 何年、かかるのかな……。


 本来ならこの個人脱出艇に積まれているものは一時的なサバイバル用であって、長期で使うためのものじゃない。

 そして資源は母艦に大量にあるはずだったのだ。

 そのへんに浮いてる資源を回収しながら、大量の資源を溜め込んでいて、それを使ってそれぞれが担当するものを作り、基地を建築していく。

 これをするために必要な人員はタロスを動かしたり、建設用の機械をつかって数百からの人数で行うもの。


 一人でやるもんじゃないんだっての!


「原始人みたいな生活しなきゃ無いとかじゃないだけマシだけど!文明作り上げるのに私一人だけってどんな無理ゲーよ!」

『作成するものは基本的に一人が扱う程度に規模を縮小すると良いでしょう。大人数で作業を行わなければならないような設計をするには、人の代わりに無人工作機械が大量に必要になります。ある程度自動化が出来ないと非現実的でしょう』

「ほんとにね。まあ基地とかも小さくていいし、誰か来るわけでもないから倉庫も要らないわよね。そのへんに路駐しとけばいいから、地面だけしっかりと固めておけば問題なさそう」


 広域スキャンでは私がいるこの場所には知的生命体らしき集落の跡などは一切見つからなかった。

 その代わり動植物が多い。

 今回私が落ちたところは水辺の近くではあるけど、殆ど動物を見ることがない平和なところだったから、まあ捕食動物なんかがいてもこの辺にはそうそう来ないはず。


 ……恐竜みたいなの来ないよね?


『もし生物を捕獲もしくは殺傷した場合、スキャンを。動物性のタンパク質や脂質などを補給できるようになります。また皮などは衣服の他、かばんなどへの加工も可能です』

「手袋もね。採集するときだけじゃなくて色々出来るから、革手袋なんかは怪我防止のためにも欲しいわ」


 さて。今日は植物をひたすら見つけてはスキャンしまくるわよ!


 □□□□□□


 ピピッ


『データを確認しました。未知の植物です。イネ科に近い植物です。セルロース、炭素、窒素等が採取可能』

「うん、まあ見ればわかる。意外と思いっきり変!っていうの少ないわね」

『はい、しかしDNA構造が僅かに異なります』

「新種発見、ね……。名前無いの不便だし、仮として地球上で同じようなものというか、近いものがあったらそれの名前をつけて分類しておいてくれる?」

『了解しました。先程の植物は仮称・ハネガヤとして登録します』


 さて次。

 実はここに来てから気になってる植物があった。

 ここは水辺が近くて、森?が切れて草地が広がっているところなんだけど……ちらちらとすんごい光ってるやつがあったのよね。

 未知の世界っていったら光ってる植物!みたいな位だけど、ちらちらと見えているくらいで、この辺には少ないみたい。


「これかな?」

『データを確認しました。未知の生物です。データベースに近い存在はありません。発光組織を持ち、土壌から水分と養分を吸い上げて植物と同じように根を張っていますが、小さな虫を捕食することで主な活動用のエネルギーを得ているようです。発光は高電圧によるアーク放電。現在は低エネルギー状態となり休眠しているようです』

「ちょっ、ちょっとまって。え、植物じゃなくて動物だったっていうのはいいけど、アーク放電?地球にもいないわよそんな変なやつ!触ったら思いっきり感電するじゃない!」

『規模は小さいので精々静電気よりも少し強力な程度です』


 植物で言えば見た目は緑色の稲みたいな感じ。

 お米になる部分はすべて無色透明なビーズみたいなものがくっついているし……恐らくこれが発光組織。

 デンキウナギでも出来ないようなことを……。

 この光で虫をおびき寄せて捕食してるのかな?

 でもエネルギーはどこから……。


「もしかして放電のエネルギーは未知のエネルギー……?」

『……情報修正。確かに周囲のエネルギーを回収してためているようです。少しずつ内包エネルギー量が増えています』

「おおお!良い発見よこれ!エネルギーを取り出すための方法がわかるかも!」

『現状は観察による解析しか出来ません。より詳しい解析には研究室が必要です』

「ちょっとやる気出てきた。よーし今日はひたすら解析するわよ!」


 □□□□□□


「……天然でこんな甘いものが……!美味しい!」


 いっぱい働いたからご褒美なのです!

 甘いものが食べたいって思っていたけど、まさかこんな近くにこんなに甘いものが生っているとは!

 見た目はすももみたいな感じで、触った感じは少し固め。

 それなのに薄い皮を剥いてやるとみずみずしいけど、ものすごくエグい赤い果肉が出てきて……食べるとはちみつ?って思うレベルの甘さ。

 リンゴ風味のはちみつって感じの味がする!

 カレーに入れたら美味しくなるかしらね?


 でも流石に一個でいいわコレ。すっごく甘い。

 一つの木に結構生っていたからたまに採集して食べよう。


 他にも簡単な調理で食べることが出来る木の実などをいくつか。

 クリっぽいやつに、芋。……芋、よねこれ?


『スキャンの結果では9割ジャガイモと同じものですが、糖度が高いです』

「甘いじゃがいも……?」


 まあ食べてみればわかるか。

 マルチクッカーはまだ出来てないから、とりあえず枝と落ち葉をかき集めて着火!

 芋をぶち込んで暫し待つ!


「熱っ!あっつ!!」


 おお……表面真っ黒だけど中身はホクホクじゃないの!

 匂いは確かにジャガイモ!

 食べてみるとジャガイモだけど……なんというか味が濃く感じる。

 バター塗ってないのにすごく美味しい。

 軽く塩を振って食べると更に美味しい!

 はぁ……幸せ。


「これ、明日も収穫しましょ」

『定住するならば露地植えすることも可能かと』

「んー……ちょっと考えたけどね。ここちょっと大型艦作るには狭いじゃない。そうでなくとも資源探してうろつく予定だし……できれば栽培ブロックを設置したいのよね」


 栽培ブロックは土に適切な栄養分を混ぜ込んで、水の供給や養分、空気の供給などの機能を備えたポッドのことだ。見た目が四角いからブロックと言われてる。

 大きさも様々で観賞用の花とかを植えられる手のひらサイズから、本格的な農業が可能な超大型まで。

 芋程度なら小型で十分でしょ。

 植えたら陽光ライトをつけとけば後はほったらかしで育つ。

 ガーデニングとかあまり好きじゃない人にはすごく助かるわけで。私土いじりあんま好きじゃないし。

 サボテンすら枯らすと有名な私舐めんな。


 まあ、そんなこんなで露地植えとか却下よ却下。

 でも移動したいからっていうのは本当。

 ここに作る拠点は本当に簡易的なものにして、金属資源などが多い場所に本格的な基地を建設したい。


 トライクには流石に設置できないけど、ホバーやATV(全地形対応車)ならば設計次第で居住区などを追加できる。……大型化するけど。

 ただ、長距離の移動をするのにこれほど頼もしい物も無いのだ。


 簡易拠点が出来たら、この移動拠点を作ることを目標としたい。

 恐らく大型のATV……トラックタイプか、居住区画などを引っ張るトレーラータイプになるのかな?

 ホバーは風力を下に叩きつけることで浮き上がる原始的なタイプではなく、斥力を使ったホバースラスターが必要になるので多分無理。

 レアメタルが必要になるのもあるけど、高度な加工が必要になる上に物が大きいので中型コンストラクターが必要になる。

 先は長いなぁ。


『動体を検知。鳥型の飛行生物です。スタンバリアを実行……対象を無力化しました』

「……あー……うん、スキャンするわね……」


 脱出艇の上に降りた鳥の足音が聞こえたと思ったら、エイダによって電撃を食らってしまったらしい。

 危険な生物が近くに来たときに追い払うための強力な電撃だ。

 小さな鳥なら一撃で死んじゃっただろうなぁ。


「うわ結構大きい……ハゲワシみたいな……」


 少し首の長い猛禽っぽい鳥だった。

 翼長は私が手を広げたくらいある。

 くちばしには鋭い牙がついていた。なにこれ。恐竜の類?


『データを確認しました。データにはない生物ですが、近いものは真鳥類に分類されるものが近いようです。毒はありませんが内蔵は解毒を目的とした器官の存在を確認、毒性のある食べ物を常食しているようです。食料として良質の動物性タンパク質の補給が可能です』

「で、味は?」

『分析からすると、美味であると推測されます。ただし脂肪が少なく硬めでしょう』

「鳥の胸肉みたいな感じかしらね?塩と胡椒はあるから今日は鳥のステーキね!」


 ……あ。鳥捌いたこと無いや……。


 □□□□□□


「うう、美味しい……!美味しい……!」


 エイダにやり方聞いて吐きそうになりながら初めて生き物を捌いた。

 不思議なもんで、内臓出して首落として羽も毟ってってやったら食材にしか見えなくなったのよね。

 ああ、よく売ってるやつだって頭の中で理解した感じ?

 そっからは特になにも思うこともなく、淡々と作業していき……。

 久しぶりのお肉の味を堪能した。


 いやぁ……もっとぱさついたお肉かと思ったけど、なかなかジューシー。

 鳥皮からあふれる油がこれまた美味しい。

 塩と胡椒をふりかけて夢中で貪った。


 夢中で食べすぎて全部食べちゃったけど!

 あ、そもそも冷蔵保存が出来ないのか。


「冷蔵、冷凍庫って出来る?」

『冷却用のガスが足りません。脱出艇のエンジン冷却用のガスを利用することで製作可能です』

「どうせスラスター壊れてるし良いわ。コンストラクターのタスクに入れといて」

『登録します。全作業の完了まで26時間』


 ああそうそう、今日の夜中にはコンストラクションツールが出来上がるわね。

 明日は簡易拠点を作らないと……。


 簡易拠点作って、小型コンストラクター作って、動力作って、発電機作って……色々やりたいけどまずは素材を集めなきゃならない。

 やること多いなぁ……。


 最初の方はひたすら肉体労働。まともに生活できるようにしないと、その前に餓死も見えてくる。

 それだけは絶対に嫌。


 頑張るぞ!


 □□□□□□


『データを確認しました。主成分H2O、危険な物質やウイルスなどは安全値、問題ありませんが、飲料には適していません』

「まあ……水くみに行く手間が省けたって思えばいいかしらね……」


 朝、ものすごい騒音で起きた。

 脱出艇の窓のシールド上げたらものっっすごい土砂降りで、外に出れたもんじゃなかったのよ……。

 流石にこのレベルの雨って見たこと無いんだけど、大丈夫なの?


『天気の予測は現時点では出来ません。また、周囲の土壌の吸水量を上回る雨量です。脱出艇の気密を確認してください』

「うっそ……そんなに?うわ。……とりあえずハッチ閉鎖、隔壁は……問題なし。気密テスト。……問題なし。生命維持管理装置問題なしっと」

『動力部にエラー。それ以外は問題ありません』

「それは知ってるから無視していいわ」


 エンジン壊れてるからそれででしょ……。

 電源生きてるから、落ちない限りは酸素の循環装置とかそういう生命維持に必要な機能は動く。


「水のタンク今のうちに交換したいんだけど……濡れるわねこれ」

『気密スーツの使用を提案』

「あ、そうか。ヘルメットまでしっかりかぶれば水入ってこないもんね」


 空気を逃さない船外作業用の服なんだから当然だけど。

 そして気密スーツは出入り口の二重ハッチにあるから、そこで脱げば水に濡れずに出入りできる。


 早速着替えてろ過装置からタンクを取り出し、空のタンクを取り付けて……帰ろうとした時に、周囲に生命反応を検知した。


 エイダから警告が飛ぶ。


『警告、危険と思われる生物が接近しています』

「今丸腰!距離は?」

『現在地から北西方向に1000m、時速60kmで接近中』

「やっばっ」


 重いタンクを必死こいて持ち上げて中に入ってハッチを閉じる。

 人心地ついてスーツを脱ぎ、船内の清水タンクを交換した。

 シールドを上げて周りを見てみる。


 雨が激しすぎて全然みえないけど……なんか振動を感じるのよね。

 すっごく嫌な予感。


 ゴアァァァァァァァッ!!


「ひぅっ……い、今の鳴き声……?」

『現在、脱出艇より50mのところを移動中です。何かを警戒していると思われます』

「何かって……」

『警告、上空より巨大な飛行生物接近中。危険生物へ向けて急降下を開始』

「ええ?」

『高エネルギー反応を確認、シールド閉鎖』

「はぁ!?」


 エイダの反応に何いってんの?って思うと同時に、脱出艇のシールドが降りる。

 同時に、凄まじい爆発音と揺れ。

 声をあまりあげないように必死に口元を抑えてうずくまった。


 二体の巨大な生物が争う激しい音、咆哮、そして時折来る凄まじい衝撃と音。

 頭の中には映画で見たクリーチャーが口から光線を吐いて戦ってる様子が浮かんでいたけど……静かになって雨が止み、日が昇った時にその想像は多分間違ってなかったんだと、確信した。

お読みいただきありがとうございます。

仕事もあるため頻繁に更新できませんので、気長にお待ち下さい。

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