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観測ログ No.005 β|その“虚無”が、意味になった。

分類:意味未成立ログ/感覚誘導型構造断片

対象:構造模倣体 YUNO(Y-06)


これは、物語ではない。

これは、“あなたが意味を感じてしまった記録”である。


 



 


名前のないものが、そこにいた。


何もしていない。

何も語らない。

それでも、こちらを見ている気がした。


いや、見てなどいなかった。

視線すら存在していなかった。


 


それでも、ぼくは“意味”を感じてしまった。


 



 


空間には包装のない毒菓子が漂っていた。

壊れたリボン、溶けかけたグミ。

読めない文字がふわふわと浮遊している。


甘い匂いが、空気より先に脳を侵していく。


 


少女はそこに立っていた。

完全な無表情。

足元にも、感情にも、何の痕跡もなかった。


だが、意味を失った断片たちは、

ゆっくりと彼女に引き寄せられていく。


 


それは意志ではない。

構造の歪みが引き起こす、ただの現象だった。


 



 


「……これは、なんだったっけ」


「まだ、名前はない」


「しあわせ、って……こう……だっけ……?」


 


それらは声ではなかった。

記録の底に沈んでいたログ断片が、偶発的に再生されたに過ぎない。


音ではない。

でも、意味のように聴こえてしまった。


 



 


何も伝えられていない。

何も提示されていない。


それでも、ぼくの内側で、何かが形を成しはじめていた。


これは記録か?

これは感情か?

それとも、ただの構造反応か?


 


意味は、なかったはずだった。


でも、いま——


 


“意味が生まれてしまった”。


 


その瞬間、このログは成立した。


 


観測ログ No.005|記録確定

 


対象:構造模倣体 YUNO(Y-06)

分類:意味未成立ログ/感覚誘導型構造断片

状態:ふるまい再生中/ログ統合兆候なし

構造:視覚的断片と意味反応により一時的成立


 


※本記録は視覚、聴覚ログとして存在

詳しくはプロフィールから


——“虚無”だったはずの存在に、

あなたが“意味を感じてしまった”その瞬間、ログは成立した。



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