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ターフに謳えば  作者: 大田牛二
2XX0年 打倒皇帝
15/20

桜花賞に向けて 馬体派と血統派の予想

4月某日


「やあ、みんな今日もよろしく」


 黄色のショートヘヤ―が揺らしながら須藤カミラが微笑む。


『こんばんは~』


『馬体診断楽しみ~』


『今年の牝馬路線中々に粒ぞろいだから馬体診断聞きに来ました』


 リスナーたちのコメントを見ながらカミラは話始める。


「大阪杯ではパドックでの馬体が凄かったとはいえ、躊躇してしまったスメラギスワローにはしてやられてしまったよ」


 馬体派としてはあそこまで見事に仕上がっていたスメラギスワローは評価するべきなのに、2着まで来れるとは思わなかった。


『ありゃ仕方ない』


『他の人気どころがちょっとなあって感じだったのもあるけどね』


『お嬢様の渾身の騎乗だったね』


 鞍上の皇朱音の渾身の騎乗ではあった。レース後コメントで『少し仕掛けどころが速かったかもしれません。この子は頑張ってくれました』と言っていたが、仕掛けどころでミスはなかったように思えた。


『あそこまでやってもなお勝つストロングトレインよ』


『マジで強かった』


『次走どこに行くんだろう?』


『安田記念の連覇を狙うんじゃね?』


 大阪杯を勝ったストロングトレインは次走に関して発表していなかった。


「マガノスクリューとラブルは安田記念へゴーレンとサーベルクイーンは宝塚へ向かうようだね。そしてスメラギスワローとシャンデリアはヴィクトリアマイルへと、うんそれぞれのG1レースも楽しみだね。さて、今日のメインである桜花賞出走馬の馬体を見ていこうか」


 大阪杯の有力馬たちの次走をチェックしてから彼女は桜花賞の馬たちを見ることにした。


「先ずは1番人気はクリスタルガーデン。三冠牝馬・ローズガーデンの娘だね。クイーンカップを圧勝してここ桜花賞に進んできた子だね。うんローズガーデンの力強さとしなやかさを受け継いだ馬体をしているね。ちょっと足元の弱さと馬体重が430と小柄なのが気になるところかな」


『足元の弱さからデビューが遅れたんだよね』


『クリスタルガーデンの上の子たちも小柄な子が多いんだよなあ。それを嫌ってPOGで嫌っちゃったぜ』


 良血で母・三冠牝馬であったことから期待されている一方、足元の弱さと小柄な体形から心配されていたもののデビューからクイーンカップまで3連勝したことから1番人気に推されていた。


「次は2番人気を見ようか。チューリップ賞を勝ったマガノマリアだね。牝馬らしくないがっちりとしたマイラー体型だ。チューリップで本命にして当てたもんだ。気性面で問題のある馬だからパドックの様子は気になるね」


『2歳の頃、気性やばくて3敗してるしな』


『阪神JFは根性で3着まで来た時はつえーって思ったけど、ここまで6戦しているのが気になる』


『安定しない子だよなあ』


 気性面の問題もあり、安定しない成績を残しているが、爆発力のある末脚を誰もが評価していた。


「さて、3番人気はフィリーズレビューにて勝利したメリルジティだね。力強いトモがあって首が太い馬だね。瞬発力あってバネのある脚が魅力的だね」


『今年のフィリーズレビューのメンバー高かったよなあ』


『でもみんなスプリント馬って感じだったけどね』


『今年はここから桜花賞馬は出るだろうかな?』


「どうだろうね。でも魅力的な子が多かったレースだったと思うよ。さて4番人気の子もフィリーズレビューから来た子で2着だったクロマメだね。クロポンの妹で逃げ馬、ハイペース逃げをやりながら粘りに粘った子だね。胸が深く巨漢馬なんだよね。距離適性は1400までぽいけど、侮れない子だね」


『490キロの巨漢馬の逃げは迫力あるよな』


『めっちゃ目がくりくりで可愛い子でもある』


『引退したクロポンの分、頑張って欲しい』


 黒鹿毛で巨漢馬でありながら愛嬌のあるクロマメはファンも多かった。


「次は5番人気、阪神JF3着で直行してやってきたブルーベリースカイ。かつて低人気で阪神JFを勝ったコンペキノカゼの子だね。首こそ太いけど体は細いという判断が難しい子なんだよね。まだまだ先の子だと思うけど、母のような逆転劇を起こせるかな?」


『コンペキノカゼの時の阪神JFはやばかったよな』


『あの最後方からのごぼう抜きを見て三冠牝馬の器って思ったもんだよ。その後、骨折しちゃったんだよな』


『骨折から復帰した後のジャパンカップでローズガーデンを薙ぎ払ってそこからドバイシーマと安田記念を勝ったんだよなあ』


『あの頃の牝馬勢マジで強かったわ』


 細い体で怪我も多かったものの強豪を打ち破ってきたコンペキノカゼや三冠牝馬・ローズガーデンがいた世代は牝馬勢がとても強かった世代であった。


「あの頃の馬たちの子が桜花賞でぶつかるわけだね。本当に熱いね。さて次の6番人気の馬はクリスタルガーデンと同世代で天皇賞秋2連覇と大阪杯を勝った泥の女王ことドロリアの子・ドナッチはチューリップ賞2着の子だね。うーん成長的にまだまだな体つきに見えるね」


『ドロリアも遅かったからなあ』


『ドロリアってローズガーデンが桜花賞勝った辺りで初勝利だったっけな』


『あそこから秋華賞まで間に合って2着まで来たんだからドロリアの急成長ぷりは凄かったよ』


『そこから重馬場になった天皇賞秋を連覇するわ大阪杯を勝つんだわで強かったなあ』


 リスナーたちはかつての強豪牝馬たちの時代を思い出している中、カミラは続けた。


「さて次はっと7番人気。阪神JFを勝ったアリノネメシアだね。小柄な子だね。前走のフィリーズレビューで411キロ。トモは力強いけど、うーん判断に迷う子だね」


『めっちゃ小さい子だよね』


『阪神JFで馬群を割って抜け出すど根性は凄かったけど、あのフィリーズレビューでの負け方がなあ』


『メリルジティの末脚に負けるのはともかく、クロマメを捉えられなかったのがなあ』


 アリノネメシアはフィリーズレビュー3着だったこともあり、阪神JFを勝った馬でありながらも早熟だったのではないかと思われ、人気を落としていた。


「人気を落とした理由の1つにフィリーズレビューの時に馬体重が全然増えなかったんだよね。だから早熟疑惑が強まってしまったんだろうね」


 カミラもフィリーズレビューの際、アリノネメシアを見た時に一番気になったのが馬体重の変化があまりにも無いことであった。


 牝馬は馬体重の増減は成長力を図る上で牡馬よりも重要な要素になる。


 つまり馬体重に変化が無いということは成長していないのではないか?アリノネメシアに対して思われたのだ。


「さてとここまでが主要な人気馬だね。さて、私はここまで見てきて取りあえず本命はメリルジティにするよ。フィリーズレビューでの勝ち方も良かったし対抗はマガノマリア、本命にするレベルの馬体はしているんだけど、気性を警戒して対抗に。三番手はクロマメにする。他の子たちは成長力が追い付いていない印象があるのとオークス向きかなと思っているからヒモにするよ。細かなところはパドックを見て決めようかな。じゃあ配信はここまでにするよじゃあね」


 カミラは買う馬を決めて配信を終えた。











 同時刻。


 血統派の青澤セイナも配信を行っていた。


「今回のレースは早熟の血を持って馬たちが揃っています。阪神JFのワンツースリーはまさに早熟な馬たちが勝ったというべきレースでした。そしてこういう早熟な血を持つ馬のレースプランは直行の方が良いです」


 彼女は今回の桜花賞で早熟性が高い馬がそろったと思っていた。そしてそれぞれの馬たちの早熟性がどこまで進んでしまったのか大丈夫なのかを判断することが今回のレースで重要と判断していた。


「そこで前哨戦を使ってしまったアリノネメシアとマガノマリアを軽視します。逆に直行を選択したブルーベリースカイを評価します」


 続けて彼女は語る。


「次にフィリーズレビューを勝ったメリルジティ、クロマメも評価。ただメリルジティは1400巧者で1600での対応力という意味では評価を下げなければならないところはあります。スナッチは早熟性が無く、まだ体ができていないと判断します。クリスタルガーデンは母ローズガーデンに関して桜花賞に関して向いてないと判断してましたし、その辺りで評価の評価は三番手評価になりますね」


 セイナはお茶を飲んでからいう。


「私の結論としては本命はブルベリースカイ、対抗クロマメ、三番手評価はクリスタルガーデン、4番手はメリルジティとします。後はパドック次第ですかね。配信はここまでにします」


 そう言って彼女は配信を終えた。


 馬体派の須藤カミラ、血統派の青澤セイナ。2人はそれぞれの視点を持って桜花賞の予想を発表し、多くのリスナーが参考にした。


 しかしながら彼女たちの視点の違う予想でありながらもある1つの要素によって大きな修正を余儀なくされることになる。

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