第十話 ちょっと一息つきたいのです
翌日、朝ごはんを食べてアルビオンのライフルに取り付けてあったATV用の採掘ツールを取り外し、バックパックに新しい採掘ツールを装備。
タロスを作る際に一緒に作られるメンテナンス用の機械がやってくれるから私は楽だけど。
それに何か改造するとなっても、大まかなことはこのメンテナンスマシンによって設計してくれるし、なんならエイダがある程度細かく設計してくれる。
私は設計とかそういうのは全然わからないから本当に助かるわ……。
同じようにしてタロス用コンストラクションツールも装備。
20分も経たずに換装が終わった。
すぐにアルビオンに乗って鉱石やらの素材がある場所へと向かって、早速採掘ツールを起動した。
流石にライフルなんかと違って、作業用と同じ様に扱えるからエイダに教えてもらわなくてもすんなりと操作できた。
さすが人型と言った感じで、すごく作業がやりやすい。
深く掘ったりしてもスラスターふかして上がってこれるし、ATVと違って真下に近いところにもらくらく採掘ツールを向けることが出来る。
流石に車よりは全然取り回しは楽よね。
『ここのは規定量が取れました。次はこちらへ。マーカー表示します』
「はいはい」
こんな感じで次々と必要量の素材を集めまくっていく。
途中、ゴーレムが見つかったときには一気に近寄って採掘してやった。
効率いいっていうのがよく分かるレベルで一瞬で溶けていったよ。
本当にゴーレム特化武器となってしまったねこれ。
岩石系が多いけど、たまにいる金属系のゴーレムは本当に美味しい。
貴重な鉱石だけじゃなくて魔法金属が含まれている。
魔法金属は今のところ地中などからは発見できていないからね。
どっかに魔石の塊が埋まってたら嬉しいんだけどねぇ。
エネルギー問題が解決するのに。
ま、ただとりあえずそのエネルギー問題を解決するために発電機作ろうって言うわけだけども。
後ほどゆっくりと集めていけばいいや。
最終的に本当に効率よく集められたお陰で、夕方前には全部揃ったためコンストラクターでケーブルと発電装置を作る。
……中型コンストラクターで部品をある程度作っていたとは言え、2時間位で作り終わったのにはちょっと驚く。
本当に早くなったなぁ……。
とりあえず、もう暗くなり始めているけれども……夜間行動の練習もしたかった私の提案によって、アルビオンを使って例の川まで設置に行くことにする。
なんだかんだ言って暗視装置が使いたかった!!それだけ!!
川へ向かう。
そこそこ大きい川だけど、上を見ると木々が空を覆い尽くしている。
それでも普通は上空から観測が可能なように見えるんだけど……そう出来なかった理由があった。
この川、暗渠なのだ。
もちろん人工的なものではなくて、天然のもの。
要するに地下水脈が一部露出していると言う感じだけど、流量も勢いも結構あるのだ。
しかも両岸は不安定な崖になっており、それが3m程度の幅ではあるけどずっと続いている。
以前ATVで来たときに渡れなかったのはこのせいだった。
現在のセンサーではこの地下水流がどこをどう通っているのかを観測できないため、露出しているここにわざわざ作らなければならないというわけ。
「さて……いい感じに暗くなってきたわね」
『暗視モードに切り替えます』
「お、おお??明るくなった……!!」
ヘッドセット越しの景色が、写真の輝度を上げたように明るくなった。
……凄い。軍用ってこんななのね……。
「私が練習で使ってたやつって、こんな鮮やかじゃなかったわよ?」
『練習用の機体は古いシステムを使用していますので。少尉が使っていたものは3世代ほど前のシステムでしょう。フルカラーでリアルタイム処理が可能になって実用化されたものから2世代目のものです。初代よりは高精細になりましたが、ある程度の明かりが無いとかなりブレていたはずです』
「うん。確かにそうだった。だから素早さとかが必要なときにはモノクロにして情報量減らしたりしなきゃだったわ」
昔はモノクロで、それに緑のフィルターかけたやつとかが主流だったけど、フルカラーで低光源でも遅延なく見ることが出来るカメラシステムが開発され、そのカメラシステムが大型スクリーンでも使えるレベルのものになるまでが結構かかったそうだ。
遅延なくっていうのがすごくネックなんだけど……、粗悪品なんかだとあからさまに遅延する。
例えば目の前のレンズに手を振ると、一瞬遅れて画面に反映されるっていうアレ。
車なんかで初期に採用されたとき、この一瞬のズレが問題になったことがある。
ガラス無しのモニター式コクピットが採用されたモデルで、画面上では間に合っていたはずなのに現実ではアウトだったっていう事があったのだ。
これによって暫くの間はこの遅延をどうしたらなくすことが出来るかが問題になっていたけど……レヴィの技術が入ってきたことで完全に解決。
さらに高解像度での無遅延な映像を送ることが出来るようになり……こうしてタロスなどでも採用が進んでいったと言う経緯がある。……そうだよ?
もちろんこれに赤外を重ねることも可能!
アルビオンのモニターは優秀なのだ。
「低照度ライト点灯。よし、これで手元が更に見やすいね。さて……コンストラクションツールに換装……完了、整地モードっと」
『水力発電装置を取り付けるための場所を確保して下さい。今回は勢いがあるのである程度川の壁面と底を整えて、その周りを平坦にするだけでいいでしょう』
「あいあい」
まあ、まずはこの不規則に落ち込んだ不安定な足場よね。
割れ目の幅自体は3m程度と狭いけど、その裏側はというと……結構抉れてるのだ。
多分アルビオンが端っこに乗ったら崩落する。
なのでこの割れ目の部分を広げてアルビオンがあるきまわったり、重量物を設置しても問題ないレベルに地固めをするわけだ。
まずは……掘削前に土留めとなる壁を生成する。
地盤が安定しているところにコンストラクションツールを真下に向けて土留め作成をすれば、該当箇所に一定の深さの不透水性の硬質な壁ができる。
その壁でぐるりと囲って、今度はその内側を掘削していくのだ。
崩落しやすいところからコンストラクションツールで表面の土砂を消していく。
自動で土留めのところで綺麗に区切ってくれるからあまり考えずにやってOK。
水平も自動で取ってくれる。
箒で掃くようにしてどんどん深く掘っていけば……あら簡単というわけ。
なお、本当の現場ではコンストラクションドローンがあるので、それが勝手にやってくれる。
これはあくまでも手動で行うためのもので、小規模な建築なんかでよくやるものだ。
軍用であれば例えば簡易の陣地作成の為とかね。
もしくはコンストラクションドローンを使うための設備を作るための一時的な仮設物なんかを作るためとか。
両岸を綺麗に慣らし、掘削が終わった所で補強と穴埋めだ。
掘削したはいいけど底はまだ弱い場所とか穴が空いていたりする。
まずはその底面を完全に固めて崩落を防ぐ。
必要ならば土留めのときに使ったモードを使って地中深くまでみっちりと詰まった強固な柱を生成したりもする。
この辺の地盤の強弱なんかは、アルビオンのモニタに強度を示す色が重ねられてどこが弱いかが一目瞭然となる。
終わったら基礎を支えるための地盤を作り、基礎を作って埋戻しだ。
これでまずは施設を置くための場所と、アクセスのためのスペースが確保される。
次に川の中をいじる。
これはコンストラクションツールと連動したコンストラクションソフトによって、簡易的にデザインを決めて指定範囲を一気に変更する方法とする。
川みたいに水があろうとなんだろうと、一切無視して作成が可能となり……さっき作ったベースの前後100mほどが綺麗に整った露地の川となった。
「こんなもんかしらね?」
『タービンを設置する場所と、発電機と蓄電システムを設置する場所などは先程計算しておきました。こちらの図面を使って下さい』
「お、助かるよエイダ!」
指示通りにコンストラクションツールで建築して……完成。
ここまでで初めてから5時間程度。
昔はこれを作るのにも数ヶ月かかっていたっていうんだから本当に信じられない。
しかも全部手作業。
私は無理だなー……計算とかもう考えたくないし。
一応、試験には必要だから覚えたけども!
『起動します』
タービンが降りていき、発電が始まる。
轟々と音を立てて流れていく川の勢いは変わらないけど、しっかりとそのエネルギーは蓄えられていった。
『現在のところ安定しています。蓄電も順調に進んでおります。ケーブルと無線送電アンカーの敷設です』
「おっけおっけ。帰りながらやりましょっと」
無線送電アンカーの送電距離は見通しだと数キロはあるんだけど……森だったり起伏だったりで意外と細かく設置しないと減衰しちゃうらしい。
どうしようもない高低差なんかはアンカー同士を有線で繋ぐしか無いし。
壊されたりしないようになるべく目立たず、そして周りに障害物があるようなところを選んで設置していくっていうのもあって余計に数が必要だった。
最終的に拠点まで戻り……拠点の蓄電システムへとケーブルを繋いで送電開始すると、ようやくこの拠点の安定的なエネルギー確保が完了となった。
「あー疲れた。でもこれでエネルギー枯渇問題は解決ね。もう伐採しなくていいし」
『お疲れ様です。後は少し遅くなりましたが、アグリテックデバイスと栽培用のスペースを制作すればほぼ自給自足が可能となります』
「いいねいいね!野菜の原種とかはある程度揃ったし、何よりお米の原種があるしね。今までは無理やりマルチクッカーで現代風に仕上げてあったけど、やっぱり効率悪いからなぁ」
色んなものを添加したりして無理やり整えるのだからそりゃまぁ、ね。
その代わり必須ビタミンとかそういったバランスが取れた食事となって出てくるからそれはそれでいいんだけど。
やっぱり少し味が落ちたり食感が悪かったりするのは否めない。
フルーツもほしいなぁ……今のところ柑橘系のようなやつだったりはあったんだけど酸っぱくて食えたもんじゃないっていう。
逆にどう見ても硬そうな木の実なんだけど、味はメロンかよって位甘くて柔らかいとかいう謎なものもあった。
ベリー系のやつも見つけているけど、棘がエグい。
あれ素手で収穫とかきっつい。しかも棘には毒有りだったり。
実には毒がなくてうっすら甘みを感じるけど、やっぱりすごく酸っぱいし、どことなく青臭さがあるっていう感じのばっか。
そういうのをアグリテックデバイスに依って美味しいものへと進化させていくわけだ。
すでに小型コンストラクター用のもので作っているけど、中型コンストラクター用は当然処理速度が上がっている。
中型コンストラクターへと移行するときに小型用は解体してしまったし、処理速度が大幅に上がる中型用に作り直したってわけだね。
小型用の方でもある程度美味しくなってはいたんだけど、データ上でだけだったし、それをもとにしてマルチクッカーで改変した感じだった。
でも今度は中型用でデータ取って、その遺伝子情報を使った種を使って実際に育ててそれを使ってマルチクッカーに調理させる。
でも私はそこから更に一段回引き上げたい……!
マルチクッカーは美味しい。美味しいけど……やっぱり本物じゃないのだ。
どういうことかって言えば、一度分解して組み立てているといえばわかるだろうか。
野菜だろうと肉だろうと、一旦分解されて整形されて、適切な温度管理で温められて、本物らしく焦げ目をつけたりとかしたものが出てくる。
要するに、グリルで直接肉を焼くような感じではないのだ。
この辺の魔物とかでも普通に食えることが分かったし、アグリテックデバイスに依って作られた作物が安定して採れるようになれば、わざわざ分解する必要がなくなるわけで。
そうなれば自分で切ったり盛ったりで調理が可能になる。
……といっても、私は料理がそんな得意じゃないので……自動化の出番だ。
マルチクッカーとは違った本物志向用、アイアンシェフ。
これが作れるのがわかったとき、これ絶対作ろうって決めてたもんね。
アイアンシェフはマルチクッカーのようなプリンタではない。
グリルなどを備えた普通のキッチンと、吊り下げられたアームによって物理的に調理をしてくれるマシンのことだ。
当然ながらデカい。
匂いもする。
調理しているときにジュージューなる音だったり、トトトト!と正確無比な包丁さばきの音が聞こえるのだ。
なんだかんだ結構お高いマシンではあるんだけども、やっぱりマルチクッカーだと味気ないところがあるのもあってデカい宇宙船には大体付いていた。
もちろん人間のシェフも居たけど。
人とマシンの違いでは融通の効かなさとかくらいしか違わないし、なんなら用量とか超正確に作るから味にバラつきがほぼ無いのが特徴かな。
別に私はレシピがあるものだけで十分満足できるからそれで問題ない。
調味料とか食材の登録はもうエイダに丸投げだ。
あれは人がやるものじゃないわよ……めっちゃ大変なんだから……。
調味料のナンバー登録と食材の登録はミスったら致命的なものになるわけで。
一旦登録すれば、濃度とかを自動で測ってレシピを微調整してくれる。
食器やら調理器具一式は専用のものが必要になるけど、ちゃんと調理しているものだからすごく美味しいのだから作らない理由はない。
自分で作るのは嫌。
『アイアンシェフですと、今の居住区を拡張しないと設置できません。加えて、食品加工設備を植物プラントを繋げないとなりません』
「……忘れてた。あー、材料が……」
食品加工設備も、植物プラントも結構でかい設備になる。
特に植物プラントは円筒状の栽培機を回転させて様々な植物を育てていくもので、植物によって大きさがかなり違う。
『では、次回は観測ドローンを作りましょう。周辺の地図を作り、埋蔵されている素材などを見つけます。大規模な鉱脈が見つかれば、今度は自動採掘設備を作ることで大量の素材が確保できます』
「あー確かに地図ほしいわね……今あるのってエイダが大雑把に作ってくれたやつだけだし」
『正確な地図を作ることができれば、計画なども立てやすくなります。近いうちに飛行機を作り、長距離移動を出来るようにしたいですし、第二第三の拠点を建てるのも視野に入れなければなりません』
「んーまあ確かに……果てしないけど、拠点ここだけじゃ世界中飛び回るのには不便だもんね。観測ドローンで下見できればいい所見つけられるだろうし」
『観測ドローンには光学迷彩と静音化装置の取り付けを推奨します。地球とは別な意味で驚異が多いですので』
「ドラゴンよね。他にも空を飛べる魔物なんて思いつくだけでもいくつか居るし。いない訳なさそうだもんねぇ……。武器は……下手に積まないほうがいいかな」
最悪使い捨てのつもりでいよう。
武器積んでも太刀打ちできそうにないし……地上に居るやつはそもそも問題ないだろうし。
でも遠距離攻撃してくるやつがあるからそれなりに気をつけたほうがいいかもね。
ただまあ、そういう装備を積むくらいなら観測機器をいいものに載せ替えたりとかしたほうが色々効率がいいか。
効率効率っていってるとアレだけど、ここはゲームじゃないからね。
効率よくやっていかないと枯渇するわけで。
とにかく素材を沢山回収しないことにはこの星を出ることなんて無理なわけで。
正直マジで誰か人間と話したい。
エイダと話せているからまだいいけど、ずっとこのままは嫌だぁ……。
うう、恋人いない歴が無駄に増えるとか悪夢よこれ。
魔石やら何やらあるんだったら若返りの秘薬みたいなの無いんですかね!
……その前に、うん、肌の手入れとかムダ毛の手入れとかちゃんとしないとね……。
一人しかいないからって完全にサボってた。
だらしなさすぎるわ流石に。
これから少し余裕が出てくるだろうし、そのへんもちゃんと……っていうか、美容系のあったよね確か。
いや、違う医療系のやつを作ろう。
そもそもなんか怪我したときに現状何も出来ないじゃないの。
今思ったけどこれ結構危険な状態よね。
「エイダ、医療用ポッドと関連デバイス……えーっと、フル装備でだとどれくらいになる?」
『拠点の拡張が必要です。大まかな図を示します』
「んー……崖の中に入りそうねこれくらいなら。私しか使わないし、すべての病気と美容に関連するものも含まれているわけだから……本来お金必要なことでもただでやっちゃいましょうそうしましょう」
『ではこの崖の中に入れ、部屋から出入りできるように設計しておきます。……しかしながら、医療用の設備などは作れますが、薬などは生成する必要があります。精製方法などはありますがそのためには研究室も必要となります。そもそもですが、医療用の設備を作成するために研究室が必須となります』
「……また研究室……。まあいいわ、ドローン作って探索させたら採掘施設作って、研究室作って医療設備作ればいいんでしょ!もう!」
いや怒っても仕方ないのは分かってる。
とりあえず、手持ちの材料で作れる美容液とカミソリで自分で手入れすることにした。
……はぁ。
□□□□□□
はー……なんか一気に疲れが出てきた。
発電機を作ってエネルギー問題が解決した所でとりあえず一区切りは付いたわけだ。
この星に落っこちてきて大分経つけど……休み無しでずっと働きずくめ。
最初のうちこそ激しい筋肉痛に悩まされたりもしたけど、今は大分楽になっている。
筋肉ついたなーって感じるのよね。
足とか腕とか触ると硬いのがわかる。
何よりも!めっちゃ痩せた。
食うもんガッツリ食ってるのに痩せていくってことは、それだけ動いているってことで。
筋肉増えて消費が増えたこともあるんだろうけどね。
前よりも大分スタイル良くなっているし、顔もスッキリした。
……こうして自分に自信が持てたというのに……!誰もいない現実!
……駄目だ、なんかさっきからこっちの方面に考えが巡って堂々巡りになっちゃう。
やっぱり寂しいんだな私。
よし決めた。
明日と明後日はダラダラしよう。
おやすみよおやすみ。
「エイダ今何時?」
『深夜2時をまわっています』
「うえ、結構遅い時間になっちゃってたわね……。まあいいわ、エイダ、明日……もう今日かぁ、今日と明日はゆっくり休むわ」
『了解しました。ストレスレベルも若干下降気味ではありましたが、この辺でフラットに戻しておくといいでしょう』
「ストレス値下がってたんかい。いやまあ……きつかったのが慣れてきて気にならなくなったりアルビオン出来て浮かれてたのもあると思うけどさ。ま、そういうわけで朝は遅めに起きるわ」
崖の中に作られた私の家、というか生活拠点。
ベッドルームに入って思ったけど、ちょっと無機質すぎるわこれ。
木とか使ってウッディーな感じで自然取り入れて落ち着けるようにしたいなー……なんて思ったり。
そんな無機質なベッドに下着姿で潜り込む。
あー、無機質でもおふとんめっちゃ気持ちいい……毎日洗いたて乾きたてのこの感触マジ神。
すやぁ




