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ターフに謳えば  作者: 大田牛二
2XX0年 打倒皇帝
11/20

大阪杯に向けて ドバイの結果と断トツの1番人気

 4月某日


「いやあ、やっぱバルバロッサ強いわ」


 安西は缶コーヒーを飲みながら坂井にドバイ遠征にてドバイシーマクラシックを勝利した真紅の皇帝・バルバロッサの強さを称えていた。


「馬群の中から直線入るなり出てきて5馬身差の完勝でしたね」


「マジであれは強かったわ」


 海外の強豪相手に圧勝したバルバロッサの強さは本物であった。


「ワルツは7着を始め、その他の子たちもドバイで勝てなかっただけにバルバロッサが勝ってよかったですよ」


「そうそう、ワドーは2着で惜しかったんだよなあ。マグナスも掲示板には残ったんだよなあ。でも、4歳勢は惨敗だったのがなあ。あまり言いたくないが4歳勢はバルバロッサを除いでやっぱ弱くねぇか?」


「そうですね。しかも今回、ドバイにいったのはクラシックで好走した馬ばかりでしたからね。そういう声は大きくなりそうです」


 実際にSNSを始め、4歳勢のことが話題に上がっていた。


「誹謗中傷レベルなのは論外だが、ここまで成績が良くないのはなあ」


「難しいところですね」


 世代事の強さに明らかに差があるように思える状況であった。


「そんな4歳の中で明らかに強いバルバロッサの次走は宝塚記念か」


「そうですね。オーナーの意向で、宝塚記念から凱旋門賞というローテでいきたいようです」


 バルバロッサを所有している馬主の安藤幸助は、


『次走は宝塚記念、そして凱旋門賞を狙いにいきます』


 記者に囲まれながらそう宣言した安藤の姿の映像が以前、流れていた。

 

 後にこの宣言を後悔することになるのが、それは先の話である。


「あの馬の強さなら凱旋門賞狙えるんじゃないか?」


「見たいですね。勝つところ」


「遅れたっす」


 2人の元に高坂がやって来る。


「今日、遅かったな」


「新人の教育係に任されたんで、遅れたっす」


 高坂の言葉に安西は吹き出す。


「教育係?お前が、うっそだあ」


「嘘じゃないっすよ。これでも仕事できるっすよ俺」


「3人揃いましたし、行きましょう」


 ぎゃあぎゃあ騒ぐ2人に坂井はそう言った。










「やあ、みんなこんばんは」


『こんばんは~』


『馬体診断楽しみ~』


『カミラ様~』


 黄色い髪の須藤カミラがリスナーに挨拶し、リスナーたちも答えていく。


「今日は大阪杯出走馬の馬体を見ていきましょうか……」


 彼女はそう言った先ず、1番人気の馬の馬体の画像を見せる。


「このレースの断トツ1番人気のストロングトレインだね


 まだ予想オッズではあるが、断トツと言って良かった。


「筋肉ムキムキで力強いトモが印象的だ。サウジカップでの疲労は感じさせない。しっかりと力を発揮できる状態になっていそうだね」


『流石に逆らえないよなあ』


『頭間違いなし』


『逃げしかできない馬だけど、それでもなあ馬券内は確実だろう』


『鞍上も鬼童良和だし、勝利確実』


 リスナーたちも断トツ1番人気に何ら違和感もなく、勝利するのは当たり前とさえ思っている者も多かった。


「私も全く逆らうつもりは無いけど……まあ2番人気を見て見ようか」


 そう言ってカミラは2番人気ラブルの馬体を見せる。


「中山記念を圧勝し、ここにやってきた馬だね。馬体的には胸が深く、体のバランスの良いシルエットをしているね。ただ……一方でまとまり過ぎてG1での爆発力に欠けているように思っているよ」


 G1レースを勝つというからには突き抜けたものがあるべきである。


『なぜか2番人気なのよね』


『人気している理由はまあ中山記念の勝ち方が派手だったのもあるよな』


『それと鞍上がジャック騎手だからだろう』


『正直、疑っている』


『弱いと言われている4歳勢だしなあ』


 リスナーたちの言葉からは疑いの意見が多かった。中には世代レベルの点で軽視している者もいた。


「世代レベルに関してはまだ判断しないつもりだけどね。さて、次は3番人気のゴーレンを見ようか」


 6歳牡馬のゴーレンの画像を見る。


「今年の京都記念を勝ち上がって大阪杯へやってきた馬だね。馬体的にはがっしろとした肉体でマイラー体形ながら距離をこなせるのは馬体の柔らかさからくるものだろうね。瞬発力もあるし有力馬であることは確かだ。一方で、後方脚質で瞬発力タイプで、ストロングトレインのラップにどこまで食らいつけるかだね」


『悪くないと思うんだよなあ』


『大阪杯って先行有利ではあるからな。後ろから来れるかね?』


『少しスタートが微妙になってきているのは気になる』


『鞍上は乾かあ』


 リスナーたちの評価はそこそこであった。しかし、今回のレースとの相性面で疑問視されていると言っていいだろう。


 そんなリスナーたちを横目にカミラは4番人気の5歳牝馬のサーベルクイーンの画像を見せる。

 

「うん、牝馬らしいしなやかなシルエットで、瞬発力と柔軟性を感じる馬体ですね。鞍上の真田丸騎手は継続騎乗だね」


『実績だけなら2番人気でも可笑しくないよなエリザベス女王杯勝っているわけだし』


『金鯱賞でシャンデリアに負けた印象が悪いんだろうなあ』


『重馬場で逃げるシャンデリアを捕らえきれなかったからな』


『あれは雨川の逃げが上手かったのもあるが、11番人気のシャンデリアに負けるのはなあ』


 G1馬であるサーベルクイーンであったが、前走の金鯱賞で低人気ながら逃げたシャンデリアを捕らえられず、負けてしまっていた。


「では、話題が出たことだし8番人気のシャンデリアの馬体を見て見るとしよう」


 そう言ってカミラがシャンデリアの写真を見せる。


「シャンデリアは6歳の牝馬だね。馬体的にはぱっと見はダート馬に見えるパワーあふれる馬体だね。重馬場巧者ゆえの馬体には見える。鞍上は雨川騎手ではないんだね。鈴村騎手か……」


『雨川乗らんのか』


『この日は中山だね』


『とりあえず、天気は大丈夫そう』


「気性的な難しさはあるから継続騎乗の方がいいと思うが……まあ次は5番人気5歳のセン馬・マガノスクリューを見て見ようか」


 マガノスクリューの画像を見せる。


「相変わらず、顔つきがあれだけど首のラインから背中のラインがいい。腹回りも上手く引き締まっている。うーん品川厩舎らしい馬体の仕上げだね。僕は好きだね。ただ去勢明け一発目でG1というローテがちょっと嫌ではあるね」


『マガノスクリュー君。去勢しても気性難ぽさは消えてないなあ』


『そうそう消えんだろあの感じ』


『かつては皐月賞で1番人気だっただけに馬体はいいんよな』


 マガノスクリューは3歳時、弥生賞の圧勝劇から皐月賞では1番人気に推された。しかしながら皐月賞で、出遅れしてからそこからかかり散らかしレースどころではないレースを行い、最後には柵を飛び越えて倒れ込むというとんでもない行動をした馬である。


 そこから陣営は立て直しを図り、重賞2着という結果を残すことはできたものの成績は安定せず、気性もどんどん悪くなっていったことから去勢を決断。その去勢明けからの一発目が大阪杯なのである。


『去勢明け一発目がG1レースってよくよく考えたらやばくね?』


『品川先生はダービー卿狙いだったらしいんだけど、曲野オーナーがそれを覆したんだよな』


『マガノジャスミンの時といい、品川先生、曲野オーナーに振り回されていてかわいそう』


「馬体だけならマガノスクリューいいんだけどね。ちょっと気性明けというのと陣営内で上手くいっていない感じもあるのがね。鞍上は淀川騎手だから無難に乗れるとは思うけど」


 カミラがそこまで言ってから少しノビをしていった。


「さて、上位人気を見ていったわけだが、他に見て欲しい馬はいるかな?」


『剛腕お嬢様の馬を見て欲しい』


 彼女の言葉を受けてリスナーがそんなコメントを残した。


「剛腕お嬢様……ああ皇朱音さんか……」


 剛腕お嬢様の異様を持つ皇朱音は5年目の女性騎手である。スメラギグループという大企業の会長の娘でもある女性である。


「初めてのG1 出走だね。頑張って欲しいが……さて馬は……スメラギスワローだね。確か7歳牝馬でマイル路線を主に走っていた馬だね。重賞勝利は無いけど、2着2回という結果が最高で……前走は愛知杯、結果は7着……その状態で初の2000mへの距離延長か……」


『親の馬に乗って出てきたんだなあ』


『相変わらず、乗せてもらえる馬はいるよね。流石お嬢様』


『この馬、だいぶズブくなっているんだよなあ。でも初の中距離戦っていうのがあれよね』


「馬体的にはマイラー体形だね。お尻のラインがいいね。7歳馬とは思えないお尻はしている。ズブくなっていなければという馬ですね」


『うーんG1じゃなければなあって感じの馬体』


『成績もあれだし、なんで出てきたんだ』


『娘のG1出走のために馬を用意したってことじゃね?』


『過保護だなあ』


『娘のために馬をねじ込むとか大企業の会長さんもよくやるもんだ』


「流石に憶測が過ぎるからコメントは慎んでくれ」


 リスナーたちのコメントがあらぬ方向のコメントになってきたため、カミラは引き締める。


「さて、馬体診断はここまでにしようか。取りあえず私は馬体的にはマガノスクリューからいきたいと思っているよ。調教の様子やパドックの様子次第で変えるかもしれませんが、では配信を終えるよ。またね」


 こうして須藤カミラの配信は終わった。

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