第十一話 念願の魔法を手に入れた!
おきたー。
久しぶりにものすごく目がぱっちり、頭がすっきりな寝起き。
エイダに起こされずにずっと今まで寝てたけど今何時だ……。
『おはようございます。現在時刻午後12時28分。食事はどうされますか?』
「おあよーエイダ。…………え、もう昼過ぎてんの?まあいいか。食事は軽めでハニートーストでいいわ」
パンって言っても小麦と米を混ぜたやつだけど。
原種から数世代目程度のやつでもそれなりに美味しい。
どうせマルチクッカーでそれっぽく作られてるだけではあるんだけどね。
はちみつに関しては普通にその辺に蜂みたいに花の蜜を集めてる虫がいたんで代用。
刺されることも無いし普通に益虫だそうだ。
まあ私は虫嫌いだから近寄ってきたら殺すけどね!
蜂の巣みたいなのじゃなくって、なんか袋みたいなのを作ってそれの中になみなみとはちみつが貯まるっていう面白い生態。
……そして、ちょいちょいその袋の中身がまるごとミードになっているっていうね。
ミード、最も古い酒とか言われてるやつではちみつと水と酵母があればできちゃうからね。
飲みやすいように調整してもらって飲んだらすっごく美味しかった。
今日は朝からホットミードを飲みつつ、ハニートーストにしてやった。
朝から酒飲んでやるぜぇ。
しかも超甘いぜ。
うまー。
「美味しかったー。満足満足。ミツムシに感謝だね」
『午後はどうされますか?』
「とりあえず……外回りはしないとして、昨日の夜気づいたことちょっと直したいなーと。この部屋もそうだけど、居室として使ってるところだけでももう少しこう……無機質な感じを脱したいんだけど良いプランない?」
『リラクゼーションなどを目的とした施設等で使われている内装を元に、リビング、キッチン、寝室のデザインをし、この星で確保できる素材での予想設計図を作りました』
「毎度のことながら早いわね……」
エイダが渡してきた図面……立体図として浮かび上がるそれは、壁の一部が木を使った内装となり、机の天板やらなにやらも色んなところが木で作られた物へと変更されていた。
デザインがほぼ同じなのに、素材が違うだけでこんなにも印象が変わるのかと。
壁の色もグレーの殺風景なものではなくて、落ち着いた濃いブルーだったり、アースカラーだったりですごくいい感じのものに。
正直気に入ってしまったのでそのまま採用した。
あと気を利かせてくれたのかシャワーだけじゃなくて風呂も作ってくれたようだ。
今までシャワーだけだったからね……。
やっぱりお湯に浸かってゆっくりしたい。
しかもお風呂はちゃんと窓際に置いて、見晴らしがいいところに作ってくれたようで、データ上では太陽の光がどう入ってくるのかなんかも計算されて表示されている。
私一人しかいないからカーテンみたいなのは一切なし。
なんなら真っ裸で外に出ても恥ずかしくはない!
……危険すぎるから嫌だけど。
流石に外で気密スーツはあまり脱ぎたくないわね。
いや、でもあれはあれでちょっと蒸れるし……外での活動用にいい感じの装備も新調したい。
『化学繊維で良ければ布を作れますので、現在の手持ちで作れるものは提示できます。どのようなものがよろしいですか?』
「さっすがー。んー、そうね、家の中で着れる部屋着と、外の活動用でも近くでラフな格好でいいやってときの軽作業用。戦闘が予想されるとき用のプロテクターとかも出来たら欲しいかな?あと予備の気密スーツと、念のため重作業気密スーツ、戦闘用気密スーツってところ?」
『作れる物で希望に沿った物のカタログを表示します。お好きなものを選んでください。また重作業用と戦闘用の気密スーツは、材料が不足しております。しかしこの星で採れた魔法金属で代用することが可能かと思われます。いかがいたしますか?』
「……もしかしてプロテクターとかアーマーの部分なのかな?むしろ魔法金属使ったほうが性能上がらない?」
『魔力が通じている限り、性能は比較にならないほど上がります』
おお……それなら換装しない手はないよね。
むしろ魔力通ってなくても性能上だし。
しかも軽くなるってよ。いいことしかないじゃないの。
「あ、そうだ。魔力で思い出したけど、私に溜まってるっていうやつ、あれどうなったの?」
『現在までの24日分のデータとして、戦闘前後での魔力の増加はありました。明らかに反応が強くなっております。また敵を倒した際、敵が保有していた魔力の一部が流れ込んでいく現象を確認しています。これはその場にいる一定範囲内の生物に分散されるようです』
「へー……ってことは下手したら敵が魔力回復するのね……。そりゃそうか、倒したら味方だけに経験値はいるっておかしいもんね」
『最も近い位置にいるものが大半を吸収できるようです。また、溢れた魔力もしばらくすると魔石の位置へと吸収されていくのを確認しています。遠距離で倒したとしても魔石を回収するときにはその分がプラスとなっていると思って良いかと』
「なるほど!チキンプレイしても燃料出来ると思えばプラスね。ただし、群れのうち一匹だけ仕留めるとかやったときにはその周りにいる奴らにある程度持って行かれるってことだけ注意しなきゃかな」
ゲームみたいに都合良くは行かないかぁ。
まあ、距離関係なく倒した敵の経験値が入って魔力も体力も上がるって、現実で考えたら意味わからないしね。
競争相手もいないことだし、私のやり方で狩りしていけばいいか。
「ただ問題は……私がこの魔力を扱えてないってことなのよねぇ。ちなみに魔力が蓄積されることによってなにか影響が出ていたりする?」
『初期に比べると身体能力の値が伸びていますが、サバイバル状況下でのものなのか、魔力による上昇なのかはまだ分かりません。ただし、完全に利用されていない訳ではないらしく、少尉が集中する場面において有意な減少を確認しています』
「集中してるとき……っていうと、戦闘中とかなにかかな?」
『はい。狙撃中や近接戦闘時、ATVやアルビオン、生身を問わず大小はあれど元あった魔力よりも減少していました。何か気づいたことはありませんか?』
気づいたことったって……正直なところ戦闘中とか緊張してるから、いつもの状態じゃないし……。
五感が冴えわたるみたいなのはあるけど、それが本当に魔力の効果なのかは全然わからない。
ただ使っているってことはなにかで消費しているのだから、その戦闘時の行動に何かしら寄与したものになってると思う。
「うーん……正直、分かんない。集中力があるのも当然だし、いつもより良く見えたりするのだってアドレナリン増えてればまあ分からなくもないじゃない?目に見えて魔法とか使えるなら話は別だけどさぁ……」
『魔法、魔物が扱っていたあの不思議な現象のことですよね?彼らはどのようにして魔力を扱っていたのでしょうか?レヴィの技術では魔力を【精神及び思考感応性エネルギー体】と訳されるものと呼んでいました。精神と思考によりエネルギーがその形を変えるという意味だとすれば……』
「そういうふうに願う……思う?と、それが形になる?詠唱は要らないのかな」
『魔物は特に何も言葉を発してはいません。ただ、魔力が突然動き、収束し、現象となって発動します』
「むー……よくわかんないけど……」
手のひら同士をくっつけない程度に離して、その間に魔力を貯めていくイメージを……。
じんわり熱くなっていくのを感じる。けどこれ輻射熱なんじゃね?
あつまれーあつまれー。
「……どうかな?」
『……驚きました。魔力に流れが生じています。そのまま続けてください』
「え?マジで!?私ってば天才?よーし、もっとあつまれー凝縮しろー」
『手の間に魔力が集まり、エネルギー値が上がっています。何か、現象として発現させてみてはどうでしょうか。例えば、閃光を発するなど、周囲への被害がないもので』
「ならフラッシュみたいに……!」
魔力が集まってるのはよくわかんないけど!手の間に集まった魔力がエネルギーを一気に開放してそれに応じた光を一瞬だけ放つ……!
そう、強く念じたその瞬間。
手のひらの間から突如として強い閃光が発せられ……。
「ギャァァァァァ!!目!!目がァァァ!!」
『発現成功です。約120万カンデラの白色光、熱は感知できませんでした』
「れ、冷静に観測しないで……私の目が……」
『しばらくしたら徐々に元に戻ります。フラッシュグレネードの音無し版の小さいものを食らったようなものです』
「そんなこと言ったって……あー、いきなり目の前真っ白になって、もう次の瞬間には目を開けてるのか瞑ってるのかすら良くわかんないんだけど。……あ、でもなんかうーーーっすら見えてきた。世界が緑色……」
『ともかく、少尉でも魔力を使用することが出来ました。名前の通り考えることによってその力を発現できるもの出来る物と考えていいでしょう。それも、物理現象の一部分だけを取り出すような事が可能です。通常、強い光は熱を伴いますが、先程の光は熱は感知できませんでした。手のひらも熱くはなかったはずです。また、発せられたエネルギーは魔力そのもので光子ではありません』
「……どういうこと?ちょっと良く分かんない」
エイダが説明してくれたことによれば、あのとき私が放った光は光に見えているけど実際は魔力のエネルギーそのものであって、本当の光ではない。
同じ様に魔物の魔法……スパイクバッファローの岩のスパイクも放った後、敵に当たるか時間経過で魔力として空間に散っていったそうだ。
だから岩を出そうとも、その岩は魔力がその形を変え、そうであれと願った強度に依って定義された物質のようなものであって、その役目を終えたときにはその周囲へと分散していく……らしい。
今のところ仮説ではあるけど、多分合ってるんだと思う。
そして体内に溜め込まれた魔力はその分減る。
周囲に撒き散らされた分の僅かな量はまたある程度吸収されてるっぽいけど、一度エネルギーを使った魔力はエネルギー密度が高い空間へと一瞬で吸収されていくからあまり意味はないっぽい。
金をイメージして大金持ちとか、そういうのは出来ないってことは確定したっぽい。
ゲームとかでよくある、魔法で土を盛り上げて壁にするとかそういうのはどうなんだろう。出来るんだろうか。
役目を終えた瞬間崩壊するんじゃないのか……んー……分かんない。
これは実験するしかないかな。
『先程の魔法の行使により、体内の魔力量の減少を確認しました。使用前の1%未満です』
「少なっ!いやまぁ光っただけだしね。あ、でも、どれくらい増えたか減ったかって、客観的にわからないのはちょっと不便ね……」
『何かを基準にして見るとよろしいかと。例えば低級魔力電池を1とすれば、現在の少尉の魔力量はその0.00001倍です』
「なんで私より多いやつを基準にするのよ!逆にわかりにくいんだけど!っていうかあの魔力電池ってそんなにあるんだ。ちなみにアルビオンを動かすのに必要なエネルギー量ってどうなの?」
『低級魔力電池一つで約40時間、全力稼働を続ける場合はその半分となります。参考までに、地球で用いられていた電池による駆動だと、活動時間は8時間程度でした』
「……めっちゃ効率いいじゃないの……」
『少尉の現在の魔力量だとアルビオンは1秒程度しか動かせません』
「……エネルギーバカ食いね、あれ」
私が電池になって乗ってる限り無双とか、絶対ムリなやつ。
そううまい話はないよねそりゃぁ。
だからってなぁ……。
……あ、そうだ。ゴブリンの魔石、あれ小石程度の大きさだし、アレ基準でいいんじゃないかな。
『拠点に攻め込んできた魔物の魔石ですね、大きさもほぼ同じですが、魔法を扱っていた個体は少し大きめです。通常個体を基準の1として計算すると、現在の少尉の魔力量は240となります。低級魔力電池は24,000,000となります』
「ちょうどよく分かりやすくなったわね!単位はGbにしてやろうかしら」
ゴブリンだしって思ったけど、mpでいいや。
馴染みがある方が覚えやすい。ゴブリン一匹で1mp。今の私が240mp、電池は24Mmp っと。
ちょっとすっきりしたね。
にしても私のmpは多いのか少ないのか……。
まあ、バッファローには負けてるみたいだし少ないんだろうね多分。
適当ではあるけど数値化出来たし、今後に役立てていけると思う。
フラッシュが出来たなら、今度は電気の代わりに……と思って指先のところに投光器程度の光を灯そうと思ってやってみた。
結果から言えば出来た。
ただ現象が発現するまでにちょっと時間がかかってしまうのが難点かな……。
多分集中してとかよりも、そのイメージが大事なんだろうね。
現実はゲームの世界現実はゲームの世界……魔法があるのは当たり前!
よしライトON!
「……マジで」
『先程よりもかなりスムーズに発現できるようになったようです』
「なんとなくコツ掴んだかも。ぶっちゃけ下手に何も考えないで、そうなるのが当たり前!って気持ちで具体的にどう言う風になってほしいかを正確に思い描けばいいっぽい」
『物理法則などを一旦無視して考えるということですか。考えを瞬時に切り替えられるようになればうまくいきそうですね』
「とっさに使えるやつある程度増やしておきたいわね。えーっと……バリアとか?」
『使いこなせるのであれば有用です。武器がない状態でも攻撃が防げるのであれば生存確率は上がります』
「でっしょー?」
まあ、いうほど簡単じゃない気もするけど。
というか、実際ちょっと手こずりましたが何か。
防いだと思ったら貫通されるし、なんかガラスみたいに砕けるし!
思えばアニメでもゲームでもバリアは突破されるもの……そのイメージが抜けきらないっていうことみたいで。
エイダの作った石を投げるだけの機械じゃなきゃ死んでる。
とにかく思い浮かべるのは最強の盾。決して砕けず、決して貫かれない。
すべての攻撃を受け止め、弾き返す。
そんな盾。
んで、夢中になってたらもう外真っ暗になってたわけで。
そしてすんごい疲労感も襲ってきて。
「これがMP切れの症状……!」
『どういうものかは知りませんが、確かに体内保有量が減っています。数値だと23mpとなります。攻撃を受ければ受けるだけ消費は激しくなるようです』
「うん、なんとなく分かってた。あれでしょ、強い攻撃受けるとごっそり減るんでしょ多分。そりゃ無敵バリアがローコストで使えるなら誰も使いたいもんね」
そもそもまだ魔法を受けたわけじゃないからそっちだとどれくらい減るかも分からないし。
なんだか休んだ気がしないけど、でも憧れだった魔法が使えるとなればテンションはあがるってもんでして。
なんだかんだ完全にmp切れになるまで遊んで、気がついたらベッドに倒れる形で朝を迎えてましたとさ。
変な格好で寝ちゃってたから体がくっそ痛い……。
「エイダ……魔力どうなってる?」
『4割ほど回復しているようです。……驚きました、今まで魔力を消費していなかったためか分かりませんでしたが自然回復出来るようです』
「え、そうなんだ。丸一日何もしなければ完全に回復する感じかな。じゃあ今日は魔力使わないで普通に生活しましょ。……とりあえずご飯!昨日よく考えたら一食しか食べてないからすんごいお腹へったし!」
しかも食ったの軽くトーストだけだもの。そりゃぁお腹減るよ。
なので今日は朝からちょっとストロングに食べた。
□□□□□□
『魔力を持った動植物であっても料理に魔力が残っていることは確認していましたが、それを接種することでも回復していくようです』
「なるほどー。とりあえず、回復手段が分かりやすくて助かるわね」
エイダの観測結果によると、一度体内に蓄積された魔力っていうのは上限が何かしらの条件で上がり、消費した分はその上限に達するまで周囲や食事からの補給を行うようだ。
休息しているときにはその速度が上がるため、寝ているときに一気に回復する。
体力と似たような感じになるようで、魔力をギリギリまで消費してしまうと体が限界まで体力を消費したように動けなくなるっぽい。
まあこのへんはまだまだ観測が必要だけど。
まあ、ゲームとかアニメの主人公たちみたいにモンスターを狩って生活するなんてことはする必要がないし、必要になったらなんとかする程度でやっていこうと思いますはい。
自ら危険に足突っ込みたくないわ。
「それにしても魔法ねぇ……まさか本当に自分が使えるようになるとは思ってなかったけど」
『道具がなくても何かしらの現象を起こすことが出来ると言うのは便利ではあります』
「いや本当にね。後は私が色々頑張ればもっと便利になりそうだけど」
本当に、色々と。
一応方向性はエイダが示してくれた。
けど、出来ることはこれから試していかないとわからない。
とりあえず……しっかりとその現象を理解していることが必要なのはわかったから……勉強かなぁ……。
今年最後の更新となります。
先週はお休みしてしまってすみません。
ちゃんと続けますので許して……。




